第27話 朝

 朝。それは毎日繰り返されるけれど、いつも新しい始まりを告げる時間。小さな町の片隅にある古いアパートで目覚めた葵は、いつものように窓辺に歩み寄り、カーテンを開けた。柔らかな朝の光が部屋に満ち、彼女の頬を優しく撫でる。


「また一日が始まる。」


 葵はそっと呟きながら、朝の支度を始めた。彼女にとって、朝の時間は特別だった。一日の中で唯一、静かに自分と向き合える瞬間。テーブルに置かれた眼鏡を手に取り、葵は深呼吸をした。その眼鏡は、彼女にとってただの視力補助具ではなかった。それは彼女の世界を色鮮やかに変える魔法のアイテムだった。


 葵が眼鏡をかけると、世界は一変する。色褪せて見えた世界が、鮮明で鮮やかな色彩に包まれる。朝の光が、より温かく、より美しく感じられた。彼女にとって、これは毎朝繰り返される小さな奇跡だった。


 そして、朝ご飯を取る。葵の朝は軽くトーストを1枚か、シリアルだけれど、この時間になると、隣の部屋も朝を迎え、朝食の匂いがしてくるのだ。お隣さんは朝をしっかりとるらしい。古いアパートだ。出汁のいい匂いや魚の焼ける匂いがする。それが、なんとも幸福な気分になるのだ。


 この広い世界で、みんな色んな朝を迎えている。朝からそう思えることは、とても幸福な気持ちにさせる。


 朝食を終え、メイクを済ませると、葵は元気よく扉を開いた。今日の青空は絶好調だ。


 

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