第10話 ピヨドリヨン
「うわぁぁぁぁ、すごい。すごいよ!! 風が気持ちいいな」
「はは、こんなに喜んでもらうなんてな。シンジはピヨドリヨンは初めてなのか」
「ああ、俺の世界には乗り物になる動物は馬くらいだったからね」
街を出た俺はピヨドリヨンという動物を操っているグロリアの腰につかまりながら、風を楽しんでいた。
新たな武器や防具を入手した俺たちはさっそく試し斬りをしに、『朽ちた世界樹の森』へと向かっていたのだ。
「ピーピー」
「はは、久しぶりに乗るから気合が入っているな。寂しい思いをさせて悪かったな」
グロリアさんがいとおしそうにピヨドリヨンの頭をなでる。
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ピヨドリヨン
太ったヒヨコが巨大化したような生き物。足が速いうえに少しだが滑空することこともできるので、小人数の旅ならば馬よりも重宝される。
とてもなつきやすいのでペットとしても愛されている。一定以上なつき度があがるとよいことがおきるかも
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要するにこの世界独特の乗り物にもなる生き物である。前世では車やバスくらいしかのっていないので、新鮮でとても楽しい。
それにグロリアは意識してないだろうけど、女の子の……しかも、美少女に抱き着いているという状態はちょっと緊張してしまう、心なしか良い匂いがするし……
絶叫系とかは苦手だが、これくらいの早さなら大丈夫そうだしちょっとした役得かな。
これで空を飛んだりしたら泣いちゃうけど……などと思っていたら天罰がくだったようだ。
「ならばせっかくだ。ピヨドリヨンの真価をあじあわせてやろう、シルフィード!!」
「ピーーー!!」
シルフィードと呼ばれたピヨドリヨンが威勢よく鳴き声をあげると、そのまま傾斜をすさまじい速さで登っていく。
嫌な予感しかしないんだけど……
「え? グロリア……まって」
「ふはははは、今から私たちは風となる!! お前の力をみせてやれ!!」
「ピーーーー!!」
「ひやぁぁぁぁぁーーー!!」
そのまま傾斜と飛び降りるとシルフィードは羽を伸ばしてそのまま滑空していく。さきほどとは違うすさまじい風を切る感覚と落下感に思わず情けない悲鳴を上げると、こちらを振り向いたグロリアが優しく微笑んだ。
「ふふふ、大丈夫だ。風よ!! わが友を守れ」
「ひぁぁぁ? あれ、怖くない……」
不可視の風の結界が俺を守ってくれ落下感が緩和されていく。魔法すごいな!!
「風の加護だ、それよりも正面を見てくれ。きっと気に入るはずだ」
「え? これは……」
恐る恐る正面を見つめるとそこには壮観な景色が広がっていた。空は深い青色で、飛竜か何かが飛んでいるのが遠目に見え、地上には見慣れない不思議な木々によって生み出された美しい森が広がっていた。
まるでゲームのムービーのような景色に俺は思わず感嘆の声を上げる。
「きれいだ……」
「シンジにはお世話になっているからな。この世界を楽しみたいんだろう? お礼に私のお気に入りの景色を見てもらいたいなって思ったんだ」
「ありがとう、グロリア……とっても嬉しいよ」
俺が笑顔でお礼を伝えると彼女も嬉しそうにほほ笑んだ後に、ほほをかいてなぜか顔をまっかにしていった。
「気に入ってもらって何よりだ。それでだな……その……別にいやというわけではないんだが、腰をつかんでいる手の力を緩めてもらえると助かる……異性と触れ合うのは慣れてないんだ」
「え? ああ、ごめん。うわあぁぁ」
グロリアさんの腰を抱きしめるようにしてしがみついていたことにきづき俺は慌てて手を離して……落っこちそうになる。
「おい、シンジ!! 大丈夫か!?」
「ぴぃぃぃー」
騒いでいる俺たちにあきれた声をシルフィードが声をあげたのはきのせいだろうか?
「なんか一日ぶりだっていうのに、懐かしいな」
「ふふ、いろいろあったからな。ここならば強い魔物も出てこない。シンジの訓練にはちょうどいいだろう」
「ピィーー!!」
なんだかんだ無事に『朽ちた世界樹の森』についた俺たちはローナの店で武器と防具を身に着けて歩く。
やはりファンタジー世界とくれば剣と魔法を駆使しての魔物との戦いも醍醐味だろう。
まあ、俺は魔法はつかえないんだけど……。今のステータスはこんな感じだ。
++++
名前 穂村 信二
称号「異世界の探究者」
レベル2
HP 15
MP 7
攻撃力3
守備力2
体力 2
装備
武器:『魔剣ミストルテイン LV2』 攻撃力+5
防具:『鉄の鎧+5』 守備力+12(もっと高価なものを渡すと言われたがさすがに申し訳なさ過ぎたのでこれを買った)
ユニークスキル
『異世界ウィキ』
『フリージア王国』探求度 5%→9%
コモンスキル
NEW
短剣術LV1
採取LV1
エルフナンパ術LV1
称号
スライムに騙されしもの:スライムと戦った時に相手の警戒心が下がる。
エルフと友好をかわしもの:エルフからの偏見が少し薄れる
ドワーフの英雄:ドワーフの好感度が初期からあがる。
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「そういえばさ、俺も魔法スキルとかも覚えられるのかな。コモンスキルってどうやって覚えるの? 」
「うーん、私は生まれた時から魔法を使えたが、人間は書物を読んだり適性が必要だと聞く。コモンスキルは剣系のスキルならば、剣の特訓をしたり、戦ったりと関係あることをすればいいぞ」
「ふーん、結構曖昧なんだね」
「まあな。もしも、スキルを覚える方法は基本的には解明されていない。それが簡単にわかるような人間が現れたら世界中に狙われるかもな」
確かに前世のスポーツとかでもいつの間にかできるようになっていることとかばっかりだしなとおもいながら、剣を握って軽く振り回した時だった。
剣術LV1を習得いたしました。
『フリージア王国』探求度が10%に上がったためスキルウィキが解禁されました。一部の情報の解禁条件が接触から目視にランクアップいたしました。
「は?」
天からの声に俺は間の抜けた声をあげてしまい、さっそくスキルウィキとやらを調べてみる。
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●剣術LV1
効果:剣で攻撃したときの攻撃力が少しあがる。初心者でも覚えられるスキル。
習得条件:剣を握って構えると習得。
●剣術LV2
効果:剣で攻撃したときの攻撃力がかなりあがる。これを覚えれば剣が扱えるといえるだろう。
習得条件:剣をふるった時間が150時間以上もしくは、戦闘回数が100回を超えてる。
必要ステータス:攻撃力15以上
● 毒耐性
効果:毒をくらってもダメージを受けにくくなる。
習得条件:毒に10回以上かかる。
●ETC
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なんか効果だけじゃなくて習得条件もわかるんだけど……
いや、まだ、これが正しいとは限らないよな……俺は近くにあるエリクシルモドキを十枚ほど集めて、グロリアに声をかける。
「俺がどくになったら治療してくれ。これは必要なことなんだ」
「は? いきなり何を……それはエリクシルモドキか? なにを……シンジ!?」
グロリアが止める間もなくエリクシルモドキを口にする。苦味で思わず吐きたくなるが何とか咀嚼すると、一気に体が重くなり、吐き気を催す。
これを友人のためにたえたのか……グロリアは本当にすごいな……
「グロリア……治療を……」
「必要なことなんだな? わかった。精霊よ、わが友を癒したまえ」
「よし、おかわり!!」
「はぁ!?」
そんなこんなで十回繰り返すと脳内で声が響く。
毒耐性を習得いたしました。
……まじか……? まじなのか……?
「シンジよ、さっきのは一体何だったんだ……?」
「グロリア……よく聞いてくれ……俺、スキルの習得方法がわかるかもしれない」
「はぁぁぁぁ!?
グロリアの間の抜けた声がひびくのだった。
ピヨドリヨンはFFのチョコボみたいなのを想像していただければ
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