苦悶
馬場 芥
スランプ
画素の粗さが目元を歪ませる。目が疲れを覚えていることを知った彼は、ひとしきりキーボードに顔を伏せた後、また画面に食らいついた。
彼は小説を執筆していた。モニターにはシラミほどの粒が黒々と埋め尽くされていた。文字を潰しては入力する。その過程を
彼には意欲があった。鮮明に輝く一筋の夢。儚くも
小説の輝き。文字が粒立ち踊り狂う。脳内に巡る表現の美しさはまるで作者から離れ、意志を持って動いているかのようであった。だが、シラミで埋め尽くされたモニターの中をいくら探しても見つかりはしなかった。
いつから私の気持ちは失われていったのだろうか。翌朝を迎えたとて、あの頃の自分が目覚めることはない。いまだに燻り続ける炎は体の内に秘められ、解き放たれることなく
彼は彼がわからぬままに、また筆を執った。
苦悶 馬場 芥 @akuta2211
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます