第2話 いや、我魔王ぞ
な、なんだ?ここ──見渡す限りの森なんだけど。
「魔王様」
いきなり、俺の後ろから声が聞こえ、俺はア゙ア゙ア゙ア゙ア゙と情けない悲鳴をあげ、後ろを振り返ると、それはそれは可愛くて綺麗な──ゲフンゲフン、凄く容姿端麗な女性が立っていた。
金髪に、ショートヘア、スーツにメガネそして何より。
「紛うことなき、スレンダーな体に似合うボンレスハムにもなっていない魅惑の網タイ……/どこ見とんじゃコノ出来たて小鹿野郎がああ!!/ツウウウウ」
顎に蹴りを入れられ猛スピードで空中を飛び上がる俺……そんな俺も、いや、格好よくないな。
「に、しても、魔王って言われたよな?今 何が起きてんだ。 普通に考えて今の蹴り、人間だと○んでるよな。 それに、あんまし痛くない……それを考慮するとぉ」
バゴォーン、そんなギャグ漫画で地面に着地した時になる爆音が鳴り響き、自分の体の形をしたクレーターの中から俺は確信した。
「うん、人間やめてるわ」
そう、思って身体を地面から乗り出した瞬間、先程の誘惑バデーなお姉さんの足が視界に入った。
「あ、あのぉ……お、お怒りですよね」
「マ、オ、ウ、サ、マ」
地面を思いっきり踏みつけると、少しだけヒビが入る脚力を間近で見た俺は、彼女の真っ黒なオーラに怖気づきクレーターの中へと逃げようとしたが、まるで赤子を持つかのように、服の襟を持たれ引きずり出された。
「あ、あはは……あはー……すみません。出会い頭にセクハラ発言をしていしまい」
禍々しく漆黒のオーラを噴出している彼女の目が段々と赤く染っていくのを見た俺は、絶対に謝らないとと思い必死に謝るが、彼女の怒りは何故か逆効果になり、大きくなっていく。
「魔王様〜? 良いですか? 貴方は今日、私の願いで召喚しました。 何故か? 理由は単純です!! 魔物が人を襲うようになったので統制してください! ですが、魔物も生き物なので、いきなり失礼な事を言われたら怒りますよ。 それと!! 網タイツじゃありません! これはタイツです!!戦闘で敗れたタイツです」
戦闘で、破れ、、た!? へ、へへ、どんな戦いだったんだろぉなぁ〜、うへへぇ〜。
浮かれた想像をしていた俺……だから怒られたんだろうな。
ニッコリ笑顔が更に恐怖を表し、上司である俺を黙らせてしまった。
もうさ、彼女が魔王でも良くないかと思えるように。
すると、彼女は俺の髪の毛を鷲掴みにしてきたんだ。
「魔王様ぁ〜。 あのですねぇ、この目の前にある人一人分の穴がある樹木なんですけどね。 この木は召喚された者、もしくは、この中に入った人間の元の家を再現するんですけど。 作る際はその本人の魔力や霊力。はたまた、妖力を吸うんですけど。 丁度いいですね! 住む所も作らなければいけませんし」
あ、終わったわ俺。
これ、許してくれないやつだ。
「あ、あの。側近様? まさかそれを俺にやろうって話しじゃありませんよね」
「まっさかー! 私がそんな、怖い事をする訳……あらぁ〜手が滑りましたわ」
そう言うと彼女は、俺を木の方に投げつけると、木の穴が、大きく開き無数の白いうねうねが、俺の手足に絡まると、顔だけ出してあとの全てが木の中に閉じ込められた、何とも言えないブサイクな格好にされてしまう。
「あ、これ絶対に子供に見せられ……ウギャアアアア!! いでででで!! な、なんじゃこれ! 吸われる!! ダメなやつだこれ!! 側近さん!!お助けください!! なんで微笑んでるんですか!! は、早く助け……ウギャアアアア」
段々と萎れていく体、最終的には俺の魔力をほとんど吸った木は、俺の身体をマッズと言い放ち吐き捨てるが、どうやら、僕の顔は萎れてしまい、ムンクの叫びのような顔になっているみたいだ。
「魔王様……ブフッ……だ、大丈夫ですか? ブハッ。 だ、ダメだ……お腹痛い……い、いえ笑ってませんよ。 私は決して笑って……ブフゥ」
もう隠す気ねーだろ、この女。
でも、もう、逆らわないでおこう。
そうして出来たのは、召喚される前に住んでた古民家の自宅だった。
「アア……オレノオウチダアア」
掠れて、今にも風が吹けば吹き飛びそうな声と身体を引きずりながら、俺は居間に入り、回復するまで寝込んだ。
そして、数日が経った頃。
「さぁ、今日もラジオ体操始めるか!! 側近くん! 今日はどこの視察をしに行くんだ」
「そうですね。 今日の所は何も無いらしいです」
たわいも無い話を軽くして、俺は日課であるラジオ体操をしに、玄関から出たその瞬間。
「魔王かくごおおお」
左上から、何か轟音と共に飛んでくる1人の影が見えた。
「あれは……ってやべぇ!! 包丁?! とりあえず避けるか」
俺は、バックステップで距離を取り、土埃が薄くなるのを待って相手の顔を見ようとしたら。
「え……なんでお前が」
そう、見たのだ……顔を。
仲の悪さでは1番を争うくらいに嫌いなアイツの顔。
そして、俺は完全に昔の因縁もあってか完全に切れてしまい、襲いかかり、前話の最後へと繋がる。
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