第3話 子爵家の三男

当主は、執務室にて三男ことカールの事に関してを如何しようか悩んでいた。


「まさか、カールにあれ程の才能が有ったとはな...今は本人の精神状態が悪くあるが、家庭教師の言った通り独自に学ばせた方が良いのかも知れぬな...ああ言うものを天才と言うのか...?いや、天才怪物と言った方が正しいのかも知れんな...」


そんなカール以外に、当然長男も次男も魔術やその他の事を学んでいる訳だが、やはりカールに比べると霞んでしまっていた。だが、その2人に才能が無い訳では無い。

ただただ、カールが異常であっただけである


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家庭教師が帰ってから1週間

魔術をあまり使わなくなり、やりたいと思う事が大部分無くなったカールは、自身の生活を振り返ってみていた


「う〜ん...そういや魔術の事以外ほぼやってなかったな...」


その発言通り魔術以外のほぼ全てを疎かにしていたカール

そう考えたカールは今までの事を一旦考えない様にし、魔術以外の事をしようと考えた。


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「カール様、朝食の準備ができました」


翌日の朝、カールは屋敷の使用人であるメイドに起こされた。

その言葉を聞き、ダイニングルームへ向かった訳であるが、何も感じる事は無かった。カールは 魔術にばかり熱中していたからか? と考えたが、結局答えが出る事は無かった。


その後もカールは、貴族としての勉強を一応受けたり、子爵家周辺の状況を稀に調べていた。興味本位である。


「うわ、何これ...周りに大量に魔物が居る上に強そうなのが3体...ここに来ないのはそこが住む所になってるからかなぁ...?」


カールの言った通り子爵家領周辺は森や、比較的多くの魔物に囲まれている。他の辺境にある貴族の家であってもそこまで多くはない。何故そうなっているかというと、主に“見つからない”だったり魔物が“強過ぎたり”する事がある。魔物は放り過ぎていたら、人間等を襲う事もある

そうならない為に“冒険者”というもの達が依頼を受け討伐している。因みにだが、冒険者というのは何でも屋に近いものである。金に困っていたり、外道な者であれば、汚い仕事に手を出したりする。

だが、カールの住んでいる子爵家は周りが森である上に魔物が多い為、余り人が来ず、少々危険な土地となって来ている。


その為、何かの拍子に魔物達が動きでもしたら危険であるが、そんな事が起こる事は恐らく無いだろう——



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7年が経った夏、カールの身長は12歳にしては高く158cm程となっていた。

長男は17歳であり12歳から3年間通う学園を卒業、次男は15歳であり今現在学園の長期休暇期間、妹である長女は9歳となり、とても可愛らしい少女となっていた。

そんな彼であるが、7年前の傷は癒えていなかった。その事もあり、自室にて自身の思いを呟いていた。


「俺は三男だから独立か...なら自分の身ぐらいは守れる様になっとかないとか...ただそれに対して実戦経験が一つもないんだよなー。兄様達の訓練に参加した方が良いんだろうが、何より俺自身まだ魔術を見せるのが怖い...7年前の事をまだ克服できない俺は、——————————」


7年という期間は長く、口調も変化していた。

自身の今後に頭を悩ませていたカールであったが

身内にならまだ軽くなら魔術を見せても良いか...と思った為、長男と次男が領を守る為の訓練の実戦として、魔物を狩るという事に対して、訓練の予定が決められている最中に


「兄様、俺も実戦に入れてくれないでしょうか?訓練もせず、魔術もあまりやって来ませんでしたが、自身が生きる為に何かに魔術を使う感覚を知っておきたいのです」


長男も次男も弟が魔術を使わなくなった原因を聞いた為驚いていたが、長男が


「...実戦経験がなくとも、カール。お前のの腕は天才怪物だと父様から聞いている。今回はその事を鑑みて付いてくることを許そう。だが、我々であってもあまりに魔術を使うのを躊躇う様なのであれば、来るのは辞めた方が良いと言っておく」


「ッ!」


内心を見透かされていた。カール自身が1番気にしている事であった。


(あんま感情は表に出さない方が良さそうだな)

そう思ってしまった。


先程の会話の翌日に実戦訓練は行われた。


カールは魔物への攻撃を氷柱アイスピラーのみを使っていたが、火力、制御共に鈍っていない事は確認できた。だが、発動に躊躇いがあり、それは確かな事だった。

長男や次男の様子も見ていたが、訓練の成果もあってか基礎魔術の腕は大したものであったと感じた。


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冬になり、寒さが激しく雪が降っている時期


父と長男は社交会へ行っていた。

社交会では16歳になる“ハドゥマー・フォン・イグニェス”王太子殿下のお披露目が行われていた。


父であるゼブも長男であるベバリーも、お披露目が終わった為、後は帰るかと思っていたのだが、ゼブ達に近づいて来た男が居た。



「ゼブ・フォン・グラース子爵殿、お久しぶりですな。御子息はお元気ですか?」



少々薄汚い笑みを浮かべている男だった







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ゆっくり進めるという言葉はどこへ行ったのでしょう

























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