第12話
「俺が知ったことか……ただ本当に兵器と魔法を掛け合わせたハイブリットなら、世界の均衡が変わるかもしれない」
兵器と魔法は相対するもの、それを掛け合わせることは、西側諸国が掲げる『自由主義』と東側諸国が信仰する『平等主義』の融合であり、この世界に原理原則においてあってはならない事態だ。
彼がなぜ亡命してきたかは今から尋問するとして、もしヴィンズの言うことが本当ならこれが世界大戦の引き金になる可能性はある。
リアムは最悪のケースを考えながら資料に目を通す。
「さっきから何を難しい顔して眺めてんだ?」
「セントラルのデモ抑制応援部隊の編成だよ。中佐から頼まれてるんだがどうも適任がいなくてな」
「ふーん、じゃあお前がいけばいいじゃん」
「バカ言うなよ」
アイザックの笑えない冗談を受け流してリアムは腕を組んで息をつく。なかなか答えが出てこないときは一人になってじっくり考えたかった。
「アイザックお前まじでもう帰れ」
「あぁはいはい分かりました……でも明日もくるんだからね」
わざとらしいウィンクからのぶりっ子ポーズを披露したかつての戦友にリアムはもうため息もつかなかった。ただ嫌な表情をして反応するのもばかばかしいのでアイザックが部屋の外に出るまで終始無表情を決め込む。
「あ、そうだ」
「まだなんかあるのか?」
思い出したように振り返ったアイザックに苛立ち交じりに答える。
「シンシアちゃんがさっきまでいたんだ。お前をさがしていたぞ」
「なにっ中佐が?」
けろっとした顔で重要なことを言ったアイザックに三度の殺意を覚える。軍人として上官の手間をかけさせることはあってはならないことだ。
「図書館で待ってるってよ、はやく言ってやれよ。デートのお誘いかもよぉ」
ニヤニヤしながら部屋を出るアイザック目掛けてペンを投げたが無残にも閉じたドアにぶつかり落ちる。
「まったくどいつもこつも」
リアムは仕事を投げ出して駆け足で図書館に向かうのだった。
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