第74話 王都研究所

「それにしても王都の研究所が私たちに用だなんて、有名人になった気分ね」

「確かにですね〜」

「現地人達は邪神戦争の影響で色が抜けた場所を不浄の地って呼んでるらしい、今回はそれについて相談があるんだってさ」

「不浄ってホントに一切の浄化手段がないのね」

「現状だとそうみたいだな」


 一般人に少し聞き込みをしても不浄の地は消せないから不浄の地と呼ばれているということくらいしか教えてくれなかった。

 今回のこのクエストで少しでも糸口が見つかるといいんだけどそう簡単に終わらさせてくれるとは思えないな。


「止まれ、ここからは正式な職員もしくは招待がないと入れない」

「冒険者ギルドから派遣されました冒険者です、これが招待状です」

「......確認しました、それではどうぞ」


 そういうと入口にたっていた兵士の1人が俺たちを中へと案内してくれる。

 初めてだからか兵士が研究所のお偉いさんのところまで案内してくれるようで広い施設内を彷徨うことは無かった。


「来てくれたようだね......」

「えっと、初めまして開拓者のイオリです」

「セナです」「シュウヤです」「マイでーす」

「頼もしそうな人達だ、ギルドの評価は間違っていないらしい、まあ座ってくれたまえ」

「失礼します」


 目の前にいるNPC、いや現地人は明らかに他と違う雰囲気を纏っている。

 偉い人なのは覚悟していたがそれにしても周りの警護がガチガチだ。


「ふむ、入りたまえ」

「し、失礼します!」

「驚かせてすまない、私も忙しい身でなできるだけ手早く事を済ませなければならないんだ」

「わ、私はカルハと言います、王都で研究員をさせてもらっています」

「彼はとても優秀でね、この歳でこの地位まで上り詰めたんだ、今回は君たちと彼で協力して不浄の地について研究してもらいたい」


 カルハと名乗った男性はかなり若く、緊張しているのか笑顔が引きつっている。

 そして俺たちの目の前にパネルが現れる。


 ワールドクエスト

《不浄の地を浄化せよ》を開始しますか?


 特別なクエストではなくプレイヤー全体で進めることになるようだ。


「現状、不浄の地について知っている冒険者には既に複数招待状を送ったり話を持ちかけておる、いずれ公開することになるものじゃが、有力になりそうな者たちには少し特別扱いがあっても良いじゃろう?」


 つまり、まだ公開されていないワールドクエストを俺たちは先んじて挑戦できるという訳だ。

 そして段々とこのおじさんについてもある程度推測が立ってきた。


 この国、王都の国王、もしくはそれに近しい身分の高い人だ。

 カルハさんが先程からガチガチに緊張しているのは、場の空気ではなく、この人を怒らせないように必死に気を使った結果、あそこまで緊張しているのだろう。


「さて、あとは専門家に任せるとしよう、どうかこの国を、世界を救う方法を見つけてくれ、後は任せるよ、カルハくん」

「は、はい!」

「それじゃ、またいつか会える機会があったならもう少しゆっくり話せることを願っているよ」


 そういいながら兵士たちを連れて部屋を出ていく国王らしき人物。

 部屋の中に満ちていた物々しい雰囲気は消え去り、カルハさんのため息だけが静まり返った部屋にこぼれる。


「私も説明を色々とすると言いたいところなのですが、現状何も分かっていないんですよ」

「何も?」

「はい、お恥ずかしながら何もです」

「何か手がかりになりそうな物もないと」

「現状できること、強いて言うなれば英雄の遺跡にいる英雄たち......もしくは現地での調査」

「八方塞がりじゃない、進む方向すら分かってないなんて......」


 カルハさんは黙ってしまった。

 どうやら心の底からこの国のことを思っているのか、はたまた自分の研究員としてのプライドのせいなのか。


「不浄の地の仕組みは色濃く残った邪神の魔力と思われるものが原因だと考えています、あくまで仮説ですがね、それを皆さんには調査して貰いたい、開拓者のあなた達なら私たちにできないことができる」

「分かりました、お互い頑張りましょう」

「ありがとうございます......」


 そう言って深深と頭を下げるカルハさん。

 彼の目は真剣で本当にこのことをどうにかしたいのだと伝わってくる。

 時間はかかるがきっとこの謎を解き明かそうと心に誓った。



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 いつも読んでくださってありがとうございます♪

 最近はなかなか戦闘がないですがそろそろ戦いに戻れるかな?

 それではまた明日

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