第9話 鍛冶屋で隠しアイテムをゲット
「しつれいしまーす。うおおおお、すっげー!! 本当に剣とか槍とかが並んでるーー!! ドラ〇エやモ〇ハンみたいだーー」
ちょっと緊張しながら店の扉を開けるとそこには剣や槍、弓、盾などの様々な武器や防具が並べられており、どこからか一定のタイミングでカーンカーンと金属をたたく音が響いている。
ゲームや漫画でしかない光景に思わず俺は思わず目を輝かせる。
「ふふふ、まるで子供みたいにはしゃぐな。そんなに珍しいのか?」
「まあね、こんなふうに武器や防具が並んでいるのを見るのははじめてなんだよ」
「そうか、楽しんでもらって何よりだ。私は奥でアクセサリーを見てくるよ」
クスリと笑うグロリア。別に馬鹿にした様子ではなく、ほほえましいものをみるような視線だけど、ちょっと気恥ずかしくなる。
だが、それも実際に剣を手に取るまでだった。ぷるぷるとしてしまうが、ずっしりした重さと剣を握っているという現実に再びテンションが上がる。
しかもだ……
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鉄のロングソード +5
レアリティD+
初級から中級冒険者が愛用する剣。並みの魔物ならばこれで大丈夫。腕利きの鍛冶屋によってつくられたためか、通常のものよりも質が良い。
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すげえ……ローニさんは本当に手練れなようだ。これは隠しアイテムの質もかなりのものだろう。
それにドワーフってわくわくするよね? やっぱり小柄でずんぐりむっくりな体系のひげずらのおっさんなのだろうか?
「ねえ、お兄さん♡ そんなにほっそいよわよわー♪ な腕でその剣はむりだよぉ♡ お兄さんみたいなザコで貧相な人にはこっちのショートソードの方がいいと思うけどなぁ♡」
「うおおおお!? なんで子供が?」
俺に声をかけてきたのは、こちらの胸元くらいの身長のやたらと胸だけ大きい少女だった。
彼女はこちらを馬鹿にするような目をしながらにやにやと笑っている。
「もう、私を子供とか失礼すぎー♡ 見たところよわよわな初心者さんかなぁ♡ だったらびんぼーさんだからあんまり高いのは買えないね♡ これとかおすすめだよぉー♡ 軽くてじょうぶだからぁ、よわよわおにーさんでも振れるよぉ♡」
謎のメスガキに渡されたショートソードを握ると恐ろしいほどにしっくりとくるのがわかる。
「君は……一体……? ローニさんに用があるんだけど」
「私がローニだよ♡ お兄さんは何にも知らないんだね、よわよわー♡」
「え? まじで? でも、随分と小さいんじゃ……」
ドワーフって小柄で……ずんぐりむっくりなんじゃ……でも、目の前の少女は……小柄だ!! そして、よく見ると巨乳だからずんぐりむっくりにも見えなくは……ないのか?
「うふふ、私はもう成人してるよーー♡ おにーさんは大人なのに、ドワーフも知らないのかな? なさけなーい♡」
言動だけならばどう見てもただのメスガキである。だけど、彼女の武器選びのアドバイスは的確でありその腕前と知識を裏付けている。
そして、メスガキの概念がないこの世界ではこの接客はクソと言われても仕方のないものだ。この人がローナで間違いないのだろう。
さっそく合言葉を言ってみるかな……
「じゃあ……『戦いに行く戦士に問う言葉は?』」
その一言は劇的だった。ローナから人を馬鹿にする表情が消えて真剣な……そして何かを期待するようなものになる。
「まさか……あなたは……いえ、ためさせてもらいます『そんな装備で大丈夫か?』」
「『大丈夫だ、問題ない』」
「神は言っている、ここで死ぬ運命ではないと……『そんな装備で大丈夫か?』」
「『一番いいのを頼む』」
俺がそういうと同時に、ローナの瞳から涙からあふれ出して、そのまま崩れ落ちるようにして地面に倒れこんできた。
え? この人大丈夫? てか、合言葉が昔に話題になったゲームのパクリなんだけどいいんだろうか?
「ああ……本物の英雄様だ……ドワーフの十二の試練を超えるものが私の前に本当に現れるなんて……」
「え……英雄? 試練? いや、その俺はただ合言葉を……」
先ほどのメスガキ口調とこちらを小ばかにした態度からのあまりの変わりように驚いた俺があわてて理由を説明しようとするが、感極まっているローナの言葉はとまらない。
「謙遜しなくてもよいのですよ。先ほどは英雄様に失礼いたしました。この合言葉を知るということは十二鬼神と初代ドワーフ王に認められたということですから……武器を探していらっしゃるのでしょう? 私がこの五十年の鍛冶屋人生のすべてをかけた魂の剣『ミストルテイン』です。ドワーフの契約上お金はいただきますが、お支払いはいつでも構いません」
そういうとローナはお店の奥からやたらと神秘的な輝きを放つ植物と金属が入り混じったような不思議な光沢を放つ剣を俺に押し付けるようにしてわたしてきた。
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魔剣『ミストルテイン』
レアリティSSS
持ち主に応じて成長する魔剣。素材にはエルフの秘宝である『ユグドラシルの枝』と、ドワーフの秘宝『オリハルコン』が使われており、天才鍛冶師ローナが持てる技術のすべてを注ぎ込み人生をかけて作り出した魔剣。
販売価格は500万ゴールドだが、これは『武器を売るときは対価をもらえ』というドワーフの契約があるため適当につけた金額であり、市場に出せば小国ならば買えるくらいの価値はつけられるだろう。
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武器の説明を見た俺はさーっと血の気が引いていくのを感じた。これ俺ごときが買ったらだめなやつじゃん。レアリティSSSとか限界突破してるじゃん。これはゲームの主人公とかがなんか無茶苦茶大事なイベントをいろいろとこなして、ラスボス前に手にする剣だよ。
「ごめん……こんな大切なものはさすがに買えないよ……」
「なるほど……私ごときの剣なんてあなたさまのような英雄には不要ですよね……」
「ちょっとまってぇぇぇぇぇ? なにやってんの? あぶないでしょ!!」
力なく笑うと躊躇なく壁にかけてあったナイフで自分ののどを掻っ切ろうとしたローナを止める。
「私は英雄様の力になるべく剣を打ってきました……ですが、あなたが不要だというのならば、私の人生もこの世界に不要だったということ……」
重い重い重いよーーーー!! なんで躊躇なく死のうとしてんだよ、この人!! いや、人じゃなくてドワーフだけどさ!!
「違うんだ、実は俺は英雄なんかじゃないんだ。たまたま合言葉をしっていただけで……」
「なるほど、そうだったのですね……」
ローナが力をぬいたのに安心して俺は手を放そうとすると……
「まって、なんでまた死のうとするの!?」
再びのどをつこうとするのを必死に止める。
「わかっていますよ。私にきをつかってくださってくれたのですよね? この合言葉はドワーフ王の魂の言葉!! ドワーフはおろか人間が偶然知ることは不可能なんです」
「だー、買う!! 買います!! この剣の値段は500万ゴールドだよね? 買わせてください」
「ああ、ありがとうございます!! 英雄様に使っていただけるなんてしあわせですーーー!!」
感極まったとばかりに抱き着いてくるローナにげんなりとしていると、グロリアが戻ってきた。
「ほう、あの領主にすら傍若無人な態度を崩さないというローナ殿を屈服させるとはシンジはすごいな」
「いや、これにはいろいろと事情があってね……」
感嘆の声を漏らすグロリアに説明がめんどくさくなってげんなりとしている俺を追い打ちをかけるようにステータスが更新される。
称号『ドワーフの英雄』を入手いたしました!!
こうして俺はなぜかメスガキドワーフをわからせて、レアアイテムを手にいれたのだった。
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