第17話

 舗装された道をはずれ、誰も知らないような細い道を行く。やがて、赤く塗装された小さな木造の家が見えてきた。小さなエンジンがついた二輪車の横にサイドカーを止めた。


「いやはや、助かりましたとてもていねいな運転。さすがですな」


「えぇそうでしょう。リアムさんは空でも陸でも運転が上手なのですよ」


 なぜかシンシアが嬉しそうにしていたのを見てリアムは首を傾げながらエンジンをふかしている。


 側車から降りた老人は名残惜しそうに、


「お二人さんここまで送ってくれたお礼がしたいのでお茶でもいかがですか?」


「えっ!」


 自分が発した言葉にびくつくほどの大声を出していた。


 冗談じゃないそんな流ちょうなことをしている時間はないのだ。


「まぁステキ是非御呼ばれさせていただきますわ」


「えっっ!」


 予想外のシンシアの言葉に二度驚いた。


「ちょっと勤務中ですよ。中佐」


 これにはさすがのリアムを意見を言わざる得なかった。


「いいじゃないですか。たまには」


 ――いいじゃないですかじゃない! 俺は俺で忙しいんだよ!


 リアムは天使のような微笑みを向ける上官に心の中で悪態をついて微笑み返した。


「ささどうぞ」


「ほらいきましょリアムさん」


 手招きされてシンシアはずかずかと乗り気じゃないリアムの腕を引いて家の中に入っていく。


「中佐」


「なんですか? 中尉」


「いや、もういいです」


 リアムは呆れながらもう諦めて全身の力をぬいた。

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