第19話 魔牛をたべよう

 ファンタジーといればやはり魔物食も定番だろう。ダン〇ョン飯とか……ダンジョ〇飯とか……あれ、あんまりないな!!

 でもさ、魔牛だよ。焼いて串にしても美味しいし、丸焼きも最高だった。それならば野生化していても美味しいと思うんだけど……



「グロリアも冒険者ギルドでたべてたじゃん。なんでそんな反応するの?」

「あれは料理人がちゃんとさばいて作ったものだろう? こっちは倒したら勝手に肉になるんだぞ。不気味だと思わないか? それに飢えかけた冒険者がたべて大変なことになったという話もあるしな」

「ああ、まあ……確かに……」



 俺からすれば魔物だろうが倒すとアイテムになる時点で不気味そのものなのだが、彼女たちからすれば、食品がそのまま変化するのはやばいという認識なのだろう。

 まあ、確かに落ちているものを食べるのはあれだしな……



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『はぐれ魔牛の肉』


 レアリティD

 調理難度1


 野生化した魔牛の肉。家畜の者よりも固いが結構おいしい。ただし魔力が高いため料理スキルがないとおなかを壊してしまう。

 また、所詮は生肉なのですぐに悪くなってしまう。


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 なるほど……やはり食べれないわけではないらしい。おそらくだけど、ドロップアイテムになっているという衛生面での不安と、体調を崩したという冒険者の噂話から拒否反応がでているのかもしれない。

 さっそく、覚えたばかりの料理スキルを使って『はぐれ魔牛の肉』に触れると調理方法が脳裏に浮かんでくる。



「じゃあさ、グロリアは食べなくていいから、手伝ってくれないかな?」

「それは構わないが……」

「それじゃあ、このお肉が悪くならないように冷やしてもらいつつ、たき火に火をつけてもらっていいかな……あとは余分にとっておいた薬草をもらうね」

「ああ、そこまで食べたいのならば止めないが……体調が悪くなったら教えてくれ。すぐに治療しよう」



 そして、俺たちは革袋から『薬草』と鍋などの調理器具などを取り出して、りょうりをはじめる。

 材料は以下の三つだ。


はぐれ魔牛の肉と薬草、水月草と調味料である。


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薬草

レアリティE


 傷を癒す効果のある草。香りもよく、料理にも使われる。RPGでよくあるやつである。


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水月草

レアリティE


 水に映る三日月のような形をした草。綺麗な水辺の付近でしか咲かない毒消し効果があり、多用される。部位によって様々な解毒効果があり、葉の部分は毒に、根っこは乗り物酔いなどにきく。

 また、その美しい形状から、異性へのプレゼントにもつかわれる。毒消し効果を持つこの草だが、恋の病には効果はないようだ。


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 まずは少し硬めな肉を適切な大きさに切り分けて鍋に入れて焼いていく。そして、塩で下味をつけて肉の焼ける香ばしい匂いする中に小さく刻んだ『薬草』と『水月草』を一緒に焼いていく。

 肉に焼き目がつくまで両面を焼き、外側がカリッと、中はジューシーになるように仕上げると、あたり一面から漂う誘惑的な香りが、宴の始まりを告げた。


 肉と薬草たちの深い風味に満ちていた。薬草の芳醇な香りが、鼻先に触れるたびに口の中が今か今かと唾液で満たされる。

 そして俺は焼き加減の絶妙なはぐれ魔牛の肉に口をつける。


「すごい……おみせのよりもちょっとかたいけど、肉は外側はカリッと焼き上がり、中は柔らかくジューシーだ。薬草の風味が肉の中にしみ込み、一口ごとに口の中に広がっていくよ!!」

「……うう」


 料理スキルを使った魔牛の薬草焼きは絶品だった。毒となりうる魔力も『水月草』が浄化しているからか、体調の不良はなさそうだ。

 そして、干し肉をかじりながらうめき声をあげているグロリアに声をかける。



「その……ちょっと食べる?」

「いや……さすがに魔物の肉は……だが……」



 チラチラとこっちを見ている無茶苦茶悩んでいる彼女をみるとちょっと申し訳なくなってくる。だけど、もうスライムゼリーを食しているんだよね……

 毒もないみたいだし、強く勧めてみるか。



「実はもうおなかいっぱいでさ。手伝ってくれないかな? 料理スキルを使っているから問題はないと思うし、万が一体調をくずしても、『水月草』があるから大丈夫だと思うよ」

「……まあ、そこまで言うのなら……」



 しばらく逡巡していたグロリアだったが、美味しそうな香りには耐えられなかったのか恐る恐る肉をつまんで……口をつける。



「おお、確かにこれはうまいな!! 店で食べるのもいいがこういうところで食べるのもまた、違う!!」


 パクパクですわーと言いそうなくらい美味しそうなグロリアに微笑む。



「よかった、気に入ってくれて嬉しいよ」

「ん……いや、まあ、その……魔物というのも悪くない……そう思っただけだ……」



 先ほどまでの自分の言葉を思い出したのか顔を真っ赤にするグロリアだった。





「ええ、もう終わったんですか!! しかも、こんなに大量に採取してくるなんて……」

「ああ、シンジが発見してくれたんだよ」




 冒険者ギルドに依頼の品を持っていくとレイズちゃんがオーバーリアクションで返してくれる。

 いや、これはあえてだ……いまだ俺を舐めている人間にアピールしてくれているのだろう。


「それで、明日の依頼だが、これを受けたい。大丈夫か?」

「護衛依頼ですか……? 少し難易度はあがりますけど、この短期間でいくつもの依頼を達成したお二人ならば大丈夫だと思いますよ」

「商人の護衛依頼か……」



 グロリアが選んだものは、魚村に物資を持っていく商人との依頼のようだ。ほかの冒険者と一緒らしく、報酬はみんな均等と書いてある。

 

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【ウォーレムの村】


 近くに大きな川があり、新鮮なさかながウリの村。あまり広くはないが新鮮な魚料理がたべられるということで、観光客も多数いる。

 ただし、川には魚系の魔物もいるので注意すること。




〇ここな海鮮料理はまじでうまい。特にサシミという料理は最高だ。

●魚系の魔物が多いけどこれって食えないかな? いや、魔物をたべるっておかしいか……。

〇こんな田舎町でてってやるぜ。

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せっかくだからと、ウィキで調べるとサシミとかあるの!! これも俺と同じ異世界の転生者が広めたのだろうか?



「魚が美味しい村なんだね。もしかして、魚系の魔物も美味しいのかな?」

「なっ、シンジは私の思考も調べられるのか?」

「え……?」

「あ……?」


 かぁーっと顔を真っ赤にして下を向くグロリア。すっかりと魔物食にはまったらしい。

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