第4話 血税など使っておりませんわ。私財です①

 私が第2王太子妃になってから4年後に国王陛下が王位を王太子に譲られ、ジュラルは国王とり、ナージャは第1王妃に私は第2王妃となった。


「院長先生、副院長先生。おはようございます」


「はい。おはよう。ミリー」


「ミリーちゃん。おはようございます」


 院長先生とは私のことだ。

 第2王妃はあまり表に出ないので、第1王妃と比べて王妃教育もそれほど厳しくない。


 あっさりと王妃教育を終えた私は私財で王都の神殿の隣の土地を買い孤児院を建て運営を始めた。


 副院長先生は、リクル女男爵だ。

 私が頼みに行ったら喜んで引き受けてくれた。


 リクル女男爵は、ジュラルとナージャと同い年。


 自分は子育て、教育に失敗してしまったが子供が大好きで元々、市井で働くことに抵抗がないから贖罪の意味でも辛い思いをしている子供たちを世話したいとの事だった。


 イライザ嬢は転生者であり自分の事しか考えない性格だったから誰が子育て、教育をしても結果は同じだっただろう。


 だからリクル女男爵に責任はないとは思うけど親として思うところがあるだろうからリクル女男爵に告げることはしなかった。


「院長先生。今日の朝ご飯何?」


「ベーコンエッグ、ポテトサラダ、コーンスープにふわふわパンだよ」


「やった!!私、ふわふわパン大好き。ここに来てふわふわパン食べてパンの美味しさをしりました」


 まあね。酵母を使ったパンは私が王都にあるパン屋の店主に作り方を教えて広まった物だからね。勿論、レシピ登録をしてある。


 それ以前はハードタイプのパンも好きな私ですら音を上げるくらいカチカチな黒パンだったかね。


 貴族すらそのカチカチ黒パンを食べていたのだ。


「わかったから顔を洗ってきなさい。

ミリーが最後なのよ。

皆を待たせちゃ可愛そうでしょう」


「はい。すぐ洗ってきます。皆、待たせちゃってごめんね」


「ミリーは朝、弱弱だから仕方ないよな」


「今日は早い方だから大丈夫だよ」


 他の子供たちがミリーにそう言ったり、言ったことに頷いたりしている。


「ミリーちゃんを気遣ってあげるのはいいことですが、ミリーちゃんを甘やかしてはいけませんよ。

ミリーが甘えて、このまま朝、中々起きられないままだと大きくなって働くようになって寝坊して遅刻を繰り返し職を失うことになれば生活に困るのことになるのミリーちゃんなんですからね」


『気をつけます。副院長先生』


「副院長先生。私、早起きできるように頑張るから皆を叱らないであげて……。」


 皆が自分の事で注意されてミリーはシシリー副院長にそう言った。


 ミリーも他の子供たちも優しいなとそう思っていると年長組の10歳の男の子が私の元にやって来た。


「院長先生。微笑ましく見てないで、孤児院で一番偉いのは院長先生なんだから副院長先生ではなく院長先生が注意するべきなのではと思います」


「うぅ……確かにそうだけど、こういうのは気づいた人が注意すればいいの。

何でもかんでも一番偉い人が注意したり、叱ったりしなくてもいいものなのよ」


 確かに正論であるが、微笑ましく見ていたため一瞬、臆してしまったが私の言ったことも間違っていない。


「それもそうですね。必ずしも側に院長先生や副院長先生が居るわけではない。

他の孤児院で働いている大人たちも全てに目を行き届かせるなんて無理ですもんね。

気づいた者、見た者が注意すれば注意された子もきっと善悪がわかって悪いことしなくなる。

そして孤児院の子たちはいい子ばかりだから自身が注意されたことで他の子たちが注意されないのように言い聞かせたりしてくれますもんね」


 ダニエルくんや。君は確かに子爵家の子で両親が罪を犯し、処罰されて親族たちも関わっていたことから天涯孤独となり、引き取り先がなく孤児院に引き取られた。


 貴族だから教育受けれる環境にあっただろうけど10歳にしては早熟過ぎやしないかい。

 まさかダニエルも転生者だったりはしないよね。鑑定には無かったからね。


 因みに年少のミリーも貴族の子供の1人だ。

 伯爵、伯爵夫人の両親が事故で亡くなり、伯爵家は伯爵の弟が継いだが新当主夫婦含め、両親の親族たちから引き取りを拒否されて孤児院が引き取った。


「院長先生。何か色々考えられているご様子ですが、ミリーも戻って来て席につきましたので朝食にしましょう。

他の子たちも私もお腹が空いてますから……」


「はい……それでは皆さんいただきます」


『いただきます』


 子供たちは凄い勢いで食べだした。

 ダニエルはじめ年が上の子たちが下の子たちに口に入れすぎて喉に詰まるといけないからと注意いたりしている。


 皆、いい子たちだなとシシリー副院長や孤児院の職員たちと頷きしみじみ思いながら私達も食事をとった。


 朝食を終えると今日は勉強は休みの日なので子供たちは各々好きなことをする。


「院長先生。店に行ってきます」


「ミリー1人で行くわけではないわよね?」


「はい。ダニエルくんが一緒に行ってくれるって言ってくれましたから何人かで行きます」


「じゃあ、魔導具は魔力を流して行くのよ」


 うちの孤児院の子供たちは食べ物に困っていないし、ちょっとした買い物をするお金も持っている。


 でも孤児たちに対する一般的な考えは、食べるのに困っている、お金がないだ。


 だから店や屋台などで売り物が盗まれたり、無くなったりして近くに孤児が居たら犯人と決めつける。


 なので犯人でないのを証明する為に録画ができる女の子はブローチ型、男の子はペンダント型の魔導具を着け魔導具を起動させた状態で外に遊びに行かせている。


 子供たちの服も貴族家の子供だった子もいるから富裕層の子供より少し質の落ちた物にと考えていたのだが孤児のくせにいい服着やがってと思われるからと止められた。


 私の私財が元なのだからと思わなくもないが子供たちの子供考えて一般的な平民より少し質のいい服にした。


「私も行こうかな……」


「院長先生も一緒に行ってくれるの!!」


「この前は私と何人かの先生が行かせていただいたのでミリス院長が行ってください。

孤児院の事は私達に任せて息抜きしてきてください」


 私としては、第2王妃だからそれほど公務ないのでほぼ毎日、孤児院に居て好きにさせてもらっているからずっと息抜き状態なんだけどね。


「シシリー副院長がこう言ってくださったからじゃあ、行きましょうか。ミリー」


「うん」


 店を数店見て回り欲しいものを買ったり、レストランで昼食を食べたりした。小腹が空いたのであと2時間で夕食の時間だけど屋台で何か買おうという事になった。


「よそ見しながら走っちゃダメよ。人にぶつかったりしたら危ないんだから」


 ミリーたちはよそ見は止めたけど走るのは止めなかった。

 追いかけたが人が多い中、子供は小さいので埋もれて見失ってしまった。


「違います。私たちじゃありません」


「犯人は孤児のお前らに違いない。詫びとしてそのアクセサリーを寄こしたら今回だけは許してやらなくもない」


 ミリーたちを探していると近くの果物を売っている屋台の方で人集りができていて怒鳴り声が聞こえてきた。


 孤児って聞こえたからミリーたちだと思って屋台に向かった。


「アクセサリーにもなりますが魔導具です。

私達は犯人ではないですが院長先生には無理やり奪われて怪我するくらいな欲しいと言ってきた人にあげても構わないと言われているのでどうぞ」


 私が人をかき分け屋台の前に着くとダニエルがそう言って屋台の店主にペンダントを渡そうとしていた。

 他の子たちもダニエルに続いてペンダントやブローチを外し渡す準備をしていた。


「魔導具なのか。どんな事ができるんだ」


「今みたいにトラブルにあった時に役立つ魔導具で、その場での映像と音声を撮って保存しておけるらしいです」


「おお!!それは便利な魔導具だな。犯人が嘘ついても証拠を見せれるわけだ」


 店主さん喜んでいるとこ悪いけど店主さんも驚いて自分たちも欲しいとか言っている野次馬さんたちはダニエルたちからそれ貰っても使えないんだけどね。


「ダニエル。店主さんに渡す前に自分たちが犯人じゃないと証拠を見せてからにしなさい」


「「「「「院長先生」」」」」


「あんたがこの孤児たちが居る孤児院の院長さんかい」


「そうです。今、店主さんが持っているペンダントをダニエルに渡して映像を見てみましょう」


「その必要はない。俺はこの魔導具をもらったからな。交渉は纏まったから問題ない」


 確かに店主は便利な魔導具が手に入ったからいいだろうけど、子供たちは盗人と思われたままなのだいわけがない。


「子供たちは犯人じゃないと言っているのに魔導具で見ればハッキリするのに何か見られたらまずいことでもあるのですか?」


「そそ……そんなのあるわけ無いだろう」


 店主さん動揺し過ぎだよ。


「じゃあ、ダニエルに渡して見てみましょうよ。

もし孤児だからと子供たちに罪を着せようとしているのなら子供たちの為にも店主さんにここで商売できなくさせてもいいんですよ」


「俺を脅すのかい。孤児院の院長ごときがそんな事できるわけ無いだろう」


 この店主は他所から来て、最近ここで屋台を始めて、王都では手に入りにくい珍しい果物を売っていて人気の屋台だと聞いた。


 だからこの店主は私が誰なのか知らない。

 まあ、王都にいる人でも私をただの孤児院の院長だと思っている人もいるだろうけどね。


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