第23話 川のヌシ

グロリアと共に川にいくと驚くほど人がいない。それだけではなく、桟橋などは破壊されておりまるで台風でも過ぎ去ったようになっていた。

 しかも川では魚か何かが猛スピードで動いているのが見える。


あ、鳥が空から飛んできて餌を探そうとして……逆に大きく口をあけて川から顔を出した魚にくわれた。

 なにこれ、えぐい……過酷な生存競争を見せられたよ……



「この世界の魚ってあんなに凶暴なの? 俺の知っているのとだいぶ違うんだけど!!」

「いや、今のはサハギンだな。普通の魚はあんなに凶暴ではないぞ」

「あれ、さっきたたかったやつらあんなに素早かったっけ? すげえ速さで鳥を食べてたよね」

「やつらは水中ではCランクだからな、とはいえここまで凶暴化しているというのは何かあるのだろうな……」



 険しい顔をしてグロリアが考え込む。そんな中、食堂の店主に釣り道具を借りた俺はそのまま、川へ向かう。



「おい、シンジ。この状況で川にもぐりこむのは難しいと思うぞ。さすがの私も水中ではあまりたたかえない」

「いや、俺たちは別にヌシに会いにはいかないよ。あっちからきてもらうんだ」


 そう、ウィキが正しければこれで釣れるはず。俺は以前ドロップした『サハギンの魚肉』をえさにしてに釣り竿を垂らす。

 『異世界ウィキ』の通りならば、これで釣られるはずなんだけど……



「ヌシがどんな存在かは知らないが、こんなもので釣れるのか?」

「もうちょっとだけ待って……うおおおお?」



 うんともすんも言わない釣り竿に冷や汗を流しているといきなり揺れて、すさまじい力で引っ張られる。



「シンジ、大丈夫か!!」

「え、やば!!」



 おもわず川にひきずりこまれそうになったけど、グロリアが竿を持つと同時にあっという間に立場はが逆転してそのまま吊り上げることに成功する。

 グロリアの腕力がやばすぎる……これがレベルの違いだろうかちょっと悲しい。そして、肝心の獲物は……



「これは……ずいぶんと神秘的な人? だね」

「いや、水の精霊だな。実体化できるほどの強力な個体は私も初めて見た。おそらくはこの川を守ってくれていたのだろう」



 水色に透き通った体をした人間でいう五歳くらいの少女の外見をした精霊さんは必死な表情でサハギンをたべていた。どことなくやせ細っているのは気のせいだろうか?

 


「君がヌシなのか? いったい何があったんだ?」

『お……』

「なにかな?」


 こちらを見て何かをつぶやいたので耳を寄せると彼女はこういった。


『おなかすいた……』

「……」



 神秘的だとちょっと感動していたきもちを返してほしい。

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