第24話 ヌシとシンジ
『人の子と、エルフの子よ、わらわの危機を救ってくれて感謝するのじゃ』
「……」
「……」
今更威厳を出そうとする精霊さんを俺たちは無言で見つめる。
あの後俺たちは陸にあがってきたサハギンを数匹狩って、ドロップアイテムであるサハギン肉をあたえていたのだ。
『わらわはこの地を守護する精霊でウィンディーネと言う。敬意に満ちた目で見つめ、尊敬の念を込めてウィンディーネ様と呼ぶことを許す」
「ウィンディーネ様、口の周りに魚肉がついていますよ」
『おっと、失礼したの。んん、美味じゃが、さすがに飽きてきたのう……」
俺が注意するとペロッと舌で魚肉をとるウィンディーネ。威厳とは……? と思っているとグロリアが耳元でささやく。
「シンジ、言いたいことはわかるがつっこんではだめだ。精霊は気難しい種族だからな。それと交渉は私に任せてほしい」
「大丈夫だなの?」
「ふふ、私はエルフだぞ、自然や精霊と共に生きてきたんだ。このくらいは朝飯前というやつだ」
どや顔のグロリアにちょっと嫌な予感を覚えたけどせっかくなので任せることにした。
「偉大なる水の精霊ウィンディーネ様、お願いがございます。この川にいるサハギンたちを退治してはいただけないでしょうか? 村の人間たちが困っているのです」
敬語で頭を下がるグロリア。ちょっと新鮮である。
『いやじゃ!! わらわは今色々あってつかれているのじゃ!!しかも、こいつら人間は感謝の気持ちを表そうともしない。なんでわらわが助けなければいかんのじゃ!! 誠意をみせよ!!』
「誠意ですか……? いったいどうすれば……?」
『おぬし、エルフじゃろうが……そんなこともわからんのか? 愚かじゃのう』
あ、ウィンディーネ様の言葉でグロリアがむっちゃ頬をひきつらせてる。
「それでは村の者にあなた様をたたえる祠を作らせましょうか?」
『ふん、そんなもんいらんわ。そんなに察し悪いようだと『気が利かない男勝りのエルフよりも、家庭的な女の子がいいや』って言われて一緒にいる男にも逃げられるぞ』
「なっ!? ぶっ殺すぞ、このクソ精霊!!」
「グロリア、落ち着いて!! だめだから、この子、倒したらこの村が滅んじゃうからーーーー!!」
今にも斬りかからんとするグロリアを羽交い絞めにして必死にとめる。力がつよいよぉぉぉぉぉぉ!!
「今度はさ、俺が交渉するよ。だからグロリアは落ち着いて、ね」
「く、だが、想像以上にむかつくぞ、この精霊」
グロリアをなだめてから、俺はウィンディーネ様に頭を下げる。大丈夫、さっき彼女を異世界ウィキで調べたので交渉方法はわかっている。
「先ほどは失礼しました。ウィンディーネ様」
『なんじゃ? わらわはもう、お前ら人間なんぞのためにはたらか……』
「私たちが作ったお詫びとしてサハギン料理を召し上がっては頂けないでしょうか?」
『サハギンじゃと……ふん、あいにくだがもう、サシミは飽き……』
「もちろん、サシミだけではありません。多種多様なサハギン料理を準備させていただきます。そうですね、かつて召し上がっていただいたサハギンの煮つけなどいかがでしょうか? ほかにもアクアパッツァなど新しい料理も用意する予定です。もちろん、あなたさまの大好きな香草もつけます。そして、飲み物は山で採れた新鮮な湧水をお出しする予定です」
『じゃが……』
「そして、年に一度、ウィンディーネ様をたたえる祭りをすることをお約束いたしましょう。われわれ人間のために一生懸命働いてくださったウィンディーネ様へのせめてものおわびでございます」
『むぅ……そこまで言うならば考えんでもない……準備ができたらまた呼ぶがよい』
そういうとウィンディーネ様は再び川にもどっていった。これでとりあえずはひと段落かな……
「なんだ、今のは? なんでそんな的確にウィンディーネ様のほしいものがわかったんだ。これもシンジのスキルの効果なのか?」
「まあ、彼女を調べたら欲しいものが分かったっていうのが近いかな……とりあえず村の人たちにも相談しよう」
「私役に立ってないな……シンジに捨てられたらどうしよう……」
耳をしゅんとさせて、何やらぶつぶつとつぶやいているグロリアを心配しながら村にもどるのだった。
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『ウィンディーネ』
かつてははぐれ精霊だったが、魔王を倒したチー牛に救われて、この村の守護者となっていた。
好物はサハギンの刺し身だったさすがに飽きてきた。実は寂しがり屋でかまってほしいが、最近は人間たちも称えてくれないので拗ねている。
弱点 雷
ドロップアイテム
精霊のエキス
レアドロップ
ウィンディーネの雫
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