第23話 追い込まれないと

 夏休みの宿題は最後にやるタイプだった。下手したら、始業式が金曜日ならば、「忘れた!」といって次の日に土日にやるタイプ。


 そのくせ、答えを写すなんてことはしなかった。というより、思いつかなかったのだ。答えを写す、ということが。真正面から全部やった。


 そんな私は、大人になると「器用貧乏」と言われるようになった。ただ「器用」の部分が自分の中に見つからない。全てがうまくいってない印象しか自分にはなかった。


 そのことについて妻に話すと


「わかる気がする。結局やれるんだけど、追い込まれないとやらないから雑なのよ。」


「そう?」


「そうよ。プロポーズもなんでもない日にある日突然だったじゃない。」


「そりゃ、お前だって・・・。」


お前に告白してきた奴がいるって聞いたからさ。


「ふふ。」


 この時、なぜ妻が楽しそうに笑っていたか、僕はまだ知らなかった。

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