第22話

 放送日の翌朝。


「あ、国際ラブラブ高校生カップルじゃん」

「ぶち殺すぞ」


 早速、揶揄って来た美聡を、俺は睨みつけた。

 美聡はゲラゲラと楽しそうに大笑いする。


「良いじゃない。悪い紹介はされてなかったし。ネットでも、好評みたいよ? ほら」


 美聡はそう言いながら携帯の画面を俺に見せて来た。

 そこには俺とリリィの二人が、インタビューを受けている姿が映っている。


 リリィの「はなよめしゅぎょうです」もバッチリ、映っていた。


「アメリアちゃんは、美少女イギリス人女子高生として、バズってるわよ」

「とうぜん、です」


 リリィは何故か、誇らし気に胸を張った。

 自分の顔がネットに流出してもいいのか……。


 貴族令嬢だし、慣れているのか?


「聡太もイケメン彼氏君として、良い感じに捉えられてるわ。……ちょっと、嫉妬されてもいるけど」


 羨まし過ぎる。

 イギリス留学すると、美少女彼女ができるって、マジ!?

 俺、ちょっとイギリス行って来る。

 末永く、爆発して欲しい。


 などとそこにはコメントされていた。

 やめてくれ。

 ……頼むから。


「視聴率も良かったみたいね。ベストコレクション入りするかも」

「やめてくれ。頼むから」


 今から苦情入れれば、どうにかならないだろうか?

 ……ネットに出回った分は、どうにもならないか。


「大丈夫、大丈夫。ネットミームにでもならない限り、みんな忘れるわよ」

「それが心配なんだよ……」


 リリィのビジュアルと、「はなよめしゅぎょうです」はインパクトがあり過ぎる。

 ……でも、そこだけなら俺の顔は出回らないし、いいか。

 リリィのインパクトで、俺の印象が薄れることを祈ろう。


「あぁ、そうだ。話は変わるけどさ」

「何だ?」

「今日、泊まりに行って良い?」

「来たければ来れば? 許可はいらない」

「……え?」


 リリィがハッと顔を上げた。

 驚いた様子で、目を見開いている。

 そんなに驚くことか?


「ミサトが、とまりに? ……な、なんでですか? きょか、いらないって」

「そりゃあ……」

「私たちが、仲良しだから」

 

 美聡は俺より先に答えを口にした。

 そして俺の腕を絡めとり、ニヤっと笑みを浮かべた。


「分かった? こ・い・び・と・さん?」

「なっ!!」


 リリィは凄まじい形相を浮かべ、美聡を睨みつけた。

 そして英語で怒鳴り声を上げる。


『ふざけないでください!!』


 恋人扱いされたくらいで、そんなに怒るなよ……。




 放課後。


「ただいま!」

「あら、お帰りなさい!」


 俺は美聡と共に帰宅した。

 母は久しぶりに美聡に会えて、嬉しそうだ。


『何が、ただいまですか。馴れ馴れしい……!』


 一方、リリィは何やらご機嫌斜めだ。

 美聡が家に来るのが、そんなに嫌か……?


 嫌なんだろうな。

 リリィは人見知りするし。

 気持ちは分からないでもない。


 俺も美聡が家に友達を連れ込んだ時は、良い思いをしなかった。

 それがお泊まりになった時は、息苦しい気分になったのを覚えている。


 昔の話ではあるが……。

 リリィもそれと同じなのだろう。


「はい、……これ、例のやつね。録画したやつ、焼いておいたから」

「助かるわぁ。聡太ったら、私が見る前に、削除しちゃったのよ。酷いでしょう?」


 ……なるほど、そのために来たのか。

 よし、後で破壊しておこう。


_______________



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①は2話、②は8話、③は10話、④はカクヨム未掲載のシーンです。


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