第26話 花冷え

 開花宣言と裏腹に、急に冷え込んだ。桜も間違えたと思ってるに違いない。予想外の寒さに、薄手のコートにしがみつくように出社した。会社に到着してからもかじかんだ手でキーボードがうまく押せない。


「そんなに寒かった?ほれ。」


そう言って隣の席の先輩がホッカイロを投げてくれた。


「神様ー!」


 遠慮なく手を温める。その様子を見て先輩が笑う。


「なんですか?」


「いや、今朝ニュースで、こういう日を花が冷えると書いて花冷えっていうらしいんだけど、まさにだなぁと思って。」


一瞬別の花が咲きそうになった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る