第4話 村民さんって名前なんだっけ、あ、タイツさん
家の修繕をしてから数日後。
魔王と僕はたわいも無い会話をして過ごしていた。
「そういや、召喚された時よ。 お前さ頼まれたんだろ?退治してこいて。 そんならさぁ〜和解しました〜って言いに行くか」
魔王のパッと思いついた言葉で、僕は村民の人に会いに行くことにした。
途中何度か魔物に遭遇し、武器や盾は壊れてしまい、魔王の彼が率先して倒してくれていた。
「その村人さんって、どんな方なんですか」
タイツさ━━ゲフンゲフン、金髪の彼女は僕に聞いてきたが、僕もよくわかってない事を素直に伝えると、少ししかめっ面をしながら、顎に指を乗せて考える素振りを見せながら歩き続けた。
そして、村に着く直前、魔王が少し待てと言い僕達は足を止め彼の方に振り向いた。
「側近くん...僕らって確か魔族だよね、って事は村人にとっちゃ悪意の目で見られるはずだろう? 仕方ないよな...ちと待っててくれよ。 えーっと、確か...スキルボード」
彼がそう、零すと何も無い空中を指でスライドしてはタップしてと、何かの作業をしていた。
「勇者様は確か知らなかったんでしたっけ。 でも魔王の彼にも私からは何も教えてないんですがねぇ...なぜわかったんでしょうか。 あ、忘れておりました。 あの空中をアホみたいにスライドしてる行為は 【スキルボード】といい、魔族、人族、獣族、王族、獣王族、魔王族の生命体として産まれた、または、召喚された物が使用出来る、いわば超能力のマーケットのようなものですね」
「なるほど...つまりは、スキルという売店があって、それを、購入すると使えるようになるって感じなのかな」
「左様でございます。 ですが、注意点もございまして。 各族のスキルは限定されておりその他の種族のスキルは入手不可能となっておりまして。 王族類のみが、同じ種族のスキル全てを使えるようになっております。 ちなみに勇者は王族では無いためスキルは人族のスキルになります」
なるほど...つまり、王族の家系だったら王族スキルと人類スキルを使用できるけど、勇者は人類の1つのカウントされるから、人類スキルしか使えない。
逆に魔王の彼は魔族と魔王族のスキルを使えるのか。
んじゃあ、スキルボードと唱えたら出るみたいだから、今日の夜中にでも適当に付与するか。
「ありがとう側近さん。 あ、ごめんね、そういや名前を聞いてませんね。 よかったら名前聞かせてもらってもよろしいですか」
「あ、はい...私の名前は」
彼女が自分の名前を言おうとした、その瞬間。
魔王の彼が出来たと叫び、彼女の名を聞きそびれてしまった。
「全ステータスが40%減少する変わりに、角と羽と尻尾を消すスキルを入手したからそれぞれにかけるな」
スキルの発動...この世界に来て初めて見るスキル。
そのスキルと呼ばれる存在は、僕が知っているゲームのようなものではなく、緑の眩い光が優しく対象者を包み込み、パッと弾け、光が消える頃には人間にとっては無いはずの物が全て消え去っていた。
「解除したら、また魔族に戻るけれど、気をつけてくれよ。 全ステータスoffになってるから、強めなモンスター、そして、普段みたいに暴れても精々脆い壁に穴が空く程度だから」
そう言うと、彼は両手斧を首に掛け、冒険者風になって村へと足を運ばせた。
そして、村が見えたその時...金髪の男が率いる軍団が白馬に乗りながら横を通り過ぎていくのを見送った僕は、何も気にせず村へと入っていった──本当は、ここで、引き止めてたらと今は思っているけれど。
「ただいまぁ、オッサン生きてるか.....あれ? 何も返事ない、おっさ〜ん? おーい、おっさんって! まさか...おっさん!!ちと悪い!!玄関壊すぞ」
軽く脅しみても、何も返事がない...何処か出かけているのかと思い、畑を見るが誰もいない、そして、窓の方を見た時...僕は、即座に魔王である彼に扉を破壊して欲しいと頼むと、何かを察した彼は玄関に周り斧の刃ではなく、側面で扉を強く叩いて穴を開けた。
「おっさん!! えっ...おっさ」
樽に背中を打ち付けグッタリと座り込んでいる彼の姿が目に入った僕は、即座に駆け寄り、脈を測った。
「っ……息はかなり浅いけど、まだある。 まお……いや、ゲンちゃん!! 今すぐ消毒液とナイフ、そして治癒魔法使える人を探してきて!! 側近さんは、こっちをお願い」
彼は、斧を投げ捨て足早に村を駆け回っていく。
その間に僕と側近は彼の身体をゆっくりと持ち上げ、机の上に置き、怪我の部類を見つめる為に服を剥いだ。
「これは……傷口が深すぎる。 それに右足が壊死してもいるし、このキズは形的に刃物か。 早く治さないとダメだ……側近さん。 悪いんだけど台所から包丁持ってきて。 今すぐ.....ん?側近さん? 」
僕は側近さんの、顔を見つめると、彼女は青い顔で彼を見つめていた。
「何してるの!? 今は思い老ける場合じゃないでしょ」
僕の怒号に彼女は我に返ったのか、うんと、言い残して台所から包丁を持ってきてもらった。
「おい!持ってきたぞ!!」
片手サイズのナイフと、消毒液...言われたものだな。
よしっ。
「2人とも、悪いけど他の村人が入ってこないように外に出て対処しといて。 おっさん、、悪い...起きたら凄く痛いと思うけれど、麻酔がないんだ……我慢してくれ」
初めての手術...初めての遭遇……なのに、何故か僕には無いはずの知識と技量が指につたわり、スムーズに事が運んだ。
切り落とされた左足は、別の場所に置き、止血と縫いをする。
傷ついた臓器は、生きてるのを確認すると、血管を繋げたりして傷口を閉じる。
その繰り返しを数時間繰り返し──夜中...その行為は全て終わった。
「骨が十数本...頭蓋骨に損傷...壊死組織の除去...諸々完了。 あとは、おっさんの生命力にかけるしかねえ」
そして、数時間後。
「おっさん! 目が覚めたのか」
目をゆっくりと開け、静かに座り始める彼に俺達は寄り添い、背中を支えながら起こすのを手伝う。
「いかんな...少々、油断して煽りすぎたみたいだな……ふむ、傷が治ってる……おや、勇者召喚で来よった子じゃないか。 どうやら、この様子だと皆が助けてくれたようだな──迷惑かけたわい。 すまんな」
頭を下げる彼に秘書は肩を優しく支え、大丈夫ですよと伝え、魔王の彼を紹介したり色々と今後の事に着いて話す事となった。
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