第2話 私がリッシュランド王国の第2王太子妃となるまで②

「ジュラ様。私の見舞いに来てくださったのですね。私、嬉しいです」


「イライザ嬢。親しく呼ばないでいただきたい。私の妃ナージャを呪ったこと。

そしてホーロリン伯爵。ミリス嬢を殺害するとの発言聞かせてもらった」


「イライザがそんな事をするわけがありません。

それに王太子殿下は、なぜ平民なんかに敬称をつけて呼ばれるのです」


 乱暴に扉を開かれたのに見舞いに来たわけないじゃん。なんというポジティブ思考。


 伯爵、未婚の貴族令嬢に敬称つけるのは普通ですよ。


「ホーロリン伯爵。未婚であるシュナイゼル辺境伯家の令嬢を敬称つけて呼ぶのは当然であろう」


「「!!」」


 王太子殿下の言葉にお二人は驚いた。


「申し訳ない。ミリス嬢。家名を名乗られなかったので平民だと思ってしまったのだ」


「お父様。その女に謝る必要はないです。

ジュラ様も嘘は良くないですよ。

シュナイゼル辺境伯家は4人兄弟で男のみです」


 乙女ゲームの中ではシュナイゼル辺境伯家は男ばかりの4兄弟なんだろうな。


「イライザ嬢……親しく呼ぶなと言ったはずだが……

それにシュナイゼル辺境伯家は4男1女の5人兄妹だ」


「!!」


 この世界では長男ミッシェルと次男ミカエルとの間に長女の私が生まれた。


 イライザ嬢が驚いていることから乙女ゲームの世界には私は存在しなかったのだろう。


「これ以上話していても不愉快なだけだ。

2人を捕縛し、王城の牢に入れておけ」


「私がナージャに呪いをかけた証拠はあるのですか?」


「それに私がミリス嬢を殺すと言った証拠もですな」


 密室での証言なので証拠が無いと思っているんだなこの親娘おやこ


「勿論、証拠はある。二人とミリス嬢との会話を聞かせてもらったからな。

ミリス嬢。イライザ嬢の鑑定はどうだった?」


「はい。イライザ嬢の状態はナージャ殿下にかけた呪いの呪詛返しで呪いにかかっていると出ました」


「お父様は退室され部屋に私とこの女しか居なかったし、途中でまたお父様が入ってきたけど他には居なかったのよ。

さっき来たばかりのジュラ様たちが会話を聞けるわけありません」


「そうだそうだ。ミリス嬢の鑑定も出鱈目であろう」


「そうですわ。から私の正確な状態を鑑定できるわけありませんもの」


 イライザ嬢……アホな令嬢である。

 聞いてもいないのに隠蔽魔法で偽っていると発言。


 本人も伯爵も気づいていないようだがイライザ嬢が……自白らしいこといっちゃっているよ。


 まあ、私は隠蔽魔法で隠したり、偽っていても正しい鑑定ができるんだよね。


「まさか。ジュラ様が私のことが好きすぎて私の部屋に盗聴器を仕掛けさせていたのですか?

ジュラ様、盗聴は犯罪ですよ」


「王太子殿下……そんな命を出されたのですか。

将来の王妃だがまだ未婚の娘の部屋に好いているからとそんな物を仕掛けさせるなんて許されませんぞ。

王太子殿下には責任を取っていただかなければな」


「私はイライザ嬢の事など好きではないし、盗聴器とやらを仕掛けるように命じてもおらぬ」


 そう言うと王太子殿下が私の方を見た。

 私に説明してくれってことですね。


「王太子殿下は盗聴器など仕掛けるように命じていませんよ。

この私が付けているブローチは魔導具なのですが映像と音声を録画できるのです。

それに音声だけですが受信用魔導具を持っていれば離れた場所にいる相手はオンタイムで会話を聞くことができるのですよ」


「乙女ゲームにそんなアイテム存在しないし、そんなアイテム知らないわ」


「私もだ」


 そりゃあそうだ。イライザ嬢が前世で作った乙女ゲームには私はいないみたいだし……


「知らないのは当たり前です。

この魔導具は最近、私が作った物ですし、まだ販売されてませんから」


「そんな怪しげな魔導具……あなたが録画されている映像も音声も作ったのでしょう」


「私は伯爵から依頼をされたから来たのですよ。

そんな事をする理由もありませんし、お2人も私のことを知らなかった様ですし、私もホーロリン伯爵には3日前、イライザ嬢はお会いしたのは今日が初めてなのですよ。

事前にそんな細工ができるわけないではないですか」


「理由ならあるわ。あなたはジュラ様の事が好きで王太子妃となる私が目障りに思った。

まず、あの女に呪いをかけあなたが自ら解呪したのよ。自作自演ってやつよ。

そして私が呪いをかけたと濡れ衣を着せてあなたが王太子妃になろうとしているからよ」


 何言っているんだ……確かに呪詛返しを防ぐ事も私はできるけどそんな面倒な事をしなくてもこの国は王侯貴族には一夫多妻制が認められている。


 だから第2王太子を狙った方が手間もリスクもない。


 イライザ嬢が前世で作った乙女ゲームでは一夫多妻制ではなく、一妻多夫制だったのかな?

 所謂、逆ハーってやつ。


「王太子妃はナージャ殿下ですよ」


「あの女は嫉妬から私に対して罪を犯し、ジュラ様に捨てられるから私が王太子妃になるからよ」


 乙女ゲームのシナリオでは実際に罪を犯すのか、冤罪かわからない。


 私はプレイしたことないけど、こういう系って悪役令嬢は冤罪パターンが多いと聞いたことある。


 冤罪でナージャ殿下は婚約者の段階で婚約破棄され、イライザ嬢が王太子妃になるのだろう。


 現実では現在、罪を犯しているのはナージャ殿下ではなくイライザ嬢なんだけどね。


「この国では一夫多妻制が認められているのですから王太子の妃になられたいなら第2王太子妃になれるように努力すればいいだけです。

イライザ嬢は第1王太子妃を狙っていたのですか?

イライザ嬢は伯爵家でナージャ殿下は公爵家ですからご実家の爵位が高い方が第1王太子妃になります。

第1王太子妃を狙うならイライザ嬢にとってナージャ殿下は邪魔でしょうね」


「何言っているのよ。この国は一妻多夫制よ。

妻はたくさんの夫を持てるけど、ジュラ様の妃になれるのは1人だけよ」


「「「「「!!」」」」」


 やっぱり乙女ゲームでは一妻多夫制だったか。


「イライザ……お前……」


「イライザ嬢。この国で認められているのは一夫多妻制だ。例外はあるが一妻多夫制ではない。

ミリス嬢。鑑定によるとイライザ嬢は解呪しないとどのくらい保つのだ?」


「呪詛返しは呪いをかけた本人何倍にもなって呪いが返ってきます。

今は辛そうではあるものの話すことができる状態ですが明日には意識不明となり、あと4日保つかどうかでしょう」


「「……」」


 イライザ嬢本人は勿論、伯爵も真っ青な顔で黙り込んでしまった。


 本人だけでなく、伯爵も娘が数日で死ぬと言われればショックで何も言えないよね。


「2人を連れて行け」


 王太子殿下の命で伯爵は縛られ、イライザ嬢は縛られ担架に乗せられ騎士たちに2人は連れて行かれた。


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