【短編】記憶捜査官【秘密】

シナリオセンターで書いているオリジナル脚本

原稿用紙10枚分:約10~15分の短編 or 作品冒頭 or 作品の一部シーンの切り出しのような形


脚本の読み方は特殊なので、こちらを一読して頂けると幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/animaarca777/news/16818023214175603705


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 執筆日:2022年10月08日


【登場人物】〈名前+(年齢)+簡単な人物紹介 or 職種〉

木尾操(みさお)(28)警視庁の特別捜査官

倉持颯太(9)(13)記憶喪失の少年

檜山遥香(37)颯太の叔母

倉持由紀(35)颯太の母親・故人

倉持孝之(41)颯太の父親・故人

二戸律子(40)医師

看護師


【あらすじ】

警視庁の特別捜査官・記憶捜査官の木尾は、記憶喪失の少年・倉持颯太の精神世界=記憶の中に潜入する。


以下、本文


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記憶捜査官

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○新翼医科大学・外観


   出入口から車椅子の患者が外に出てくる。


 


○新翼医科大学・診察室


   倉持颯太(13)と檜山遥香(37)が医師の二戸律子(40)の診察を受けている。看護師が後ろで待機している。


律子「颯太君が失声症……言葉を発さなくなって、もう4年が経ちますね……何か、変わった事はございませんか?」


   遥香は溜息をつき、首を横に振る。


遥香「全く……変わりなく……」


   颯太は虚ろな目で真っすぐ前の壁を向いている。


律子「例のお話をしたいので、場所を変えましょうか」


 


○同・家族控室


   遥香と律子が入室し、ソファーに座る。看護師も1名入室し、扉前に立つ。


律子「先日、ご案内した通り、本日は警視庁から、記憶捜査官をお呼びしています。お呼びして宜しいでしょうか?」


遥香「はい、お願いします」


   律子は看護師の方を向き、頷いて合図を送る。看護師が会釈し退室する。


   扉がノックされ、スーツにネクタイ、


   眼鏡をかけた木尾操(28)が入室する。


木尾「失礼します」


律子「どうぞこちらへ」


   木尾が律子の隣に座る。


木尾「初めまして。警視庁記憶捜査官の木尾操です。よろしくお願いします」


   木尾は名刺を差し出す。


遥香「よ、よろしくお願い致します……」


   遥香は緊張気味に名刺を受け取る。


律子「まぁ、そんなに緊張なさらないで下さい。彼はとても優秀な捜査官で、これまで記憶喪失の患者さんを何人も捜査してくれてるんですよ」


遥香「は、はぁ……記憶捜査とは、具体的にどのような捜査をされるのでしょうか?」


   木尾はネクタイをくいくいっとして、


木尾「単刀直入に言いますと……、対象者の心の中に入り込みます」


   遥香はきょとんとして目を丸くし、眉間に皺を寄せ律子を見る。律子は頷きながらにっこりと笑う。


律子「檜山さん。お疑いになる気持ちは百も承知です。木尾さんには、人の心に入り込む……いわば超能力……と呼べる力があります。これは最新の医学でも認められた力なんです」


遥香「は、はぁ……」


   遥香はまだ訝しむ表情をしている。


木尾「まず、改めて確認させていただきます。檜山さんにも辛い話になりますが、颯太君は、4年前の倉持一家殺人事件での唯一の


 生き残り……ですね?」


   遥香は俯き、辛そうな顔で応える。


遥香「……はい」


木尾「檜山さんは被害者の倉持由紀さんの妹


 さんで、颯太君の身元引受人になったと」


遥香「……はい」


木尾「今回の捜査にあたって、颯太君の記憶に響く物をリサーチして持ってきました」


   木尾はロボットのおもちゃを取り出す。   


木尾「これは4年前に小学生男子の間で大流行したおもちゃです。念のため、他にも色


 々持ってきましたが、特にこいつが記憶を


 引き出す鍵となる可能性が高いと思います」


 


○同・診察室


   木尾、遥香、律子が診察室に戻り、看護師が颯太を連れてくる。


   颯太の目は虚ろで視点が定まらない。


木尾「初めまして。颯太君。今日はね、お兄ちゃんがおもちゃを持ってきたんだ」


   木尾はロボットのおもちゃを取り出し、颯太に持たせる。


颯太「あ……う……」


   颯太の目が見開き何か言いたげになる。


木尾「反応しましたね。いけそうだ」


   木尾は颯太の後ろに立つ。


木尾「少し、頭のマッサージをさせてね」


   木尾はゆっくりと静かに両手の指をマッサージするような手つきで颯太の側頭部に当てて、固定する。


律子「檜山さん、安心して静かにご覧になっていて下さい」


   木尾は目を閉じ、静かに呟く。


木尾「マインドダイブ」


 


○イメージ


   集中線が画面中央に収縮するイメージ


 


○薄暗く、扉が一つしかない部屋


   ロボットのおもちゃを持った木尾が部屋中央に立ち、周りを見渡す。


木尾「本当に何にもないな。扉だけか」


   木尾が扉に近付き、おもちゃを押し当てると、まるで泥沼に沈むように扉に


   飲み込まれ、ガチャンと扉の鍵が開く。


木尾「さて……と」


   木尾は扉を開き、中に入る。


 


○(回想)倉持家・屋外


   都内だが公園と木々に囲まれ、孤立した場所にある家。


 


○(回想)同・リビング


   颯太(9)がロボットのおもちゃで遊んでいる。倉持由紀(35)が台所側から来て、


由紀「ほら、そろそろパパ帰ってくるから片付けて」


颯太「え!?帰ってくるの今日だっけ!?」


由紀「あら、言ってなかったっけ?ほら、いいから片付けなさい」


   颯太の目線でおもちゃが片付けられる。


   外から車の音が聴こえてくる。


颯太「あ、パパだ」


   颯太はリビングから出る。


○(回想)同・夫婦の寝室


   颯太はクローゼットの中に隠れる。


 


○(回想)同・玄関


   倉持孝之(41)が帰宅し、由紀が出迎える。


孝之「ただいま~」


由紀「お帰りなさい~。出張お疲れ様」


孝之「はい、お土産」


   孝之はお土産の紙袋を玄関の框に置く。


由紀「あら?どうして靴脱がないの」


孝之「今日、ちょっとお客さん連れてきちゃ


 ったんだよね……」


由紀「え~っ!?どうして前もって言ってくれ


 ないのよ~!?」


孝之「いや、ちょっと近くでたまたま会っち


 ゃって、急だったからさ」


由紀「もうっ!ちょっと片付けるから待ってて!」


   


○(回想)同・夫婦の寝室のクローゼット内


   颯太が隠れて、クローゼットのスリットの隙間からクローゼットの外を覗き見る。


颯太「まだかなぁ……」


   颯太はウトウトし始め、寝落ちしてしまう。


   暗闇の中でドタンドタンと音が響く。


   颯太は驚いて目覚め、スリットの隙間から外を覗き見る。何も見えないが、


   リビングの方から怒声が聴こえてくる。


由紀の声「きゃーっ!!あなたっ!?ちょっと!!なんなのよ!?あんた!!」


孝之の声「お、お前っ!?ど、どうしてっ……どうしてこんな事っ……ゆき……にげっ」


   ザクッというような音が響く。


由紀の声「い、いやっ!パ……そ、颯太っ!颯太ぁーっ!!」


   由紀の叫び声とドタドタと走る音が聴


   こえる。颯太は震えて体を縮こませる。


   スリットの隙間から、由紀が寝室に入ってくるのが見える。


   ガチャッと由紀が寝室のドアを閉める音がする。


   ドンッとドアが蹴破られる音がする。由紀が倒れるのが隙間からわずかに見える。


由紀「あ、あ、あんた!!誰なのよ!?あ……」


   ザクッという音。


   続いてドタッという音が響き、液体が飛び散るような音も聴こえてくる。


   颯太は思わずビクッと動いてしまい、ガタッと音を鳴らしてしまう。


   薄暗い中、謎の男のシルエットがスリットの向こう側に見える。


木尾「あ~、あ~、そんな所にいたのかぁ」


   クローゼットのドアが開かれ、光が差し込み、血飛沫を浴びた木尾がニヤリと笑う。手には血みどろの剣鉈を持っている。


 


○現在の新翼医科大学・診察室


   律子と遥香が見守る中、颯太の頭に指先を当てて目を閉じていた木尾の目が見開く。


   突如「ガタッ」と後ろに飛び退き、壁にぶつかり、腰から砕け落ちる。


木尾「え……???俺……??」


   木尾は怯えるような表情をする。


   遥香と律子が駆け寄る。


遥香「木尾さん!?どうしたんですか!?」


   遥香は心配そうな顔で言う。


律子「木尾君、何を見たの?」


   律子は驚きつつも、何かを恐れるかのような顔で問う。


木尾「い、いや……」


   木尾は少し首を振る。


木尾「う、うっ!ぐうううううぅ……」


   木尾に激しい頭痛が起き、痛がって頭を抑え、うずくまる。


木尾の声「思い出せ」 


木尾「な、何を……」 


木尾の声「記憶捜査官?クッククッ……ソウサはソウサでも、操る方の操作だろう?」


   木尾が目を見開き、ニヤリと嗤う。

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【オリジナル脚本】現代劇/サスペンス【短編】 悠宇呂 @animaarca777

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