第11話 異世界ウィキがあればスキルだってとり放題

 森の奥に入った俺たちはとある理由で全力疾走をしていた。



「うおおおお、ゴブリンたち結構早いな!!」

「くっ、こんなやつら相手に逃げなければいけないとは……」



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『ゴブリン』


 群れを成して行動する人型の魔物。力は弱いが、ずるがしこい。罠などをしかける頭脳はあり、時と場合によっては格上すらも倒す。


弱点 すべて


ドロップアイテム

ゴブリンの耳


レアドロップ

ゴブリンソード


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「ごぶごぶーーー!!」



 背後から射られている矢は石を魔法でいなしながらグロリアが悔しそうに呻く。その様子はネットで人気なシチュレーションを彷彿とさせて、俺は思わずお願いする。



「……なあ、グロリア。ちょっと今の悔しそうな感じで『くっ、殺せ!!』っていってみてくれない?」

「それもスキルの入手条件なのか……?  くっ、殺せ!!」


 うおおお、リアルくっころだぁと感動していると脳内にアナウンスが響く。


 スキル『とんずら』を習得しました。



「グロリア!!」

「ああ、私も覚えたぞ!!」

「ゴブ!?」



 即座に反転してそのままの勢いでこちらを追いかけていたゴブリンたちに切りかかる。

 さきほどまで獲物だとなめていた相手がいきなり襲ってきたこともあり油断だらけで無防備だった。



「くらええ!!」



 剣術LV2を習得し、ドワーフの作りし魔剣を手に握った俺は驚くほどあっけなくゴブリンを切り裂く。

 ローナの作った剣は俺の手に恐ろしくなじむ上に、レベルが上がるにつれてこの剣自体もつよくなっていくようだ。現に最初に戦った時はゴブリンをこんな風に真っ二つには切れなかったというのに今は紙でもきるようにすっぱりといっていた。



「ふぅー、それにしてもシンジのスキルは本当にすごいな……まさか、スキルの入手う方法までわかるとは……」

「まだ簡単なスキルしかわからないけどね……それに、こんなふうにあっさりと覚えることができたのはグロリアが助けてくれたからだよ」

「ふふ、私もいくつかスキルを覚え強くなったからな。お互い様というやつだよ。ここは奥にいるヌシ以外は強敵ではないし、それに私たちは……仲間だからな」



 自分で言っている途中ではずかしくなったのか、少し顔を赤くするグロリアがかわいらしい。

 空を見ると先ほどまでの青空はすっかりと夕焼けへと変化していた。スキルをおぼえるために『朽ちた世界樹の森』でずっと魔物狩りをしていたのだ。

 現在の俺のスキルはこうなっている。


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名前 穂村 信二

称号「異世界の探究者」

レベル2→5

HP 15→25

MP 7→10


攻撃力3→15

守備力2→12

体力 2→15


装備


武器:『魔剣ミストルテイン LV5』 攻撃力+5→20



コモンスキル


短剣術LV1

採取LV1

エルフナンパ術LV1

剣術LV2

毒耐性


NEW


鷹の目LV1 


効果:俯瞰で敵の行動をみることによって命中力があがる。

習得条件:高いところから15回敵に攻撃をあてる。


全力斬


効果:命中率は下がるが、すさまじい破壊力の一撃を放つ。

習得条件:全力で敵に20回切りかかる。

必要ステータス攻撃力10


スライム体液耐性

効果:スライム体液のダメージ、および行動阻害による影響が減る。

習得条件:スライムの体液にトータル1時間浴びる。


とんずら


効果:撤退時に足が速くなる。

習得条件:同じ敵から10分以上逃げ回る。


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 とりあえず今のステータスで使えそうでスキルをかたっぱしから覚えることができたのは彼女の助けがあったからだ。

 たとえば剣術LV2の習得条件である『敵と100回戦う』は、グロリアが足止めをした魔物を一方的に切ったりとけっこうキャリーをしてもらったのである。



「それにしても短い間でいろいろな経験をしたなぁ……もう二度とスライムにはまとわりつかれたくないぞ、帰ったら体を洗わねばな……」



 げんなりしているグロリア。確かにスライムにまみれるのはちょっとしんどかった。

 だけど、スライムにまみれているグロリアはちょっとエッチだったななんて思ったのはここだけの話だ。



「何かいやらしい顔をしていないか?」

「いやいや、別に何も考えていないよ。それよりもそろそろ帰ろうか!!



 じとーっとした目でにらまれて慌てて話題を変えるとグロリアが急にまじめな顔をして俺を見つめる。



「スキルの効果や習得方法までわかるのか……もう一度聞かせてもらうぞ。シンジは本当にチー牛であることを隠して生きるのか? ほかのチー牛でもそんなことはできない。その力を明かせば王都でも重要なポストに就くことができて贅沢三昧だってできると思うぞ。」 

「ありがとう……でも、俺はもうそういうのはいいんだよ」



 重要なポストとやらになれば確かに無茶苦茶美味しいものを食べたりとか贅沢はできるだろう。

 だけど、前世同様に無茶苦茶忙しそうだ。ブラック企業に所属していた俺は自由きままにこの世界を旅したい。それに……



「俺はグロリアと旅がしたいんだ。だめかな」

「シンジはいきなり恥ずかしくなることを言うな……」


 咎めるような口調だがその表情は柔らかい。そして、再び真剣な顔で言った。



「それならばシンジのスキルは徹底的に隠した方がいいな。それだけの力を持っているんだ。よくも悪くも注目されてしまうし、最悪さらわれたりして無理やりスキルを使わせられることもあるだろう」

「さらわれるって……随分物騒な話だね……」

「それだけ、優秀だということだ。ただ強力な攻撃力を持つスキルよりもシンジのように知識を主力としたものは便利だからな。ほしがるやつらはいくらでもいるだろう。善人だけでなく、悪人もな」

「ありがとう。この力は信頼できる人にしか言わないようにする。ありがとう。やっぱりグロリアと一緒と仲間になってよかったよ」



 確かに俺のスキルを使えば兵士たちの能力もあがるし、知識は悪用される可能性もある。

 彼女の言う通りここは平和だった前世の世界ではないのだ。ファンタジー世界は魔物がいたりと楽しいことばかりではない。暴力に訴えてくるやつだっているだろう。そこを改めて実感して感謝の言葉をつたえるとなぜかグロリアは顔をまっかにした。



「だから、真顔でそういう恥ずかしいことを……」

「きゃーーーー!! 誰かぁ、たすけてぇ!!」



 遠くから悲鳴が聞こえてきたので俺は即座に異世界ウィキで地図をみる。少し離れたところに巨大なアイコンと、点滅しているアイコンが目に入ったのですぐに駆け出した。

 この巨大なアイコンはおそらく初めて会う魔物だ。



「グロリア、こっちだ!! ゴブリンやスライム以外の魔物に襲われて行人がいる。」

「ゴブリンやスライム以外だと!! まさか……」



 しばらく、走ると一人の少女が巨大なクモのような魔物に襲われそうになっているのが目に入った。

 周囲には護衛らしき冒険者の死体が転がっているのが目に入る。



「なんでこんな化け物がここにいるのよ……私は赤字を補填するためにエリクシルを採りに来ただけなのに……」



 泣きながらクモの化け物からにげている少女の姿に見え覚えがあった。



「イザベラさん!? なんでこんなところに?」

「知り合いか!? まずいぞ……あの魔物はこの森の主『イビルスパイダー』だ。この森で最も強い魔物でBランクに分類されている」

「Bランク……だったら、グロリアと俺が力をあわせれば……」

「どうだろうな……、魔物のBランクというのは同ランクのパーティー単位で討伐できるということだ」

「それは……」


 あいにく俺一人では大した役にはたたないかもしれない。だけど、このまま見捨てていいものだろうか?

 異世界ウィキで彼女を助ける方法がないか必死に調べて、一つの思いつく。だけど必ず成功するとはかぎらないのにグロリアを巻き込んでいいものだろうか?



「その顔……何か思いついたんだな? 言ってみろ。」

「グロリア、いいのか?」

「ああ、だってここで彼女を見捨てたらシンジはたのしく異世界を旅なんてできないだろう?」

「ああ……俺の作戦は……」



 にやりと笑う彼女に感謝しながら俺たちは格上であるイビルスパイダーを倒すための作戦を説明すると大きく目を見開いてから任せろとうなづいてくれた。



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