第3話 怪物
「すまん将星!とりあえず走って逃げよう!」
ビュオッッッ
すぐ隣で鞭が空を裂くような音が聞こえる、
何の音かはすぐに理解できた。
ドォゴオオオオオオン!!
ゴブリン達の間を縫って一直線に飛んで行った石は
石どうしがぶつかる轟音とともに男性兵士の顔のすぐ横で岩の壁にめり込み瓦解し、石がめり込んだ部分を中心に20メートルほどにわたり円形状の亀裂が入る
そのあたりに転がっていた手頃な石を将星が投げつけたのだ。
野球の試合の際、バッターボックスやルールがあるとはいえこの男の投球をその身に体感する選手達は口々に
「死が飛んでくる」
「あそこ(バッターボックス)に入るくらいならベンチから動かずアウトを取られる方がいい」
などと慶表する。
この男の投石に無防備なままのその身が晒されるなど考えただけで恐ろしい
足元にはまだ数個石を残している、次の投石の準備だろうか右手に石を持ち手首のスナップを使って宙にポーン、ポーンと一定リズムで放っている
ゴブリンたちは明らかに警戒・動揺している。
一方、おそわれた男性兵士は自分の耳元で理解不能の爆発が起きて魂が抜けている。
ゴブリンの中で一番体の大きい棍棒を持った個体が意を決し、叫びながらこちらに向かって走ってくる
が、
ビュオッッッ
ドォゴオオオオオオン!!!
将星がもう一度手にしていた石を投げつけた。
石の速度が速すぎてしっかりと注視していなければ何が起きたかわからないだろう。将星の投げた石はこちらに向かってきたゴブリンの耳元を通って男性兵士の後ろの壁が破裂し二つ目の円形状亀裂が刻まれた。
ゴブリン達はこの男が得体の知れない怪物だと悟り、自分たちとの力の差を感じとったようだ。1匹、また1匹と後ずさりを始める、
キラー右腕が次の投石をするために両手を振りかぶると全てのゴブリン達が一斉にその場から逃げ出した。
「大丈夫ですか!??」
俺はすぐに男性兵士が心配で駆け寄った。
外傷は無く、ただ気絶しているようだ。
この世界のこと、近くに街はあるのか、聞きたいことはたくさんある
「しっかりしてください!」
男性兵士を揺さぶり続けるとうめき声をあげながら意識を取り戻した。
「良かった!気がついた!」
しかし、
男性兵士が意識を取り戻したことに安心したが後ろから将星が歩いて近づいてきた。
「ヒエェ、化け物ッ!!」
男性兵士は気絶する直前の記憶を思い出したのか将星を見るや否や俺の手を振り解いて逃げ出してしまった。
「ちょっと待ってくれ!」
俺は男性兵士を追いかけようとした。
「平次さん!待ってください!」
将星が俺を呼び止めた。
「あれ…たぶんさっきの緑のやつらが置いていったんじゃないっすか…?」
「あれ…ってなんだよ……?!」
将星の目線の方向に視線を向けると体の特徴と服装からして若い女性と思われる人間が後ろ手にされ縄で縛られている。
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