第7話
テニスコートで待っていると、リリィと美聡の二人がやって来た。
「じゃあ、私はあっちだから。またね」
美聡はそう言うと女子テニス部が使っているテニスコートまで行ってしまった。
リリィは美聡を記憶ってから、俺に尋ねた。
「かのじょは、テニスクラブじゃないんですか?」
「美聡は女子テニス部だな」
「……ちがいは?」
我が校には女子テニス部、男子テニス部、テニスクラブの三つがある。
部は“ガチ勢”で、クラブは“エンジョイ勢”だ。
我が校は中高一貫のマンモス校で、設備も揃っているため、このような区分けができる。
ちなみに掛け持ちも可能だし、男女テニス部員がテニスクラブに遊びに来ることもある。
「ふむ、なるほど」
「リリィも大会に興味があるなら、女子テニス部に入るといいよ。結構、強いし。特に美聡はエースだから。歯ごたえがあると思う」
「かんがえておきます」
リリィは興味なさそうにそう答えた。
イギリスでも大会とかには出ていなかったし、リリィにとってテニスは趣味の一つでしかないようだ。
「ところでそのユニフォーム……リリィのか?」
リリィはユニフォームを着込んでいた。
ユニフォームの貸し出しなんてしていないし、そもそも女子テニス部のユニフォームとはデザインが異なっていた。
「はい。にあってますか?」
リリィはユニフォームのスカートを摘まみながら俺にそう尋ねた。
ユニフォームはリリィのスタイルの良さ――大きな胸や細い腰をくっきりと強調していた。
何より、短いスカートから伸びるスラっとした白い脚がとても美しい。
こうしてみると、本当に長いな……。
「可愛いよ。それにカッコイイ」
俺がそう褒めると、リリィは小さく鼻を鳴らした。
『ふん、まあ、別にあなたのためではないですけれどね』
リリィが俺の目の保養のために着てくれるわけないことは知っているし、わざわざ言わなくとも良いのだが。
「とりあえず、クラブのみんなに紹介するよ。こっちに来てくれ」
「はい」
俺はテニスクラブの活動場所へ、リリィを案内する。
そしてクラブ員たちに軽く紹介する。
クラブは部と違って緩いので、ミーティングのようなモノもない。
俺たちは準備運動を済ませると、早速、打ち合いを始めた。
俺は強い方だと自負しているが、リリィはそんな俺と互角以上に打ち合える。
「相変わらず、強いな」
「そーたも……へたになってなくて、よかったです」
「へぇ。アメリアちゃん、強いね」
俺とリリィが休憩をしていると、そんな声が聞こえた。
声をする方を向くと、ユニフォームを着こんだ美少女が立っていた。
美聡だ。
彼女は女子テニス部員だが、クラブ員も掛け持ちしている。
いつの間にか、俺たちの試合を見物していたようだ。
「私と一緒にやらない? アメリアちゃん」
美聡は嬉しそうに言った。
こう見えて美聡はかなり強い。大会でも活躍している、女子テニス部のエースだ。
美聡と互角に打ち合えるのは、男子を含めても少ない。
同じ女子で自分と互角に戦えそうな相手が増えて、嬉しいのだろう。
「……わたし、いま、そーたとしています」
一方のリリィは塩対応だった。
先ほどまで機嫌良さそうだったのに、不機嫌になっている。
「ふーん、そっか。そうだよね」
リリィの返答に美聡は納得の表情を浮かべた。
そして意地悪そうな笑みを浮かべた。
『聡太の前で負けたら、恥掻いちゃうもんね』
いや、俺の前で負けたからと言ってどうと言うことはないだろう。
そう思ったが、しかしリリィは気に障ったらしい。
目を吊り上げ、それからいつになく好戦的な笑みを浮かべた。
『まさか。でも、いいんですか』
『何が?』
『エースなんでしょう? ぽっと出の留学生なんかに負けたら、大恥ですよ?』
リリィが英語で煽り出した。
リリィは負けず嫌いだ。
煽られて、何もせずにいられるタイプではない。
そして美聡も……。
「あはは! ……いいね。やろう。望み通り、泣かせてあげる」
顔は笑っているが、目が笑っていない。
これは本気(マジ)だ。
こうして見ると、やはり怒った顔は母親似だな……。
「……更衣室で喧嘩でもしたのか?」
俺は美聡にそう尋ねた。
すると美聡は楽しそうに笑った。
「喧嘩して友情を深める。王道でしょ?」
「ああ、そう……」
まあ、いいか。
喧嘩でも、俺以外と交流できるならその方が良い。
できれば仲良くして欲しいけど。
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