16 難題
学校でぼーっとしている時、姉ちゃんからラ〇ンが来た。
もうすぐ春川さんの誕生日だから、わざわざ俺に言ってくれたのか。そんなこと俺も知っている。だから、朝からめっちゃ悩んでいた……。それに、姉ちゃんなら春川さんの好きな物くらい教えてよ。
何が好きなのか俺全然分からないから……。
「…………」
そして、姉ちゃんから来た返事「それは自分で考えろ」。
やっぱり、こういうのはクラスの女子に聞くしかないか。自分の服も選べない俺に春川さんの誕生日プレゼントを選ぶのは無理だ。まず、クラスの女子たちがどう考えているのか、それだけを聞いてみよう。
勉強になるかもしれない。
「ふーん。望月くんって意外とロマンチックだね」
「うん……? 俺、何も言ってないけど……?」
「顔だよ、顔」
「顔……?」
「それは気になる人がいる時の顔だ! 私は知っている」
まあ、確かにそうかも……。
「ねえねえ、私もラ〇ンのプロフ見たよ! あの子めっちゃ可愛かったけど……、何年生?」
「えっと、一応……一年生だけど」
「ええ! 可愛い後輩じゃん!」
「大学生」
「…………」
しばらく、二人の間に静寂が流れた。
「それを先に言え……このバカ!」
「ごめん」
「で、どうして私に声をかけたの? 望月くんは普段女子たちに声かけないじゃん。ちょっと気になる。どうして、私なの?」
「雪原がモテる人だったからかな?」
「へえ……。それで、何が知りたい?」
「女子の好きな物っていうか、誕生日プレゼント……買わないといけないから」
「へえ! 彼女にプレゼント! 素敵〜」
「ちょ……! 声!」
雪原のその一言に周りにいる女子たちが集まってくる。
やっぱり、女子たちは恋バナとか好きだよな。俺は……何が好きなのかそれを聞きたかっただけなのに、女子全員春川さんのことを聞いていた。「どこで出会ったの」「付き合ってるの」「誰が告白したの」とか、いろいろ言われたけど、俺はまだ付き合ってるって一言も言ってない。
この人たちは俺たちの関係をなんだと思ってるんだろう。
「望月くん、彼女にあげるプレゼントで悩んでるって」
「へえ…………、彼女にあげるプレゼントね〜」
「プレゼントかぁ……」
「ぬいぐるみとかは?」
「香水はどうかな? 女子大生だし!」
どうかな、ぬいぐるみはよく分からないけど、香水ならたくさん持ってるかも。
いや、その前に春川さん……欲しいものとか全然言わないし。食べ物なら作れるけど、何を買えばいいのかよく分からなかった。そして、普段からバイトをやってるから……、欲しいものができた時はすぐ買ってしまう。
難しいな……。
「ねえ、望月くん」
「うん。どうした? 雪原」
「まだ悩んでるなら食べ物はどう? ケーキとか、いろいろあるじゃん」
「それもいいね。でも、うちにパン作りの道具とか全然ないからさ…………。学校終わったら、買いに行こうか」
「じゃあ、うちに来ない? ケーキとか作れるの?」
「うん。念の為、ケーキの作り方覚えておいたからさ」
「ロマンチックだね〜。じゃあ、誕生日前日にうちでケーキ作らない?」
「いいのか? 雪原の家に行っても……」
「もちろん! 楽しみだね〜!」
ドキッとさせるプレゼントとか、俺には無理だ。
だから、俺にできることをしよう。春川さん、甘いもの好きだから……雪原の家でそれを作ることにした。
食べ物なら絶対失敗しないだろ……。
多分…………。
「なんか、望月くんの彼女が羨ましい!」
「えっ? 俺、まだつき———」
「そうそう、望月くんは人気者だからね〜」
「羨ましい〜」
おい、俺の話も聞いてくれ。
……
「なーぎさくん! お帰り!!!!!」
今日のお帰りはいつもと違って気合い入ってる。
そして、すぐ俺を抱きしめようとする春川さん。
危険だと思って、避けてしまった。
「あ! 避けた! なんで?!」
「なんでじゃないですよ! いくら家だとしても、さりげなくくっつくのは良くないです! 姉ちゃんに怒られますよ? 春川さん」
「凛花はそんなこと気にしないと思うけど……」
そう、姉ちゃんはそんなこと気にしない。
さっきの話は嘘だ。
でも、今春川さんに抱きしめられたらきっとドキッとするはず……。だから、俺たちは適切な距離感を保つ必要がある。気にしたくなかったけど……、姉ちゃんの話がずっと気になってて、居ても立っても居られない俺だった。
それに、もうすぐ春川さんの誕生日だからいろいろ頭の中が複雑になっている。
「…………」
「ねえ! 渚くん」
「はい」
「今週の土曜日! 予定あるの?」
今週の土曜日なら……、雪原の家で一緒にケーキを作る約束をしたけど……。
日曜日が春川さんの誕生日だからな。
これはケーキといろんな甘いものを作るためだから、断るしかない。断りたくないけど、断るしかない……。
「あっ、はい! 土曜日は……そのクラスメイトと……約束が」
「…………」
じっと俺を見つめる春川さん。
つい、目を逸らしてしまった。
「予定……あるんだ」
「はい。でも! 日曜日なら……空いてます!」
「日曜日は私の誕生日だから……丸一日私と一緒にいてくれるよね? 渚くん」
「はい! 約束します!」
「うん! でもね〜」
「はい?」
「土曜日にね……、一緒にショッピングしたかったよぉ〜」
「そ、そうですか? でも、ショッピングならいつでもできますから! また……」
「渚くん、この前に凛花とショッピングしたんでしょ?」
「そうですけど……」
「私も! 渚くんにお金使いたいよ! 一緒に美味しいものを食べたり、カッコいい服を買ってあげたり、いろいろしたいんだよ! 凛花だけデートをするはずるい! 私も渚くんとパルフェとか食べたいんだよ! めっちゃ美味しいデザート屋さん見つけたから」
「…………」
ああ、この前のことだな。
ええ、気にしないと思ってたけど……。めっちゃ気にしてたのか……春川さん。
俺とショッピング……行きたかったんだ。
「むっ!」
お、怒ってる……。
でも、可愛い。
「次は私と一緒ショッピングしよう。拒否権はない」
「はい。行きましょう」
拗ねた顔で頬を膨らませる春川さん。
思わず、指先でつつく俺だった。
「や、やめてよ……! 私、怒ってるんだから! 今!」
「あはは……」
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