第18話 新たな冒険
それはかつて世界樹と呼ばれていた。だが、とある争いによって一人の英雄によって滅ぼされた……かのように思われていた。
「ゴブゥゥゥ……」
「スラァァァ……」
周囲にはその植物の枝によって捕食されている魔物たちの阿鼻叫喚の声が響いていた。中には冒険者らしき白骨死体もある。
ここ……『朽ちた世界樹の森』に強力な魔物があまりいないのはこの『世界樹』が原因だった。強力な魔物は『世界樹』によって喰われるか、戦うまいと逃げだしていたのだ。
唯一の例外はイビルスパイダーだったが、かつての力を取り戻しかけている『世界樹』にはついにフリを悟り逃げだした。
そして、この『世界樹』はついに弱い魔物にまで手を出し始めていく。この行動や……主であるイビルスパイダーの行動の変化にきづいたシンジたちの報告がどう世界を変えるかはまだ誰にもわかっていないのだった。
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「とりあえずはイビルスパイダーの素材の鑑定が終わるまでここで冒険者をやろっか。色々なところにいけば俺のスキルもあがるし……」
「そうだな……ついでに、シンジの冒険者ランクも上げるぞ!! 冒険者ランクがあがれば遠くの街への護衛なども受けることができるからな。護衛対象についていけば移動費が浮くんだ」
などと、今後のことを話し合い翌日から俺たちはしばらく冒険者として生活をすることにした。
冒険者ギルドの受付に行くとさっそくレイズちゃんが出迎えてくれる。
「おはようございます。お二人ともさっそくクエストを受けてくださるんですね、ありがとうございます」
「ああ、できれば難易度が高く遠くに行ったりする採取クエストがいいな。早くシンジのランクを上げたいんでな」
「なるほど……Cランクになれば旅も楽になりますもんね。ふふふ、相棒さん想いですね」
そんな軽口を叩きあいながらグロリアが決めたのは『水月花の採取』『薬草の採取』『野生化したはぐれ魔牛の退治』の三つである。
そんなに一気にうけて大丈夫ですか? と心配されたが、そこはグロリアが押し切った。
「うわぁぁぁぁぁ、やっぱりいいなぁ……これ」
「ふふ、シンジもすっかりシルフィードが気に入ってくれたようだな」
「ぴーぴー!!」
冒険のためのちょっとした買い物を終え、リリーさんにちょっとした相談事をしたた俺とグロリアはシルフィードに乗って目的地である『水月花の湖』へと向かっていた。
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水月花の湖
質の良い水月花が採取できることからこう呼ばれることになった。街からそうはなれてもおらず魔物も強力なものが現れないことや美味しい魚がとれるため、冒険者だけでなく近くの村人も魚釣りなどにきている。
ただし、野生化した魔牛には注意。野生を取り戻した彼らの力はゴブリンすらもはるかに凌駕する。時々観光にきた冒険者カップルが襲われてデートが台無しになりわかれることも。
出現する魔物
スライム
ゴブリン
???
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水月花の湖にたどりつくと、そこには視界いっぱいの湖がひろがっていた。水面に太陽の光がキラキラと反射しており、なんとも美しい。
そして、湖の周囲にうっすらと何かが光っているのが見える。なんとも幻想的で冒険者がデートにいくというのも頷ける光景である。
「あそこに光っている草があるだろう? あれが水月草だ。ああやって、日中は太陽光を集めて、夜には光っているらしいって……シンジは調べられるんだったな。余計なお世話だったか」
語っている最中に気恥ずかしくなったのか、頬をかくベロニカ。
「ううん、こういう風に現地の人の話を聞くのも好きだよ。ウィキだけじゃない生の声はまた違う楽しさがあるからさ。グロリアは植物がすきなの?」
「ああ、元々は森で暮らしていたこともあるかもな……色々な植物を見るのは好きだよ。まあ、毒草を食べるのは嫌いだが……」
「最初会った時は大変そうだったもんね」
「だが、そのおかげでシンジとあえたんだ。怪我の光明というやつだな」
冗談を言うグロリアと軽口を叩きながら俺は革袋から二つのアイテムを取り出した。
ボッタクリン商会で購入した月のようなきれいな円形の白い花の『水月花』と『薬草』だ。イザベルさんの無事を確認しがてら行ったんだけどあいにく体調をくずしているらしく会えなかったのは残念だったけどなぜか格安で売ってもらえたのである。
ウィキのマップのアイコンが円形のものからそれぞれの形に変化していく。
「うん……『水月花』と『薬草』の生えている場所がわかったよ」
「相変わらずすごいな……現物を触れるだけで生えている場所が分かるとはな」
「うん、俺の『異世界ウィキ』がこの二つを学習したからね」
本当は買わないでお店で触るだけでもよかったんだけど、さすがにただで利用するようで悪い気がしたのだ。
そして、次は動いているアイコンを調べる。ゴブリンとスライムのアイコンの他にいくつか動いているアイコンがあるが複数で行動しているのはおそらく冒険者か村人だろうで、水中をうろついているのは、魚系の魔物だ。
そんな中すさまじい速さで動いでいるアイコンをみつけた。
「あとは……はぐれ魔牛の場所もわかったよ。逃げられる前にこっちを先に倒そう!!」
「本当にすごいな、本当だったら痕跡などを探って狩らねばならないというのに……」
あまりに褒めるグロリアの言葉にちょっと気恥ずかしいものを感じつつ俺たちは魔牛の方へと駆け出すのだった。
「うおおおおーーー!! こっちだぁぁぁーーー!!」
水月花の湖を移動して、はぐれ魔牛を見つけた俺は赤い布をたなびかせて大声で叫び声をあげる。
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はぐれ魔牛
家畜としてかわれていた魔牛が野生化し魔物となったもの。人に喰われるだけだった存在の魔牛はいきるためにその魔力の使い方を覚えているために素早い上に力はかなり強い。
赤いものに興奮して襲ってくる。
弱点
魔法全般には弱い。まあ、牛だしね……
ドロップアイテム
はぐれ魔牛の肉
認識票
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「ブモーーーー」
赤い布に反応したはぐれ魔牛がこちらの方へと襲い掛かって来るのを見て、俺はそのまま身をかわし……背後にひかえていたグロリアの魔法が放たれる。
「炎の槍よ、我が敵を貫き通せ!!」
「ブモー―!!」
爆音とともにどこか切ない悲鳴が鳴り響く。煙が晴れたところには漫画のような骨付き肉と、金属でできた認識票があった。
「これってどういう仕組みなんだろ? 倒しただけで肉になるよね……」
「うん? 魔物とはそういうものだろう?」
疑問に思ったがなぜかグロリアにキョトンとされる。まあ、ファンタジーの世界だし前の世界とはちがう常識があるのだろうとふかくかんがえないことにする。
「この認識票を冒険者ギルドに持っていけば魔牛の討伐クエストはクリアだ。採集クエストもシンジのおかげですぐに終わttasi早く帰れそうだな」
「あ、せっかくだからさ。ここで食事しない? 実はいろいろと準備してきたんだよね」
俺はリリーさんに相談してもってきた調味料を見せる。実は今回の依頼が魔牛討伐であり、色々と準備してきたのである。
ファンタジーといればやはり外で調理してたべるのも醍醐味の一つだろう。
「だがたいした食材がないだろう? 干し肉くらいしかもってきてないぞ」
「食材ならさ、ここにちょうどあるじゃん」
俺が先ほどゲットした魔牛の肉を指さすとグロリアはほほを引きつらせる。
「な……魔物を食べるのか?」
なぜかグロリアがなぜか引いた様子でいうのだった。いや、この前魔牛をうまいうまいって食べてたじゃん!!
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