第14話 桜の奥には

 満開の桜に今日も公園は賑わっていた。たくさん作ってきた料理をすっかり食べ終えた少年は「もう食べられない」と横たわる。


 風がそよいで、1枚、2枚とキラキラと花びらが落ちていく。


「不思議だなぁ。」


 桜をしたから見上げる少年が言う。


「何が?」


 母が答える。


「桜はピンク色でしょ。」


「うん。」


「お空は水色でしょ。」


「うんうん。」


「でもその奥に行くと黒になるんだよね?」


「そうだね。」


「なんで?」


「なんでって。うーん、説明が難しいな。」


 母は理系だ。説明しようと思ったら光の散乱など伝えることはできるが、それをどう説明したものか悩ましい。


「光って不思議な性質があるんだよ。」


「だって、この光は太陽の光でしょう?太陽に近くなったらもっと眩しくなるんじゃないの?」


 少年は起き上がって母に食いつくように質問する。桜の花びらが一枚少年の頭に乗っていた。


「その太陽の光が特殊で、地球が特別なの。」

 

 なんだこの回答は。と思いながらも久しぶりのビールで頭が回らない母だった。


「そうか。きっと、太陽も桜が好きなんだね!だから眩しくしてくれるんだ。」


 その回答に、思わず笑みがこぼれる母だった。少年の頭に乗っていた花びらがひらりと飛んでいった。

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