守るの意味

(イグナルト視点)

「はぁ、、」


仕事を終え帰って来た俺は、自分が住んでる宿屋の下にある酒場【レガメル酒場】で深いため息をついていた、、

シエルが眠った後馬車を走らせ俺たちが暮らす街フリューゲルまで戻って来た、町に着き眠ってるシエルを起こそうとしたが疲れのせいか起きる気配がなかったので背負って帰って来た、、今も俺の隣でスヤスヤとかわいい顔で眠っていた、、

そんなシエルの隣で俺はずっと深いため息をついていた。


このため息の原因は今日起きた事件の事だった、、

シエルの前でこんな顔を見せたらまた不安にさせてしまう、その為シエルが起きてる間はずっと我慢していたが馬車でシエルが眠ってから今に至るまでずっと責任を感じていた、、


俺がもっとしっかりしていれば、、、、

シエルに傷を負わせる事もなかったのに、、

そんな事を考えても仕方ないとは思っていても考える事をやめれなかった


「はぁ~、、もっとしっかりしないとな、、」

「あなたはしっかりしてる方だと思うわよ、、」


ため息をついている俺に話掛けてくる女性がいた、

ヒルダだ、、、

ここの店主グライスの奥さんで良く相談にも乗ってもらっていた、シエルを引き取ってからも俺が仕事で帰れない時にシエルの面倒を見てくれていた、今ではシエルの母親のような存在でもあった


そんな彼女は俺の事を慰めようとしてくれていた、、

やめてもらいたい、、


「話は主人から聞いたわよ、あなたはよくやったからそんなに自分を責めない事、、」

「ヒルダ、、、言葉はありがたいが今回の件は俺の不注意が招いた事だ、盗賊にシエルが攫われるなんて、、、なにが伝説の兵士だよ、」

「あら、でも無事に助けられたじゃないの、、」

「いや、攫われたこと自体が問題なんだ、、しかもシエルにケガまで負わせてしまった、、、」

「そのケガも治ったのでしょ、、」

「魔法で傷は治せても、心の傷は魔法では治せない、、」

「そんな、あの子は強い子よ、そんな事気にしてないと思うわよ、、」

「だが、シエルに怖い思いをさせてしまった真実は変えれない、、、本当にだ」


泣きそうだった最初は行き場所が無かった女の子を引き取っただけのつもりだったが、今の俺にはかけがえのない存在に代わっていた、

シエルは間違えなく俺の宝物だった、たとえ俺が死んでもシエルだけは救いたいそれは俺の強い意志だ、、


「父親失格ねぇ、、、確かにそうかもしれないわ、、」

「やはりヒルダもそう思うよなぁ、、、俺は父親失格だぁ、、、」

「そうね、でそんなバカな事言う人わね、、」

「えっ」


ヒルダは俺に顔で『後ろを見なさい』と訴えら掛ける、俺はヒルダの言う通りに後ろを振り向くと先ほどまで寝ていたはずシエルが泣きそうな目をしながらこちらを見ていた、、

その怒り交じりの悲しそうな顔を見た瞬間に俺の放った言葉の重さを理解した、、


「お父さんのバカ、、私はお父さんが悪いなんてちっとも思ってないのに、、なんでそんな事言うの、、」

「シ、シエルいつか、、、」


『いつから起きていた、、』それを聞こうと思ったが今はそんな事どうでも良かった

【父親失格】この言葉で俺はシエルの事を傷つけてしまったのだと理解した、、


「今日は私が悪いんだよ、、お父さんの馬車に勝手に忍び込んで、お父さんに隠れなさいと言われていたのに隠れず、、盗賊さんに見られた事もお父さんに黙っていた、、、お父さんより私の方が悪いのに、、なんで、、、、なんで、、」

「、、、、、シエル」

「なんでそんな事言うの、、私のお父さんはなのに、、、」


シエルは自分の思いをすべてを吐き出すと貯めていた涙を耐えきれずに俺の胸元で出してしまう、、

俺は本当にバカだ、、大馬鹿だ、、


この子にとって【父親失格】の意味がどういう意味を持つのかを想像できていたはずなのに、俺は取り返しのつかない事をしてしまったと今になって気付いた、、


「イグ、、、今の状況でもさっきの言葉が言えるかしら?」

「いや、、もう二度とそんなバカな事を言わない、、」


俺はシエルと一緒に暮らし始めて4年間ずっとこの子の親をやれているか不安だったが【最高のお父さん】と言われて初めて俺は父親としての自信が持てた気がする、、


「シエル、ごめんな、、俺が悪かったよ、、」

「うぅ、、ぐすっ、本当に?」

「あぁ、もうあんな事言わない、俺はシエルのお父さんだからな、、」

「うん、、えへへ」


シエルが涙を流しながら笑ってくれた、


「シエルはやっぱり笑ってる方が可愛いよ、、」

「なに、、急に」

「いや別に、、あと今回の件はシエルも悪くないからシエルは被害者なんだから自分を責めちゃだめだいいな、、」

「うん、、分かった」


お互いに悪くないと言う事で話が終わった、、俺自身も今回の件で親としての自信を付ける事が出来た、もう二度とシエルを悲しませる事はしないと心に強く刻むのだった、、


「あと、、お父さん、、、」

「どうしたん、、急に体をモジモジさせて」


シエルが急に体を恥ずかしそうにくねらせる、何かを言いたいようだが恥ずかしくて言えない様子だった、


「あの、、、えっと、、ね、」

「ゆっくり、自分のタイミングで話してくれたらいいよ、、」

「、、、その、、私を抱っこしてくれた時あったよね、、」

「あぁ、盗賊のアジトから村に戻る時なぁ、、」

「うん、その時に言ったこと覚えてる?」


言った事?

そう言えばあの時シエルが俺に抱き着いて来た時になにか聞こえた気がしたけど、良く聞き取れなかったからスルーしていたな、、


「ごめん、、聞き取れなかった、、」

「だ、だよね、、」

「なんて言ったの、、」

「じゃあ、もう一回言うね、、恥ずかしいから一回しか言わないよ、、」


シエル恥ずかしそうに、こちらを見ながら恥ずかしそうに言った、


「今日は守ってくれてありがとう、、、お父さん、、だ、、、だいすきぃ、、だょ、、」

「、、、へっ?」


ヤバい変な声がでた、


「シエル、そんな事をいって、、」

「あ、これ以上その件に触れるのは禁止ね、、私も不機嫌になるからね、、」

「あぁ、分かった、、、、、、」


これは俺も好きと言うべきだろうか?少し考えた、、

シエルがどんな反応するか気になるし、、言おう。


「シエル、、、」

「なに?」

「お父さんもシエルのこと大好きだぁ、、」

「、、、へっ?」

「っぷ、あははは」

 

シエルの口から『へっ?』と変な声が出たその瞬間、酒場にいた俺以外の客とヒルダが急に笑い出した、


「おい、なに笑ってるんだよ」

「そうだよ、なにが面白いの?」


酒場にいた全員を代表してヒルダが話す


「いやぁ、アンタらがあまりにも同じ反応をするからおかしくて、、」

「「えっ?」」

「ほら、また、、あんた達はとっくの前からなんだよ、、」


【仲良し親子】その言葉は恥ずかしさもあったがそれ以上に嬉しさの方が大きかった、、

それはシエルも一緒の様で互いに顔を見つめ合う、、、


「シエル、なにか食べるか?」

「うん、食べる、、お腹ペコペコだよ、、」


そう言えば盗賊に襲われてから何も食べてなかったので食事を共に済ませる事にした、


今日は本当に色々あった、盗賊に襲われて、シエルが誘拐されて、父親としての自信を無くし、、そして父親としての自信を取り戻した。


そんな事を考えながら俺は初めてシエルと出会った時の事を思い出した、、


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