少女漫画みたいな恋
「それなら僕と、少女漫画みたいな恋、しませんか!」
高校では、長い髪をピンクに染めて、化粧を覚えた。カースト上位の女子グループで、彼氏がいないことをからかわれても、「誰と付き合っても同じよ」と強がった。
そうしたら、垂らした覚えのない釣竿に、魚がかかった。放そうとしたのに、周りが盛大に冷やかすせいで、断れなかった。
食パンを咥えて、通学路でぶつかったり。
彼の身長が低いせいで、やや迫力に欠ける「壁ドン」を決行したり。
車のタイヤで巻き上がった水溜りから、彼が私を庇いきれずに、二人でずぶ濡れになったり。
始まりは、シチュエーションといい台詞といい、つくづく0点の告白だった。それでも、理想を再現しようと一生懸命な君が段々と愛おしくなってきて、ほだされてしまった。
「少女漫画って、男子からしか告白しないの?」
「ううん。主人公から言う作品も多いよ」
「そう」
廊下の壁に、彼の背がぶつかる。私の右手は、彼の耳のすぐ横についた。
「こういうのも、悪くないわよね」
首まで真っ赤に染め上げて、混乱しながらこちらを見上げる彼の表情は、少女漫画のヒロインそのもので。リベンジ予定だった「壁ドン」は、今度こそ完遂されたのだった。
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