ハートはルールじゃ縛れない
『凍結されたから、転生した!』
公式タグ付きの、初投稿。たらこパスタを冷凍庫から取り出し、電子レンジの設定を終える頃には、通知の件数が三桁を超えている。
「皆、夜ふかしだなあ」
あたためボタンを押して、リスナーからの返信に、形だけのハートマークをあげる。
タブを切り替え、画面上部の入力欄へ英数字を打ちこむ。検索結果として提出された、唯一無二のユーザーへ、人差し指を重ねた。
『——さんはあなたをブロックしました』
化粧鏡に、真っ赤な顔が映る。耳まで赤い様子が、子どもっぽくて恥ずかしい。スマホを持つ手が震えて、アイコンとヘッダーだけしか見られない画面に、釘付けになる。
「すぐにブロックするくらい、あたしのこと、忘れられないんだ」
上がった口角で、頬が攣りそうだった。いつでも君は、こちらを気にかけてくれているのだ。
非公開のアカウントから、愛しい君へハートを送る。本当に拒みたいのなら、アカウントに鍵をかけてしまえばいいのに、それをしないのは。
あたしに見つけて欲しいから、でしょ?
「両想いだねっ」
アイコンに唇を寄せたところで、電子レンジに呼びつけられる。熱したパスタの紙容器は、とろけた恋心みたいに柔らかかった。
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