〇〇ちんめんたいこばらカレーぐそ

東雲三日月

第1話

「〇〇ちんめんたいこばらカレーぐそ」


 これは私が中学の時に女子から呼ばれていたあだ名で、※〇〇のところには苗字が入ります。


「〇〇ちんめんたいこばらカレーぐそ、のり貸してくれる?」


「ごめん、持ってない」


「何だよつかえねーな!」


 こんなやり取りを良く特定の女子としていたと思います。


 この呼び方ですら嫌なのに、更には相手の希望通りのことが出来ないと「つかえねーな!」と言われてしまう⋯⋯とても苦痛でした。


 先生や親に話せば良かったかもしれませんが、話さなかったのは、先生に話せばチクったと言われ酷くなることを恐れたのと、親に話しても共感も無ければ、間違ってると指摘されるか怒られるかのどちらかだからです。


 こんな私は、小学生の頃から人との距離感が掴めないせいで、コミュニケーションの取り方が下手すぎてクラスメイトとは親密な関係になれず、小学生の頃は〇〇さんとさん呼ばわりされていました。


 なので、コミュニケーションが上手くなりたくて、図書館でコミュニケーションの本を借りては読んでましたが、全く役に立たなかったのを記憶しています。


 それもそのはず、親子の会話も無く、テレビを見せてもらわず、父は酒飲み、些細なことでも怒声や罵声を発するので、いつも緊張感に包まれながらの生活環境、母は毎日私に父の悪口を聞かせ、両親は毎晩夫婦喧嘩していたのですから、家庭から教わる基本のコミュニケーション力すら教わることが無かったのです。


 中学生になっても誰一人として親密になることは無かった私は、結局、周りからは〇〇さんとさん呼ばわりされていたので、皆とは距離があるなと感じていました。


 他にも、毎回□□ちゃんと、(※□には下の名前が全部では無く最初の二文字だけ入ります)呼ばれている男子がいたのですが、(□□の箇所が私と同じ名前だったので、違うと分かっている筈なのに)毎回私のことかと反応して振り向いてしまい、その度にスゴく嫌な気持ちさせられていた記憶があります。


 そして、気付けば特定の人からは「〇〇ちんめんたいこばらカレーぐそ」と呼ばれるようになり、他にも「〇〇っぺ」「〇〇ちん」と呼ばれるようになっていました。


 私が「その呼び方嫌だ」と言ったら呼び方が変わったのかどうか分かりませんが、その時の自分には自信も勇気も無くて言えなかったのです。


 ある日、〇〇ちんめんたいこばらカレーぐそと呼んでくる人達がわざわざ私の座る席までやってきて、突然「何で学校に来てるの?」と問いかけてきました。


 そう聞かれた直後、私は頭ん中が真っ白になり、何も答えらず時間だけが過ぎたのを覚えています。


 暫くすると、今度は「生きてて何が楽しいの?」 と問いかけてきました。


 我に返り、何て答えようかと思ったのですが、一度ですら学校も家も楽しいと思ったことが無かった私にとって、この問いかけは難題すぎたのでしょう、結局あの時何も答えられ無かったのです。


 「死ねばいいのに」


 次にそう言われたと思います。


 確かにそうだなって思いました。


 そして、何故か納得したんですよね。


 でも、死ねなかったんです。


 死のうと思うのに、どうしても死ねない。


 私が死んで悲しむ人は誰もいないはずなのに、覚悟と勇気が足りなかったのでしょう。


 ところが、何処にも居場所が無い私でしたが、そんな私を受け入れてくれるとても悪い大人がいたのです。


 受け入れられて何だかその環境が心地良かったのでしょう、受け入れてくれる環境で暮らすようになってしまいました。


 そのお陰で、高校も行きましたが、その生活は続いて、教養があるにも関わらず、何故か世間知らずな私は借金を重ね、気付いた時には闇金からも借金してボロボロになっていたのです。


 普通の人は、高校も行っていれば教養があるのですから世間知らずな子に何かなりませんよね。  


 でも、私は違ったんです。


 そんな私でしたが、ある日運命の出会いがありました。


 それが今の旦那です。


 こんな私を受け入れてくれました。


 真の愛情を貰ったのも旦那が初めてです。


 まだまだ出来損ないで、嫉妬することがあったり、我儘だったり、駄目なところが多すぎるのですが、日々反省を繰り返しなから自分を成長していけるようにしていきたい。


 そして、こんな私と離婚せずにいてくれる旦那に感謝しながらこれからも生きていこうと思います。




 




 


 


 


 









 

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