勇魔様ブッコロ!
わたあめ
第1話 あっれぇ? なんで目の前の敵が
チュンチュンチュン──ちゅんちゅんちゅん──ちゅっ。
「起きんかいボケェ!!」
小鳥がブチ切れて起きる午前6時。
僕は今日……勇者としてこの村を出発する。
何を言ってるか分からない? うん、僕も分からない。
あ、自己紹介がまだだったね。
僕の名前は風間健太──カザマケンタ──だよ。
ルピ振るのがいいんだろうけど、そこはご愛嬌。
そして、ここは異世界の村コウヤ村。
ここで何をしていたのかって。
いやー、普通ね?王様とか王妃様がタスケテーって呼ぶのが一般的な召喚じゃん。
でもね、普通の村人っぽい人が僕を呼び出してこう言ったんだ。
「勇者様かえ? ああそう。 ほんじゃあ、悪いんだけど畑に水と苗を植えるのを手伝ってくんなし」
何も答えさせてくれる事無く そう言われ渡されたのは桑と苗。
ワッセワッセと苗を植え、水を巻いてから僕は初めて、その村人にコンタクトを取った。
「村人さん!! あのね。 聞きたかったんだけど、僕は勇者?ってのは良く分かんないけど。 一応召喚をされたって事で合ってるんだよね」
んだんだと答える彼に続いて僕はこう続けたんだ。
「でも、見た感じ凄く平和そうなんだけど。 何かあったのかな。 僕はそんな勇者とか言われるような姿をしていないとは思うんだけど」
僕は、勇者と言われた時に薄々分かってはいたんだ。
この世界に何かあって召喚されたんだって。
男なら誰でも1回は憧れるでしょ。
でもそれが叶ったんだって興奮もしたさ。
けれど村人のその人から放たれた言葉は僕を絶望させたんだ。
「んーや、ただの腰痛じゃけど、このままでいとったら仕事にもならんわと思って呼んだんじゃ。 あ、帰る方法はないでの。 もう要は済んだけ何処へでも行くとよかぁ〜 あ、そうじゃった」
村人の彼は何かを思い出したかのように、立ち上がっては屋外へと足を運ばせ、山の向こうの方を指さした。
「もうひとつな。 最近魔王が誕生したらしくてのぉ〜 ついでにアレも退治してくんない? そのー、なんじゃ。 身なりは貧弱そうじゃが、この魔法で召喚されたんじゃ。 ある程度の力はあるんじゃろうて。 なら、ちゃちゃあ〜とやって来てくんさいな」
「え? いや、え? 本当に言ってるの? 魔王だよ? しかも、めっちゃ怖い存在だよ? 何普通に畑仕事のついでみたいに言ってるの? 最初はほら修行とか色々と」
僕が戸惑っていると、彼は何故か目をカッと開いて叫んだんだ。
「そんなつべこべ言うんだったら早う今日は寝て、明日から行ってこい!! 勇者殿!! かぁー!! ワシはボインで、うっふぅんなタッパの姉ちゃんが良かったのに、こんなガタイのいい人で心が折れそうなんじゃよ」
バタンと大きな音をたて、意味のわからないブチ切れを見せてきた彼を横目に、僕は少し泣きそうになりながらも一夜を外で過ごし冒頭に戻る。
これが、今の僕の現状。
そして、料理用の包丁と樽の蓋を渡してきた彼に少々の怒り感じながらも僕は村を出て、依頼されていた魔王退治へと赴いた。
数日後。
「やっと、着いた──ってか、魔王城普通に古民家風なの何」
山越え谷を超え、やっとこさ着いた魔王の城。
な、はず……だよね?
どう見ても古民家風なんだけど。
あ、何か角生やした人が出てきた。
でも、普通に甚平着てるんですが?あれ。
い、いや、でも、ツノがあるってことは魔王なんだよな。
「なんか、気乗りしないけど……魔王覚悟ぉぉ」
いいいい!と叫んでこっちを見る魔王は咄嗟の判断で僕の一撃をバックステップで避けた。
「流石は魔王だな──僕の一撃を避けるなんて。 さぁ、僕と戦え」
そこまで何も喋っていなかった魔王は、土埃を払い咳をしながら立ち上がり僕の顔を見つめてきた。
さぁ、どんな奴がマオ…………はい?
「え……まって、なんでお前が」
「え……まって、なんで君が」
2人して同時のタイミングで目がキョトンとなってしまった。
そう、魔王……いや、正確には魔王と思ってたそれは。
同級生だった。
でも、同級生でも、コイツはコイツはぁ!!
「何でテメェ/お前/何だよ!!ゴルァ」
めっっっちゃ、不仲な同級生なんだよ。
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