可愛い友達

「可愛いきみの友達が遊びに来ましたよ、っと」


 椅子に座っている彼女を後ろから抱き込めば、色白な眉間に浅い縦皺ができる。


「毎日毎日……あんた、三組に友達いないの?」

「だってぇ、寂しいんだもん」

「五分休みにまで顔出されちゃ、おちおち昼寝もできないわ」


 構われたら、応じる心づもりはあるんだ——そう指摘したら、きみは、きっと大変に拗ねるだろう。


「ひーどーいー。もっと優しくして!」

「はいはい。じゃ、来年度は同じクラスになれるように、神頼みでもしてなさい」

「それは、やっても無駄かなあ」

「……なによ。そういうの好きでしょ」

「来週ね。わたし、引っ越すんだ」


 ああ、かわいそうに。大親友の瞳孔は開いていて、緩んだ口元が間抜けだ。幼稚園生の頃、二人で遊んだ福笑いは、確か、こんな顔をしていた。


——可愛いなあ、もう!


「うふふ」


 わたしの笑い声を耳にして、彼女は急に勢いを取り戻す。涙目のまま、からかわれたのだと思って一生懸命になじるきみがいじらしい。

 来週の月曜日。きみは、ホームルームでわたしの転校を聞く。泣き濡れて帰宅するであろう幼馴染を、コンセントに差し込んだ小型カメラ越しに覗き見るのが、もっともっと楽しみになった。

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