第81話

 1回戦目が終わり、次の俺たちの番が来るまでは爆買いした屋台の食べ物を消費しながら観戦の時間だ。


「凄いな」

「ちょっと厳しいかもね」

「安定感が違いすぎるな」

「あら、あのおじいさん凄いわね」


 俺たちが今見ていたのはノイマンさん達の戦いだ。

 安定感のある戦い方でノイマンさんがその中心で完璧なタンクをこなしている。

 1番真っ先に落としたいタンクがああも固いと戦っている敵はプレッシャーが凄いだろう。


「いやぁ凄い人が多いね」

「負けてられないな」

「そろそろ次の試合が始まるわよ〜」

「準備万端ですっ!」




 ◇マリー様万歳!VSアヤしか勝たん


「さぁ! 次の試合は〜、アヤしか勝たん!」

「対するはマリー様万歳!」


「おい、まともな名前の奴と当たらねぇじゃねぇか!」


 先程からふざけているのかまともなチーム名が一切出てこない。

 もちろん観戦している間に色んなチームの名前を見たが癖のある名前のチームはあと2チーム程しかなかったはずだ。


「おーほっほっほ! 出ましたわね! ふざけた名前の召喚士が居るチーム!」

「ブーメランでは?」

「ブーメランでしょ」

「ブーメランね」

「ぶ、ブーメラン?」

「う、うるさいわ! ですわ! 早く始めますわよ!」


 なかなか癖の強い人が出てきたと思うと直ぐにロールプレイが剥がれた。

 敵の構成は騎士のような鎧を着たプレイヤーが5人とお嬢様(笑)が1人だ。


「それでは! 3 ・ 2・ 1!」

「始めっ!」


 ここまで前衛が固いと俺も迂闊に展開出来ないので今回はシュウヤさんの後ろで待機だ。


「燃えなさい! ファイアウェーブ!」

「アクアベール!」


 お嬢様(笑)によって出された炎の波はマイさんに止められ、また睨み合いが始まる。


「やりますわね! なら立ち上がれ騎士達よ! 我が名に誓って勝利を掲げん! 『勝利を我らに』」

「「「「「おぉぉぉ!!」」」」」


 詠唱が終わると騎士達に光が降り注ぎ、全身鎧からは考えられないような軽々とした動きで俺たちの方へと詰めてくる。


「15秒! 私にちょうだい!」

「「「「了解」」」」


 セナに何か策があるらしく、言われた通り時間を稼ぐため前に出る。

 シュウヤさんとマイさんが3人を抑えてくれているので俺とアヤが1人ずつ抑えればいい。


「マリー様のために!」

「はっ!」


 振り下ろされた長剣を避け、蹴りを入れる。

 時間を稼ぐだけならエアロステップとエアロブレイクを組み合わせて殴り続けるだけでいいのだ。


「あがっ、体がっ!」

「ラッキー!」


 怯みが入ったのを見て刀を抜き、鎧の隙間から首に差し込む。

 切れるほどの隙間がないので断頭は使えなかったがかなりのダメージを与えることが出来た。


「きゃっ!」

「イオリくん! チェンジ!」


 セナが空に矢を放ち、矢筒からもう一本光り輝く矢を取り出す。

 見た事のない光を放つ矢がお嬢様(笑)を貫く。

 そして、先に曲射で放たれていた矢に付いていたひよこに俺は飛ばされた。


「うぉぉぉぉ!」


 突然の上空転移に驚いたが何とかお嬢様(笑)に向けて刀を振り下ろす。

 かなり削れていたお嬢様(笑)のHPは一撃で消し飛び、騎士達は動きを止めて唖然とする。


「降参する」

「え?」


 騎士の1人からあがったその言葉に少し拍子抜けしたが騎士のひとりがこちらに近づいてきた。


「すまない、今回、私たちはマリー様が負けたら降参するという縛りの元戦っているんだ、見事な連携だった、戦えてよかったよ、またどこかで」

「え、あ、ありがとうございました?」

「それじゃ、マリー様を迎えに行かなくてはならないのでな」


 驚いた。

 降参した事ではなく、あの騎士、間違いない


 女性だ!


 低めに声を作っていたが多分間違いない。

 もしかしてあの集団、女性しか居ないのでは?

 姫プ集団かと思いきやまさかの全員女の子説が浮上するなんて、いつか真実を確かめたいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る