第75話 VSシュウヤ
「そろそろ個人戦の対策を始めてもいい頃合いだよな......」
この世界に来てから特に対人戦をする機会に恵まれていなかったせいか本気で戦ったのはセナとの一騎打ちくらいだ。
そして、個人戦をするにあったって絶対に超えないといけない壁がある。
ノイマンさん、セトラでトップレベルの大盾使いで其の視野の広さと落ち着きは絶対に対面をしたくないと思わせる厄介さがあった。
「ということでシュウヤさん、お願いします」
「本気でやって良いのかい?」
「もちろん」
「対人戦は久しぶりなんだ、優しくしてくれると嬉しいよ」
そんな事を言いながらもシュウヤさんはかなり乗り気だ。
いつの間にか、かなり厳つい装備を携えて、レベルも俺に迫る勢いで上がってきている。
お互いの準備が完了し、お互いが武器を構えるとPvPのカウントダウンが始まる。
3
2
1
ずっしりと構えた大盾を崩すには後ろや側面から撹乱するように攻撃し続けるのがセオリーだ。
「甘いよ......!」
「うっ!」
側面からの俺の一撃は読まれていたのか片手に携えられた短剣に弾かれ、体を捻った勢いで振られた大盾が俺の横腹を捉える。
HPバーが一気に吹き飛び残り5割
回避特化なだけあって今の俺は死ぬほど紙装甲なのだ。
まともなアタッカーのアーツが直撃すれば良くて瀕死、運が悪ければ即死する。
「ふふっ、楽しいっ!」
「相変わらずピンチになればなるほど君は速くなるね!」
風魔法を使った撹乱と上がったスピードを使っての連続攻撃。
上手く受け流されているがそれでいい。
連撃を捌くのには集中が必要、だから必ずスキが生まれる。
「『縮地』」
「なっ!」
大盾とシュウヤさんの体の間に生まれた僅かな隙間に飛び込むような大胆な縮地。
それは上手くシュウヤさんの意表を突くことに成功し、俺がこっそり熟練度を上げ続けた古賀流のもう1つの技を決めるためには十分な隙だった。
「『断頭』」
兜と鎧の間を縫うように刀は首を切り落とした。
You Win
「ははっ、相変わらず速すぎるよ君は」
「俺の取り柄なので、譲れないですよ」
「いやぁ、これは僕ももう少し対策が必要かな?」
「やめてくださいよ、俺が勝てなくなっちゃうじゃないですか」
「もちろん、本戦でぶつかるなら容赦なく叩き潰して優勝を貰おうじゃないか、大人の強さを見せつけてあげよう」
「怖いですねぇ、まあ、また首を切ってあげますよ」
シュウヤさんはかなり熟練の大盾使いだからこそ対応してきたが、普通はHPで受けつつカウンターを狙って一撃で殺しきるのが大盾使いがとる回避特化の倒し方のはずだ。
まさか初手から対応されて大盾ぶん殴られると思っていなかったし、それに反応出来なかった自分の衰えを感じる。
「もう1戦しましょう」
「いいねぇ、その断頭だっけ?首が見えてないとダメなんだよね?」
「そうですね、装甲部分が多すぎて本当に決めずらいんですから」
「次はもう当たらないよ」
「試してみましょうよ」
そこから何戦か戦っているうちに大盾の崩し方を思い出してきた気がする。
セオリーなんていう堅苦しいものじゃなく、もっと感覚的なもので、いつどこに攻撃を受けたくないのかという勘のようなものが磨かれてきたのだ。
「ふぅ、降参だね」
「いいんですか? 俺も攻撃がなかなか通ってなかったのに」
「即死狙いの回避特化の相手なんて長時間やってると死ぬほど緊張するんだよ、疲れたね......」
「バレてましたか......」
あまりにも堅いのがうざく、ひたすら断頭狙いの撹乱と体勢を崩すための足払いばかりをしていたからか降参されてしまった。
「あら、イオリちゃんとあなたじゃない、模擬戦かしら?」
「そうですね」
「あぁ、マイ、あとは君に任せるよ交代だ」
「え、かなりの時間やってたっぽいしイオリちゃんも疲れてるんじゃ」
「お願いしますっ!」
「あ、あらぁ、火がついちゃってるわ......あなた後で覚えてなさいこの恨みは大きいわよ」
「はっはっ、若い子の相手をして上げるのは大人の役目だよ、あとは頑張ってくれ」
マイさんほど、せこい魔法使いは中々いないと確信を持って言える。
この人の使う技はとにかく多彩で、多くの魔法を感覚で操りながら相手の嫌がることを的確にこなして来る敵に回すといちばん厄介なタイプなのだ。
「はぁ、仕方ないわね、イオリちゃん手加減してくれるわよね♡」
「もちろん全力で行きます!」
「あらあら、あの人もこれくらいガツガツしてると
ときめくかもしれないのに」
「悪かったね、草食系で」
「あら、いたのね」
マイさんが杖を構える。
3
2
1
パンッ
「うおっ、ちょっ」
カウントダウンが終わるとほぼ同時に俺の目の前に現れた水球が弾けた。
気を取られて後ろに後ずさると先程まではなかったはずの段差が俺の足を取り、転けてしまう。
「イオリちゃん、これで終わりよ」
「ははっ、マジか......」
目の前に現れた何種類もの属性魔法の球が俺を襲う。
紙装甲の俺が耐えれるはずもなく呆気なく負けてしまう。
「相変わらず汚い戦い方だね」
「それが愛する妻に対する評価かしら?」
「事実だよ」
「随分な言いようね......さっきの恨みも重ねて返してあげるわ、覚悟なさい」
「負けた......」
「ふふっ、イオリちゃん、レティアの頃散々私に驚かされてたのをもう忘れたのかしら?」
「イタズラ好きだなくらいにしか思ってなかったですね......」
「ふふっ、もう少しせこい手を覚えても良いかもしれないわね、素直過ぎるのは美徳とは言えないわ」
俺は昔から戦闘に小細工を混ぜるのが苦手で、敵をあっと言わせるような細工は全てセナやマイさんがしてくれていたので、ただ真っ直ぐ目の前の敵を殺して入れば良かった。
そろそろ俺も1人である程度できるようになった方が良いのかもしれない。
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久しぶりの戦闘描写!!
楽しい!!
あ、下手になってたらごめんなさい♪
皆さんの応援のおかげで毎日元気貰ってます!
これからも投稿頑張りますので応援よろしく〜!
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