第52話 告白

あれから何時間かがたった。

一緒にアトラクションに乗ったり、お昼ご飯を食べたり、休憩したり。

そんな最高に楽しい時間も終わりが近ずいてくる。


日は沈み始め、あたりはうっすらと暗くなり始めた。

隣に居る瀬奈からは緊張しているのが伝わってくる、俺も緊張のせいか先程から口数が減っている。


「瀬奈、最後にあれに乗ろう」

「う、うん」


ゆっくりと観覧車の方へ2人で歩いている時、瀬奈は緊張がピークに達したのか少し震えているような気がする。


「ひゃっい!?」

「ふはっw」

「も、もう!こっちは緊張してるの!」

「どうして?」

「むぅぅぅぅぅ! 覚えてろ……」


少しは緊張が取れただろうか?

瀬奈は緊張している時、どこか思い詰めたような表情をすることがある。

それがどうも、気になってしまうのだ。

俺の理想の押しつけになるのかもしれないけど、瀬奈は笑っている時が1番可愛い、だからこうして笑ってくれていると俺まで楽しくなってしまうのだ。


「こちらのアトラクションは20分かけてゆーっくりと1週します、途中でおトイレなんかには行けませんのでご注意くださーい」


「いよいよだね」

「そうだな……」


案内されたゴンドラに2人で乗り込む。

今日、この一日でだいぶん仲良くなれたと思う、もちろんゲームでの下地があったおかげだ。

ずっと諦めきれずにいた初恋がこんな形でチャンスをくれるなんて思ってもいなかった。

だからこそ、今日、この観覧車で勇気を出すことにしたのだ。


「瀬奈、改めて今日は来てくれてありがとう」

「うん、こちらこそ」

「楽しんでもらえたかな?」

「すっごくっ!」

「良かった、少しだけ話してもいいかな?」

「うん」


「俺の初恋はゲームの中のセナだったんだ」

「っ!?」

「明るくて元気で一緒にいると楽しくて、喧嘩も言い合いもするけどそれも含めて全部楽しい思い出だったと思ってる」

「だけど、気持ちを伝えるのが怖くて、関係が変わってしまうんじゃないかってそう考えると『好き』っていう言葉が出なかったんだ」

「そして、4年前の俺の初恋はサービス終了と共に途絶えたと思ってた」


あの時はまた会おうなんて約束をしたけど、特に何かを決めていたわけでも、連絡先を交換したわけでもなかった俺たちがまた会える確率なんてあるわけないと思っていた。


「でも、セトラでセナを見つけて話していくうちにお淑やかで大人になったセナの中に居た、昔の明るくて元気なセナを見つけたんだ」

「話していくうちにどんどん惹き込まれて、気づけば俺はもう一度セナが好きになってた」

「現実ではまだ少ししか話していないけれど、楽しくってそれでいて心が安らぐ、ゲームの中のセナと変わらない気持ちをくれた瀬奈を好きになったんだ」


瀬奈セナが好きだ! 付き合ってください」


俺たちが乗ったゴンドラはちょうどてっぺんに到達し、真っ暗な空と光に溢れているテーマパークの境目にくる。

下の喧騒から離れ、2人だけの空間、感じれる人は目の前に居るたった一人の人間だけ。


俺の瞳に映る瀬奈は大粒の涙を目に浮かべ、ゆっくりと腰をあげると俺の方へ飛び込んできた。


少し揺れるゴンドラ、ふんわりと包み込んでくる甘い匂いと柔らかい感触。

締めつければ折れてしまいそうな華奢な体を抱き返すように抱きしめる。


「よろしくお願いします、私の初恋は4年越しに叶いました、でも、ちょっと迎えに来るのが遅いんじゃない?」

「すまない、その分幸せにするって誓うよ」

「んっ」


体の体重をすべて俺に委ねるような抱きつき方をしてくる瀬奈。

抱き返す力を少し強めればこちらを抱きしめてくる力にグッと力が入る。

華奢な体のどこから繰り出されているのか分からないほどに強い力が絶対に離してやらないぞと訴えかけてくる。


「絶対に幸せにしてよね」

「もちろんだよ」

「ふふっ、……もうちょっとこのままでいい?」

「うん」


ゴンドラがまだ高いうちに俺たちは愛を確かめるようにお互いの体を抱きしめ合った。

離れた時の気恥ずかしそうにする瀬奈の姿は今まで見たどんな女性よりも魅力的だった。


「ありがとうございました〜」


「私たち、恋人になったんだよね?」

「そう、だな」

「手、出して」

「お、おう」


細く肌触りの良い指が俺の指に絡みついてくる。

いわゆる恋人繋ぎというやつだ。

してやったりという顔で俺の顔を覗き込む瀬奈が可愛くて思わず顔を背けてしまう。


「ふふっ、照れてる」

「……」

「可愛い〜」

「瀬奈が可愛すぎるのがダメなんだ」

「でしょ〜、世界で1番の彼女って友達に自慢しても良いんだよ」


付き合ってから翻弄されてばかりな気がするがこれはこれで悪くないなと思える。

俺は瀬奈を抱き寄せて内カメで写真を撮ると合コンの時の2人に送り付ける。


「な、なに?」

「ん? 俺の彼女可愛くね?って自慢してきた」

「なっ!本当にやる奴が居るなんて……!」

「事実、こんなに可愛いんだし俺のだってアピールしないと悪い虫が来ちゃう」

「……///」

「照れたな……」

「わ、私だって彼氏自慢できる友達くらいいるしぃ?」

「どこで張り合ってるんだよ……」


そんなたわいもない会話をしながら駅まで向かう。


「遅いし送っていくよ」

「ありがと、そんなに私と居たいの?」

「あぁ、もちろん、このまま送り狼になりたい気分だよ」

「そ、それは……」


あたふたと慌てる瀬奈、こういう話に耐性がないのかもしれない、そういうところもピュアで可愛いのだが。


「ま、また日を改めてね? 私も同じ気持ちだよ」


からかい混じりに言ったつもりの一言は思わぬ角度で俺に大ダメージを与えた。

結局、その日はそのまま何もすることなく家まで送り届け俺も帰宅する。


:今日はとっても楽しかった、ありがとう

:こちらこそ、ありがとう

:これからよろしくね? 絶対に逃がさないからっ!

:もちろん、それはこっちのセリフだよ

:ふふっ、じゃあ、おやすみ

:おやすみ

:大好きだよ、伊織くん

:大好きだ、瀬奈



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

明日は瀬奈視点で書こうか物語を進めるか迷ってる!

瀬奈視点みんな欲しいかな?

まあ、書きたいから書くんですけどね?

ラブコメ書くの楽しい!

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