第32話  守るべきもの

「イザベルさんやっぱりいい人だな。まさか格安で薬草とかを売ってくれるなんて……」


 しかも周辺で値上げしている近隣の商会からまで買い付けて協力してくれたようなのだ。彼女こそが正義の商人だろう。

 おかげでお金もだいぶ余ったのでCランクの冒険者以外にもいろいろと装備が渡せそうだとレイズちゃんが喜んでいた。



「ああ、そうだな……ただ、顔色が悪かったのが心配だ」

「そうだね、今度サハギン料理でも差し入れようか」



 冒険者ギルドに報告して、感謝されながら俺たちは帰路につく。とりあえずは今日できる事はやりきったはずだ。

 あとは実際どうなっているかだろう。


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『世界樹』


 かつてはドライヤードという名の精霊だったが、魔王の魔力を浴びたせいで暴走してしまった。

 チー牛によって討伐されたが、植物の生命力は異常だ。いまだその身は健在だともいわれている。

 その証拠にこの周囲にはエリクシルという特殊な薬草がはえている。



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 このように実際遭遇していないからか、一般的な情報しか調べることができない。ゲームとかだと木って火とかが弱点だとは思うんだけどどうなんだろうね。もうちょっと朽ちた世界樹の森の口コミを調べてみれば何かつかめるかもしれない。



「今戻ったぞ」

「ただいまー」

「二人ともおかえりーー、うちでご飯食べるの久しぶりだね」



 宿に戻ると美味しそうな料理の香りと満面の笑みでリリーちゃんが出迎えてくれる。守りたいこの笑顔、いや、守らなきゃだよね。

 


「二人とも帰ってきたのね、じゃあ、朽ちた世界樹の森の話は知っているわよね、いつ避難するのかしら?」

「それはもちろん……知ってますけど……避難って?」

「悪いが私たちは出て行かないぞ。だって、お前はこの街を離れるつもりはないだろう?」



 何かを言いたそうなマリーさんを睨みつけるグロリア。二人の間にぴしりと何かが生じた気がする。



「わかってるでしょ、私はもう仲間を失いたくないの。幸いにもあなたはこの街に愛着はないでしょ。リリーの預け先はすでに手配してあるの。そこまで護衛のお金は払うわ。だから……」

「やはり、お前はこの街をでないんだな?」

「我がままだとはわかってるわ。でもこの宿はあの人とこの子との思い出がたくさんつまっているんですもの」



 マリーさんがグロリアから目をそらし申し訳なさそうにしながらも壁をなでる。そこにはリリーちゃんの身長を図っていたであろう、傷がいくつも刻まれていた。

 おそらく今は亡き旦那さんとリリーちゃんの成長を喜んでいたのだろう。



「気持ちはわかるさ……」

「だったら……」

「だからこそだ。私ももう、仲間を失いたくはないし、この宿には思い出があるんだ。大切な仲間が大切な人と共に楽しそうに相談して宿屋を作ってて……何回も泊まったんだ。長命種である私にとっては大した時間ではないと思うかもしれないが、大切な思い出なんだよ」

「そんなこと言われたら……何もいえなくなるじゃないのよ、馬鹿……絶対帰ってきなさいよ」

「当たり前だ。私は帰って来るさ。だから、あれを作ってくれ。この宿ができたときに皆で食べたお前の得意料理をな」

「手間もかかるし、材料費だってかかるのよ……注文したからには来れなかったとか絶対許さないんだから」



 グロリアの言葉にマリーさんが涙ぐみながらも抱き着く。俺はそれを見つめてきょとんとしているリリーちゃんに声をかける。



「お母さんとグロリアは忙しいみたいだから、先にご飯をたべてようか?」

「うん、わかったー。今日は魔牛のシチューだよ。とってもおいしいの!!」



 くぐもった声をあげる二人を背に俺は明日の任務に改めて気合をいれるのだった。






最近ユニコーンオーバーロードをはじめました。はやくドスケベエルフの里に行きたい……

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