第20話 漁港へいこう
翌日、さっそくクエストを受注した俺たちは他の冒険者と一緒に、商人の馬車に揺られていた。
「いやー、噂のルーキーと一緒に組めて嬉しいよ。ヌシを倒したんだろ。すごいじゃないか」
親し気に話しかけてくる皮鎧の青年がケインで、もう一人の無言の魔法使いの女性がマリンというらしい。
「ええ、まあ……」
「そうだ。シンジはすごいんだ」
冒険者ギルドでのさわぎはすっかり広まっているらしくちょっと恥ずかしい。笑ってごまかそうとしているのに、得意げにどや顔をするグロリア。
うれしいけどちょっと恥ずかしいね。
「いや、俺は冒険者になったばかりだしまぐれだよ。それよりもケインさんはウォーレムの村の村は結構行くの?」
「ああ、あそこの魚はむちゃくちゃうまいんだよ。サハギンとかが出てくるが、陸地の中ならゴブリンに毛が生えたようなもんだしな。Cランクの俺たちのてきじゃない。二重で美味しい仕事なのさ」
「海鮮か……それに、サハギンも美味しいのだろうか?」
「え…? さすがに冗談だよな……エルフジョークか?わからん」
すっかり魔物食に興味をもったらしいグロリアの言葉に変な声をあげるケインさん。 いったいどうしたんだろう。
実物を見てみてだけど、確かに食べてみるのもいいかもしれない。下半身人間とかだったらさすがに食欲がわかないしね。
「そういえばそっちのマリンさんは大丈夫なの?」
「ん? ああ、こいつは乗り物酔いに弱いんだよ。だけど、新鮮な魚が食べたいから毎回無理してくるんだよ。食いしん坊だよな」
「……うるさいですわ……私の品位がさがるような言い方はやめてくださらない?」
よほど体調が悪いのか、弱弱しい声でマリンさんがケインさんをにらみつける。
だけど、本当に大変そうだな……
カバンからを念のため用意しておいたんのを取り出して差し出した。
「これは……?」
『水月草』の根をすりつぶしたものだよ、乗り物酔いにきくんだ」
「へぇー、『水月草』って毒消し効果だけじゃないんだな」
「シンジはそういうことに詳しんだ。口に含んでみろ」
「……わかりましたわ」
感心したとばかりに声をあげるケインさんと、Bランク冒険者であるグロリアの言葉に決心がついたのか、マリンさんが意を決したように口に含む。
「うう……にがいですわ……」
「ははは、情けない顔」
軽口を叩いたケインさんをマリンさんがにらみつけると、そのまま何かを小声でつぶやいた。
「あなたね……パートナーが弱っている時になんて口をききますの!! 天罰ですわ!!」
「ぎゃーーー、お前こんなところで魔法を使うなよ。でか、元気になったな!!」
ケインさんが凍り付いた腕に悲鳴を上げながら突っ込みをいれると、マリンさんが驚きの声をあげると、洗練されたしぐさで、片足を後ろに引き膝を曲げてほほ笑んだ。
「あら本当ですわ。シンジ……助かりましたわ」
「いえいえ、どういたしまして……」
「あの、その前に俺の手をなおしてくれない?」
情けない声をあげるケインさんを無視して俺とグロリアに話しかけてくるマリンさんを見て、彼女を怒らせないようにと決める。
「ん……敵のようだな。いくぞ、シンジ」
「え?」
驚いている俺をよそにグロリアだけでなく、ケインさん(手は凍ったまま)とマリンさんも武器を握りしめていた。二人もグロリアより少し遅れてだがきづいたようだ。
やはりこういうところが俺はまだまだだなと思ったタイミングで、御者室にいる商人の声が響く。
「サハギンだ、サハギンがまちぶせてやがったぞーー」
その声を合図に俺たちは外へと出る。初めての魔物だけどどんなやつなのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます