第5話 国王様ああ!! タイツです

襲撃事件が起きてから数時間後、秘書は忘れ物をしたと言い消え去り、そこからようやく目を覚ましたおっさんに勇者と魔王は向かい合うように座って見つめた。

「それで、おっちゃん。一体何があったんだい? 見た所荒らされたんだとは思うんだけどよ」


魔王は静かな目線で彼を見つめていると、ゆっくりと重たい口を開けて、真実を語り始めた。


「じ、実はな...ワシは こんな身なりをしておるがのぉ、元は帝国直属の魔道士だったんじゃよ。 そりゃあもう誰もが認める程の魔力量を持っていたんじゃ。 じゃがの、そんな魔力を使って色んな戦いをしている時、国王からこう言われたんじゃ」


オズよ──何でしょうか。

──戦況は順調ではあるが、現地の食料等は乏しくなってきている、その意味、分からないではあるまいな。


確かに、戦況と現状は全くの別として考えるべき、その考えは間違えておりませんが、 その対策を立てるべく、魔族率いる軍勢に一度停戦を申請し、その設けられた期間で限られた物ではあるが、各部隊への食料や武具の調達をした方がよろしいかと思われます。


何を申しておるのだ──貴様が全て一人でこなせば済む話では無いか。

なに、戦闘も全て任すとは言っておらん、貴殿の魔力操作を見越して物資や武具をテレポートさせたらいいと申しておるのだ。


「それを聞いたワシはな、その日から来る日も来る日もテレポートを続けたんじゃ。 だが、やはり魔法というのは魔素という力の流れを扱って繰り出す物。 使い続けていれば、その魔素は枯渇する。魔素は世界の本で、物語によって変わっていると調べは着いているから、混乱するかもしれぬな。 じゃから、話の続きの前に分かりやすく例えるとしよう。 蛇口というのは世界の本に存在すると書いてたのじゃ。 じゃから、今回はそれを例にしよう」


そういうと、おっちゃんはゆっくりと立ち上がって部屋を歩くと、奥にある石と鍋を用意し、また2人の目の前に座って石を下に引くような形で鍋を置くと、その中に水が溜まっていく。


「これは、給水の魔石じゃ。 まぁ、今見せた通りのものなんじゃがな。蛇口というのは捻れば水が出る、物によればお湯が出るらしいんじゃがな。 それと同じじゃ。 蛇口から出た水を貯める、じゃが、これは石から水を貯める。 その違いなだけ。 じゃがな、一杯二杯の鍋なら 水に困ることは無い。 じゃが、貯めてもなお使い続けたら、どうなる」


自分達は、彼の問いにスンナリと答える。


「水道代が上がる!!」

バッカモォン!!と2人にゲンコツを入れた彼は、世界別の話をしとらんと喝を入れ、答えを教える。


「正解は、水が無くなる じゃ。 例えどれだけ広大な海であろうと、もし 土が海の面積より多かった場合、最初は勢いよく出たとしても、最後らへんには絞りカスのように 土に吸われ、水は消えていく。 そして最後はスッカラカン。 何も無い状態。 それが、魔素の枯渇」


彼は少し俯くと、少し憎悪の目を籠らせつつも、思い口を開いて真実を告げた。

「その枯渇を恐れた国王は、ここまで強くなれたのなら護衛等は要らぬだろう。 誇れ! 貴様は今日からワシの領地の一部で領地の安定と、魔族の撃退を命ずる。 そう言って……ワシをこんな所にのぉ。 」


その話を聞いた僕達は、先程すれ違ったヤツらがただの衛兵ではなく、この人を襲った国の傭兵だと察し...立ち上がって、おっちゃんの肩に手を置く。



「オズのおっちゃん。 この話...よぉわかった。 あとは任せとき」

僕、いや...おれと魔王は向き合い、顔を頷かせ、同時に口を開いて呪文を唱える。

「ゲートオープン: 帝国へ」

『ゲート: 国営騎士の拠点』


何故、呪文を唱えられたのかも、何故魔法が使えたのかも分からない...だが、元からあるかのように俺達は魔法を使ってゲートを開き、その穴へと消えてゆく。

その頃、帝国側国王の間にて。


「オズめ──魔王の討伐を命じたのに、何故魔王と手を組んだのだ!! 許せぬ……! おい、ギンロ。 貴様の発言が如何にも信じ難いのだが、確かに討伐の命を出したのもワシだが、本当に貴様の水晶で魔王側で人間を虐殺しているオズが写っているのだな!? ワシには何も見えぬが、貴様にだけ見えるという水晶でな」


筋肉質でハゲ...そして、威圧感のある目付きと言動、身長は180後半くらいだろうか...周りが認める程の巨漢... そして、横には軽く2mもあるであろう大剣が置かれていた。

「ゲヘヘッ、は、はい。 このギンロ、国王であらせられるメルト様に忠誠を誓った身。 如何にも嘘はつきませぬ。 って、おや? おやおやおや...国王様。 城に一人の女性が」

メルトと呼ばれた彼は...クスクスと笑い出すと……侵入した秘書を待ち構えるように、座り方を直しゲスのような笑みを浮かべる。


「タイツ……久しいなぁ……さぁ、来るが良いぞ」

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勇魔様ブッコロ! わたあめ @shi-chan8250

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