第53話 告白 ※瀬奈視点


「あれに乗ろうか」

「うん!」


 私がまだ慣れずに戸惑っている時、伊織くんは自ら提案してくれて私を色々なところで楽しませてくれた。


「あれなんだろ」

「行ってみようぜ」


 私が慣れてきて自分から話し始めることが出来たら、言葉に寄り添って一緒に楽しんでくれる。


「よし、そろそろいい時間だし休憩しようか」

「うん!」


 私が疲れたなと感じたら、察したのかたまたまかは分からないけど休もうと言ってくれる。

 人によっては当たり前や、些細なことと切り捨てるかもしれないが、私には伊織くんが自分を気遣ってくれることが何よりも嬉しかった。


 でも、それと同時におんぶにだっこな私が嫌になる。

 相棒だなんて思っているけど結局は支えられっぱなしなのかもしれない。


 伊織くんがせっかく観覧車に連れて行ってくれているというのにこうやってうじうじしている。


「ひゃっい!?」

「ふはっw」

「も、もう!こっちは緊張してるの!」

「どうして?」

「むぅぅぅぅぅ! 覚えてろ……」


 急に手を握られて思わず上擦った声が出てしまう。

 伊織くんの方を見ると楽しそうに笑っていて、どこかホッとした気分になれた。

 こんな私とでも楽しんでくれているのかもしれない。


「こちらのアトラクションは20分かけてゆーっくりと1週します、途中でおトイレなんかには行けませんのでご注意くださーい」


「いよいよだね」

「そうだな……」


 ゴンドラへと案内される前に手を離されてしまい、少し残念な気持ちになりつつも、これから起こるであろう私の人生を左右する大きな出来事に胸を膨らませる。


「瀬奈、改めて今日は来てくれてありがとう」

「うん、こちらこそ」

「楽しんでもらえたかな?」

「すっごくっ!」

「良かった、少しだけ話してもいいかな?」

「うん」

「俺の初恋はゲームの中のセナだったんだ」

「っ!?」


 初恋が……私?

 じゃあ、4年前のあの頃に告白していれば私たちは恋人になれてたの?


「明るくて元気で一緒にいると楽しくて、喧嘩も言い合いもするけどそれも含めて全部楽しい思い出だったと思ってる」

「だけど、気持ちを伝えるのが怖くて、関係が変わってしまうんじゃないかってそう考えると『好き』っていう言葉が出なかったんだ」

「そして、4年前の俺の初恋はサービス終了と共に途絶えたと思ってた」


 あの約束をしてから、女の子らしくを目指して生きてきた。

 また、伊織くんに会えたなら一目で私を好きになって貰えるようにと努力をし続けた結果が今の私だ。


「でも、セトラでセナを見つけて話していくうちにお淑やかで大人になったセナの中に居た、昔の明るくて元気なセナを見つけたんだ」

「話していくうちにどんどん惹き込まれて、気づけば俺はもう一度セナが好きになってた」

「現実ではまだ少ししか話していないけれど、楽しくってそれでいて心が安らぐ、ゲームの中のセナと変わらない気持ちをくれた瀬奈を好きになったんだ」


瀬奈セナが好きだ! 付き合ってください」


 目の前が涙でぼやけ、私の顔は真っ赤になっていると思う。


 4年越しに叶った私の初恋……


 絶対に離したくないと思うと気づけば体が動いていた。

 伊織くんの胸に飛び込むようにしがみつき、はしたないと思いつつも全身で愛を伝える。

 全身の体重を伊織くんに預けて、この幸せを噛み締める。


「よろしくお願いします、私の初恋は4年越しに叶いました、でも、ちょっと迎えに来るのが遅いんじゃない?」

「すまない、その分幸せにするって誓うよ」

「んっ」


 ギュッと大きい体が私を包み込むように抱きしめてくれる。

 頭の上で聞こえる伊織くんの声がどうしようもなく愛おしくて、好きが溢れ出す。


「絶対に幸せにしてよね」

「もちろんだよ」

「ふふっ、……もうちょっとこのままでいい?」

「うん」


 ずっとずっとこうしていたいけど、人前で抱き合うのは流石に恥ずかしい。

 だから、ゴンドラが下に着くまでのもう少しの間だけ、伊織くんの体温を全身で感じることにした。


「ありがとうございました〜」


「私たち、恋人になったんだよね?」

「そう、だな」

「手、出して」

「お、おう」


 私がそう確認すると、伊織くんは照れくさそうに肯定してくれる。

 伊織くんの大きな手に指を絡ませ、ギュッと握りしめると優しく握り返してくれる。


「ふふっ、照れてる」

「……」

「可愛い〜」

「瀬奈が可愛すぎるのがダメなんだ」

「でしょ〜、世界で1番の彼女って友達に自慢しても良いんだよ」


 照れる伊織くんは魔性の魅力がある。

 私を虜にして離さないその姿を見るために色んな手段でこれからもからかってやろうと心に誓う。


「な、なに?」

「ん? 俺の彼女可愛くね?って自慢してきた」

「なっ!本当にやる奴が居るなんて……!」

「事実、こんなに可愛いんだし俺のだってアピールしないと悪い虫が来ちゃう」

「……///」

「照れたな……」

「わ、私だって彼氏自慢できる友達くらいいるしぃ?」

「どこで張り合ってるんだよ……」


 ここぞとばかりにし返してくる、伊織くんも可愛い

 駅までのこの幸せな時間がずっとずっと続くといいのに……


「遅いし送っていくよ」

「ありがと、そんなに私と居たいの?」

「あぁ、もちろん、このまま送り狼になりたい気分だよ」

「そ、それは……」


 お、送り狼ってそういう……

 い、伊織くんも男の子だし……年頃の男の子ならそういうこともしたいよね?

 いつか、心の準備が出来たら伊織くんとそういう関係になってみたいな……


「ま、また日を改めてね? 私も同じ気持ちだよ」


 私がそう伝えると伊織くんは驚いたような顔をして顔を赤らめていた。

 家には親がいるのだが挨拶は流石に改めて来るよとサッと帰ってしまった。

 今日は、手に残る伊織くんの温もりを感じながら幸せな夢を見れそうだ。


 :今日はとっても楽しかった、ありがとう

 :こちらこそ、ありがとう

 :これからよろしくね? 絶対に逃がさないからっ!

 :もちろん、それはこっちのセリフだよ

 :ふふっ、じゃあ、おやすみ

 :おやすみ

 :大好きだよ、伊織くん

 :大好きだ、瀬奈


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

よーし、一区切りついたのではないでしょうか。

作者の力が足りないせいで読みずらいかもですが暖かい目で見守ってくれると嬉しいです。


あと一区切りついたついでにキャッチコピーも変えました!!


今後は最狂カップルが最前線を攻略していく物語になりますので!

これからもこの作品をよろしくお願いします!

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