第37話 乱入者
木の幹の大半が内部から膨張した水によって破壊された『世界樹』を前に、全力を使い果たしたかのようにして、倒れているグロリアに急いでかけよる。
「シンジ……やったか?」
「いや、それはフラグだって……、でもお疲れ様」
「だれかさんが無茶をしていたからな、早めに倒さねばと思ったんだ」
力なく笑う全身傷だらけの彼女にポーションを飲ませる。 どうやら俺の嘘をはとっくにばれていたようだ。
少しは楽になったであろう彼女の手を取って立ってもらう。
「おかしい……『世界樹』がドロップアイテムにならない……?」
「まだ生きてるってこと?」
俺とグロリアがあわてて武器を構えた時だった。『世界樹』の根元が再び再生していき……中途半端な状態でとどまるとその中に一人の全身が緑色の小さな女の子がいるのが見える。
「これは植物の精霊ドライヤードか……」
「魔王によって狂わされた精霊ってやつだね。この樹の中にいたんだ……」
「ああ、とどめを刺すぞ」
「え?」
剣を振り上げるとグロリアに驚きの声を上げてしまう。だって、外見は少女で……
『コワイコワイコワイ!!』
ドライヤードと目が合った時だった。彼女の目がまがまがしく光ると、再び枝がこちらに襲い掛かろうとしてくる。
「くっ!? まだ力が残っているのか!!」
「グロリア」
とっさに俺は自分のうかつさを食いながら彼女をかばうように押し倒す。ああ、そうだよ。見た目は少女だけど、こいつはもう魔物になっているんだ。即座に攻撃すべきだったのだ。自分の愚かさを悔いる。
「とどめをさせただろうに……魔物相手に油断とは見てられん。炎よ、邪悪なる枝を焼き払え」
たった一言だったその一言と共に放たれた詠唱によって生み出される炎が『世界樹』のみを焼き払う。
いつの間にか俺たちの後ろにいたのは全身を真っ赤な甲冑に身にまとっている騎士のような人影だった。兜ごしに聞こえるくぐもった声でかろうじ男だとわかるくらいである。
「あなたは……?」
「王都で見たことがある……彼は……だが、なんでこんなところに?」
突然の乱入者に混乱する俺だったが、グロリアは相手の正体をしっているようだ。だけど、冒険者にこんな人はいただろうか?
「エルフと旅か……ふふ、わかる、わかるぞ。あっちの世界にはいなかったからな。長命種であり、美しい顔立ち……そして、こっちの人間たちにはその歴史的対立から畏怖している上に、エルフは僕たちを無条件で尊敬している」
え? あっちの世界? この人はまさか……混乱する俺をよそに彼はこちらの腕をつかむとそのまま担ぎ上げる。
「待て、シンジを……どこにつれていくつもりだ」
「悪いな、エルフよ。こいつは俺が……俺たちが預かる」
その一言と共に、首に激痛が走り、俺は意識を失った。
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