第40話 チー牛博物館

 エリザベートさんに連れてこられた建物はレンガつくりの立派な博物館だった。入場客でにぎわっていることから、観光地として有名なようである。



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【チー牛博物館】


 この世界を救った英雄たちを記念して作られた建物。初代チー牛はもちろんのこと現役のチー牛についてもいろいろと飾られている。

 時々だがリリカルプリティガールが魔法をみせにきてくれたりするため、子供たちの人気も高い。



〇やっぱりチー牛のスキルはすげえなぁ

●俺もいつかチー牛みたいな英雄になるんだ。

〇リリカルプリティガールの生足やべえ……

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 リリカルプリティーガール……確か、クリムゾン田中さんと同じもう一人の転生者だはずだ。

 二人ともこの世界になじんでいるようだ。俺は……どうなのだろうか? グロリアと冒険して一緒にいていろいろと学べたとは思う。

 チー牛と崇められている彼らは今どんなことを思っているのだろうか?



「シンジ様……? どうされましたか?」

「ごめん、ちょっと考え事をしていたんだ。入ろう」



 不思議そうにしているエリザベートさんに詫びつつも俺たちは博物館をまわることにする。

 


 展示物のほとんどは初代チー牛についてだった。やはり、魔王を倒した彼の名声はすごいのだろう。

 魔王を倒した後はパーティーを解散して放浪の旅に出ていたらしい。そして、最終的にはエルフの里でその寿命を終えた。



「へぇー、この人ってエルフと結ばれたんだ」

「はい、元々パーティーを組んでいたエルフの姫君と結ばれて、子宝にも恵まれています。父の元いた世界を知りたいといって何度かクリムゾン田中様と会食などもされてますよ」

「あー、ハーフエルフだから寿命も長いんだね。すごいなぁ……」



 ってことはエルフの王族なんだよなぁ……あっちから会いにくるってチー牛の扱いはやはり別格なようだ。

 感心しながらも俺は思う。俺もいつかこっちの世界で家庭を持つことがあるんだろうか?

 一瞬グロリアの顔が浮かび彼女はどうしているのかと不安になる。手紙を受け取ってくれるといいけれど……

 しばらく見ていると、魔王を倒してエルフと結ばれた後も何体もの魔物を倒しており、各地で英雄譚として語り継がれているらしい。そういえばウィンディーネ様も彼のおかげですくわれたって言ってたな。



「あ、田中さんのことも書いてある」

「そうですね……チー牛のスキルは非情に強力です。クリムゾン田中様もすごいんですよ。我々吸血鬼を絶滅させかけた『黒い太陽』を焼き払ってくださったのです……その姿はとても頼りがいがあって……みなが英雄というのもわかります」



 先ほどまでの無表情とは別人のように顔を赤らめてほほ笑むエリザベートさん。そこは初代チー牛よりはずっと小規模だったけど、クリムゾン田中さんのことが書いてる。

 その能力は『煉獄」地獄の炎をもってすべてを焼き払う、全身甲冑を身に着けた寡黙なる英雄……だそうだ。


 目が覚めたときとはずいぶんとキャラが違ったし、多少は演じているのかもしれない。



「次はリリカルプリティガールか……会ったことはないけど、魔法少女なのか……」

「はい、王城にてクリムゾン田中様と時々いらっしゃるのでいずれかお会いする機会もあるかと……」


 そう、答えるエリザベートさんの声は少し硬い。なんだろう、仲が悪いのだろうか?



「この世にあるすべての魔法を使えるか……すごいね……Aランクの魔物の討伐に、貴族を暗殺者から救ったりか……」

「ええ、服装のセンスは置いておいて、このお方もまさに英雄にふさわしい存在です。服装のセンスはあれですが……」

「うーん、この服装はセーラー〇ーンとも違うけど多分魔法少女を模倣しているんだろうなぁ……」


 大事なことだから二回言ったのかな? どう見ても魔法少女の格好なのだがこの世界の人には縁がないのだろう。

 どうこたえようと苦笑していると何者かに服の袖を引張られた。振り向くと5歳くらいの少女が涙目でこちらを見つめていた。



「いったいどうしたのかな?」

「あのね……お母さんからもらったイヤリングを落としちゃったの……一緒に探してくれない?」

「別にいいけど……落としたのはついさっきなんだね? だったら……」


 可愛らしい子供に頼まれたら冷たくはできないだろう。俺は異世界ウィキを使ってドロップアイテムを探すと、脳内に展開されたマップが場所を教えてくれる。



「あっちの方にあるはずだよ、一緒に……て、えええええ?」

「ふぅん、魔力は感じなかった……探知系のスキルかしら? サポート系だけど使えそうなものをもっているわね。ほかにもあるんでしょう?」



 驚きの声を上げるのも無理はないだろう。だって幼女だった人の体がどんどん大きくなっていき、その服装すらも変化していく。



「初めましてといわせてもらいましょう。私の名前は鈴木……じゃなかった。リリカルプリティガールよ。私は田中とは違うわ。あなたとゆっくり話したいの。まさか断らないわよね?」


 幼女から魔法少女のような姿になった女性は俺の手を掴みながらそういった。







新連載です。

よろしくお願いします。


巨乳好きの俺が転生したのは貧乳優遇異世界でした〜俺だけ巨乳好きな異世界で、虐げられていた巨乳美少女達を救っていたら求愛されまくるようになった件


https://kakuyomu.jp/works/16818093075826685289

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