第3話 異世界ウィキで街を探索
「やっぱり異世界ウィキはすごいな……」
待ち合わせまで時間があるため、さっそく街を散策していたのだが、『異世界ウィキ』のおかげで初めての異世界の街だというのに快適だった。
街の中なので安全にドロップアイテムを拾い放題だし、お店の場所はもちろんのこと商品の金額まで書いてあるのだ。
ここで拾ったのは以下のアイテムである。
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〇500ゴールド
●精緻なメダル=国のどこかに集めている貴族がいるので渡すとアイテムと交換してもらえるぞ
〇めっちゃとがった石=なげると相手に固定ダメージを与えられるぞ
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まあ、大したものはないけどお金は無茶苦茶助かる。一文無しだったからね……この世界では交番のかわりに騎士たちがいるようだが、拾ったものは基本的に自由にしていいらしい。
「ふーん、だいたいランチが一食500ゴールドくらいで、一泊泊まると2000ゴールドくらいなのか……」
ウィキで相場を確認し、小金をゲットした俺は屋台のならんでいる市場にたどりついた。初めての街だったが異世界のウィキのおかげで迷うことはなくたどり着く。
「すごい……俺は本当に異世界にきたんだな……」
元々俺はファンタジーの世界観が大好きだった。だからだろう目の前の光景がリアルにあることに胸があつくなってくる。
「うちの剣はすごいよーー、お客さん見てみない?」
「うちの肉串は最高だよーー!! 新鮮な魔牛の肉を使ってるんだ」
「薬草はいらんかねー、薬草はいらんかねー」
「どう? ぱふぱふしていかない? あなたなら安くするわよ」
皮鎧をみにつけた冒険者らしき人々や西洋風の服を着た町民たちが行きかい、商人やばいーガールの女性たちの威勢の良い声が聞こえてくる。
ゲームでしか見れなかった光景が目の前に広がっているのだ。これで心がおどらないはずがない。
そして、一歩踏み出すと屋台が連なっているところから美味しそうな香ばしい匂いが漂ってくるのに気づく。
「うおおおお、ファンタジー定番の肉串だぁ」
『新鮮な魔牛串!!』という看板をかかげた、いくつもの屋台には肉串が網で焼かれていおり、人々が麦酒を片手に楽しそうにしゃべっている。
だけど……店がむっちゃあるな……
ウィキをみるかぎり金額はみんな300ゴールド均一だ。所持金と腹の具合的には一本しか食べることができない。
土地勘もないし、運試ししかないなーと普通の人ならば思うだろう。だが俺にはこれがある。
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〇手前の店は肉が硬い。絶対古い肉だろ。
●やっぱり奥の店が一番うまいなー。肉も新鮮だし何よりもタレがうめえ。
〇魔牛ってすごいよな。魔力がこもっているからか普通の牛よりうまいんだぜ。
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コメント欄を参考にお店を選んで声をかける。
「よし、決めた。おじさん一本もらますか?」
「お兄ちゃん見ない顔だけどいい目をしているねぇ。うちは毎朝新鮮な魔牛を仕入れて、先祖代々伝えてきた秘伝のたれを使ってるんだ。ぜったいうまいよ)」
威勢の良いおじいさんが慣れた手つきで魔力を帯びているからかうっすらと光り輝く肉串を焼くと、そのままたれのつまった瓶に突っ込んで渡してくれる。
「うますぎるぅぅぅぅ!! なんだこれ、普通の牛とは全然違う」
さっそく、口に含むと柔らかい肉の食感と共にアツアツの肉汁があふれ出してくる。
そして、甘辛いタレがさらに肉の旨味を引き立てて、香ばしい匂いが鼻を刺激する。そのうえ比喩でなく体内から不思議な力があふれだしてくる。
異世界初の食事だったが悔いはない。
「そりゃあそうだよ。ここの周辺の魔牛は魔力を豊富に含んだ薬草を餌にしているからね。柔らかさと旨味が違うのさ。おまけに一時的にだけど魔力があがるんだぜ」
「ありがとーーー、またくるね」
前の世界でも餌によって味が変わると言われていたがそれと同じなのだろう。異世界の味に感動した俺はおじさんにお礼を言って再び街を歩く。
「所持金は心もとないけど良い買い物だったな……しかも、歩いたり、新しいものに触れるとどんどん探求度が上がっていくみたいだ」
美味しいものにありつけた俺は満足そうにウィキをみると、探求度が5%から8%に上がっていた。
街をいろいろ歩いたり、肉串などに触れたから探求度が上がっているのだろう。楽しんだり美味しいものを食べるだけでどんどん上がっていくとか最高では?
しばらく歩いていると今度は大通りにでた。ここらへんは商会のようだ。歩いている人も市場よりも身なりのしっかりとした人が多い気がする。
「そういや、エリクシルがいくつかあるんだよな……飛び入りでも売れるんだろうか?」
ゲームとかでは主人公が普通に物を売り買いしているがどうなんだろう? エリクシルの買取金額は商会によっては多少違うものの相場の50万ゴールドとそこまでの違いはないようだ。ただし初見の場合はひどいぼったくりもあるらしいので多少は損してもいいからちゃんとした店を選ぶ必要がある。
俺はいくつかのショップをコメント機能を使ってみてみる。
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〇ボッタクリン商会は清く正しい最高の店です。
●ボッタクリン商会は清く正しい最高の店です。
〇ボッタクリン商会は清く正しい最高の店です。
●ボッタクリン商会は清く正しい最高の店です。
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なんかやたらと同じコメントがあるお店が目についた。なぜか金色の扉のちょっと成金っぽいお店である。
「でもまあ……コメントでほめてるんだから信用できるよな。まあ、怪しかったら出ればいいし……」
ちょっと違和感がしつつも俺はお店の扉に手をかけるのだった。この時俺は忘れていたのだ。ウィキは必ずしも正しいものではないと……
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