第34話 『朽ちた世界樹の森』
『朽ちた世界樹の森』に到着するとそこは不気味なほど静まり返っていた。普段はいるはずのゴブリンやスライムはもちろん、小動物たちも見当たらない。
『異世界ウィキ』の地図を使ってもそれは同様だった。反応がないのだ。魔物はもちろん動物たちもここから逃げ出したということなのだろう。
「これはさすがにやばそうな気がするぞ……」
「ああ、俺とルードが最初に来たときはここまでではなかったはずだ……警戒しながら進むぞ」
リードハルトたちの案内に従って、慎重に進んでいく。森の奥の方はヌシだった『イビルスパイダー』のおかげで手つかずのドロップアイテムや、エリクシルもあったが、気にしている余裕はない。
そして、いっそう木々がお生い茂っている場所につくいたと時だった。地図がけたたましく光っているのに気づく。ゴブリンたちはもちろん、なぜかもう一匹の『イビルスパイダー』のアイコンがこちらにむかってくる。
「みんな、気をつけろ。イビルスパイダーやゴブリンたちが攻めてくる!!」
「なんだって、まさか……ヌシはぼろぼろだったはず……まだ動けたというのか!!」
俺の言葉にリードハルトさんが驚きの声をあげる間に、やってきた魔物の姿は異常だった。
まるでゾンビのようにゆったりと、そして、整列してこちらにむかってきているのだ。イビルスパイダーの生態はよくわからないがゴブリンたちがあんなに大人しいのは不気味だった。
「これは精霊魔法の一種だな……見てみろシンジ、やつらには根がはってあるだろう。おそらくあれで栄養を奪い取ったあげく操っているのだろう」
「これが『世界樹』の能力なの? さすがにチート過ぎない?」
グロリアの説明の通り彼らの足元には根が張っているのがみえる。
「そうでもないさ、操られているやつらには意思がない。弱体化しているはずだ。おそらく、これは時間稼ぎだろうさ」
「ということは……まだ『世界樹』は万全じゃないってことだよね? この間に何とかつっこめば……」
とはいえ、厄介なのはイビルスパイダーがいることだ。ゴブリンたちならばこの数でも彼らで余裕だろうが、多少はステータスが下がっていても、Bランクの魔物の相手はつらいのではないだろうか? そう思っていた時だった。
「だったら俺たちがやらねばな。貴公らはさっさと行くといい!! これだけの能力を持っている魔物を放置するのは危険すぎるからな」
「ああ、そうだ。俺はいつかヌシに挑むつもりだったんだ。ちょうどいいぜ」
リードハルトの言葉に他の冒険者も乗っかる。本来は偵察だったが、ここまで本格的に『世界樹』が動いているのだ。一刻も状況を確認しなければいけないことは皆がわかっているのだろう。
「シンジ……いくぞ。私のサポートを頼む」
「ああ、みんな、気を付けてね!!」
最後に冒険者たちに声をかけて、俺は魔物がいないルートを目指す。そして、少し経つと戦いの音が聞こえてきた。
「グロリア……彼らは震えていたね」
「本来は冒険者ランクが上位の存在に会ったら逃げろが鉄則だからな……」
彼らのためにも早く戻らねばとおもい俺たちは急ぐのだった。
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