第80話

「さぁ! 次の試合は〜、ノルド率いるミーシャたんを見守る会!」

「対するは、イオリ率いるアヤしか勝たん!」


 言い訳をするなら俺には決定権がなかった。

 あとはいい名前が思いつかなかったというのも理由の一つだ。

 そんなこんなでモタモタしているうちに気づけばこの名前でエントリーが完了していた。

 それにしても相手の名前に入ってるミーシャってもしかしてミーシャさんの事か?


「なんか私の名前が読み上げられるのはむず痒いです」

「アヤちゃんしか勝たん!」

「こっちの名前もふざけてるけど、相手は相手で大丈夫なのか?」


「さぁ、両チーム舞台へ上がりました! それでは第3回戦! スタートッ!!」


 始まりの合図と共に俺は敵チームの側面に大きく回り込むように進んでいく。

 俺の役割は相手の注意を引く事で、注意する場所を増やし相手の隙を作り出すことだ。


「なかなか動きがないな……」


 1人で動いているので積極的に攻撃を仕掛けるのは避けたいがこのままでは何も変わらないので魔力弾を打って牽制する。


「今だっ!」


 先程まで動きがなかった敵チームが急に動き始めた。

 地面に煙幕が炊かれ、俺は味方のカバーが貰えない位置に誘導されていたようだ。


 煙幕は直ぐに風魔法で吹き飛ばせるが、相手の予想以上に早く囲まれてしまった。


「……」

「行くぞっ!」


 味方のカバーが来るまでもう少し、ここで俺が死んでしまえば人数差が出来てしまう。

 突っ込んできた大柄の剣士の大剣を受け流しエアロステップを使って一気に相手の包囲網を抜けようとする。


「逃がさないぜ!」

「っ!」


 俺の行く手に魔法が降り注ぎ足を止めた俺には剣士の大剣が迫っていた。


「パパは殺させないっ!」

「ナイスカバーだ、アヤ!」


 ギリギリ味方が間に合ったようでシュウヤさんが俺と他の敵との間に入ってくれた。

 体勢は立て直すことができたしここからが本番だ。


「行きますっ!」


 アヤに合わせるように一緒に前へと出る。

 無理に包囲したせいで敵はまだ固まれていない、1人で孤立している盾役を屠るために2人で逃げ道を塞ぎ斬りつける。


「うぐっ」

「これで決めますっ」


 俺とアヤの刀が盾役を切り裂く。

 しかし、流石タンク、即死はせずにまだHPが残っている。


「『カウンター』」

「チェンジ」

「ぐギャ」

「は?」


 敵タンクの放ったカウンターはセナによるチェンジで召喚されたゴブリンに命中した。

 渾身のカウンターを伏せがれ、あっけに取られているところを俺とアヤが縮地で詰めてぶった斬る。


「そろそろMP持たないわ〜」

「カバー行きます」


 タンクを失い起点を作れなかった敵チームはそのまま俺たちに押し込まれて敗北。


 今回は完璧にシュウヤさんキャリーだ。

 俺たちがタンクを倒すまで持ちこたえたその腕前はノイマンさんにも劣らないだろう。


「「「「「お疲れ様!」」」」」


 まずは1戦

 勝利に喜び次の試合に備える。



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