第18話
ドアを開けてすぐにテーブルが見えたイスが三つ。壁際にはソファ。ストーブの上でやかんから湯気が立っている。戸際には、ポットとカップと茶つばの缶が用意されていた。
「さあおふたりさん座ってください」
手際よくポットにお茶を作ってテーブルに持ってきた。ふたりは礼を言ってカップをもらう。
「大勢でお茶会はいいものですな」
久しぶりの来客に老人は嬉しそうだった。お茶を口にふくんだリアムはこくりと頷く。
「おいしいです。こんなにおいしい茶葉はどこに売っているのですか?」
老人がにこりと笑った。
「そうですかそれはよかった。これは特別なお茶でしてなかなか打ってないのですよ、でもお口に合わなかったらどうしようかと思いまし
たからよかった」
それから他愛もない話をした。セントラルで人気の食べ物の話や何気ない日常のことシンシアはご機嫌に笑いリアムはたじたじに頷くだけで老人は嬉しそうにしていた。
「今日はありがとうございました。またお邪魔してもいいですか?」
「いつでもきてくださいな」
リアムがサイドカーのエンジンをかけるとシンシアは老人に会釈をして側車に乗った来た道を戻る途中リアムがサイドカーを止めた。
「本当にうれしそうですね中佐」
「私はいつだってリアムさんが褒められるとうれしいですよ」
皮肉のつもりで言ったんだけどなとリアムは実直な感想を胃の中に飲み込んでシンシアの顔をまじまじ眺める。軍服なんかより涼やかなワンピースの方が断然似合う可愛らしい少女の顔だ。
「……中佐、先に帰ってもらっていいですか?」
少し声のトーンを下げる。
「わかりました。迎えはアイザックさんにお願いしておきます」
シンシアは驚いた様子だったがすぐに空気を読んでうなづいた。
「よろしくお願いします」
リアムは運転席から降りるとシンシアと交代する。
それから来た道を戻り老人の家を再び訪れた。
「忘れ物ですかな」
外にでていた老人は笑いながら言った。
「あなたはこの国の住民ではありませんね」
リアムとアイザック うさみかずと @okure
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。リアムとアイザックの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます