第33話

 3.14159296535......


「ダメだ、円周率じゃ心が収まんねぇ......」


 こういう時は素数だろと言われるかもしれないがこっちの方がリズムがいいのだ良くて好きなのだ。

 そんな素数か円周率かなんてどうでもいいのだ、今はとにかくこの状況を打破しなくては


 そのままどかせば何とかなりそうだと思ったのだが無理だ。

 動かそうとする度、ムスッとした嫌そうな顔をされてしまうと罪悪感がある。


「んぅ」

「ちょ、まっ!」


 寝返りをうったせいで顔の向きは俺のお腹の方へと向き顔の位置も危うい場所になってしまってさらに気まづい体勢になってしまった。


 まだ寝ぼけていたのが救いだが次しっかりと起きてしまった時、どう言い訳すればいいんだ?


 そうやってグズグズと現実逃避してなんでいる間にかなりいい時間になってしまった。

 そろそろ起こさないと行けない、しかし今のまま起こせば終わる......


「んんっ、ん?え?イオリくん?」

「あっ」


 最悪のタイミングだ。

 長谷川さんが顔を上げて見下げていた俺とバッチリ目が合ってしまった。

 困惑と戸惑いの表情が段々と赤く染まり、状況を理解した長谷川さんは飛び起きる。


「え、え、え、ごめんなさいっ!!」

「あ!ちょっと待ってっ!」


 荷物を光の速さでまとめて本を読んでいた本を手に取り個室をダッシュで出ていってしまった。

 止めることも出来ず、個室に残されたのはうなだれた俺だけだった。


 ピロン♪


 :ごめんなさい!色々謝りたいので今日、セトラで会えますか?イベントのこともありますので

 :わかったよ、こちらこそごめん、レポートが終わったらすぐにセトラに行くね

 :今日はありがとう

 :いえ、こちらこそ、その、結局レポートの邪魔になってしまいましたし

 :そんなことないから!大丈夫!気にしないで!おかけでめっちゃ捗ったから

 :それは良かったです


 この気まづさの中、セトラで会ってまともに話せるのかと言われれば怪しいがこのままにするのはもっと良くない。

 俺は膝枕していたことよりも、長谷川さんの寝言のせいで頭を抱えている訳だがきっと本人は覚えていないのだろう。


「大好き、かぁ、俺もってあそこで言えたなら変わったのかな」


 きっと告白すれば成功する。

 だけど4年間の空白はとても大きく、昔のイオリは今の俺じゃない。

 だから、もう少しお互いを知った後にもう一度、ちゃんと告白しよう。

 それが成功しても失敗しても4年前の俺と今の俺がしなければ行けないケジメだ。


「はぁ、帰ろ......」



 急いで帰り、レポートに参考文献で得た知識や引用を使い文字を稼ぎ、仕上げに参考文献を記すことで目標の字数を達成することが出来た。

 ご飯を食べて、身支度をした後にベットに腰をかける。

 セトラに入れば長谷川さん......セナと話すことになる、ちゃんと気まづさを解消しないとな......!

 気合いを入れ直した俺はベットに寝転がり、セトラへとログインする。


 :イオリくんはどこにいますか?

 :セナがいるところに行くよ

 :じゃあ、ガラハのこの宿まで来てください

 :分かった、五分くらい待っててくれ

 :分かりました


 転移できる場所が近かったのもあってすぐにガラハの宿に着くことができた。

 宿の前にはセナが立っていて、俺を手招きしている。


「「ごめん(すみませんでした)」

「「いやいや(いえいえ)」」


「「ぷぷっ!あははっ!」」

「ゲームの中だとちょっと恥ずかしいくらいで済むから逃げて正解だったかも」

「逃げられた後、結構、悩んでたんだぞ追いかけるか」

「あの図書館で私に追いつける人は居ない......」


 やはりゲームというのは偉大で、現実だと素直に話せないこともアバターを通せばある程度、心理的に言いやすくなるもので何とか普段の距離感を取り戻せた。


「ねぇ、私、寝言とか言ってなかったよね?」

「っ!え、いやぁ、言ってなかったよ?」

「それは無理があるじゃん!!」


 あまりにもピンポイントに悩み事を指摘されたので上手く隠すことが出来なかった。

 しかし、この場で言う訳には行かないので何とか上手く誤魔化さないと行けない。


「いや、唸ってたり食べ物の名前を呟いてたりセトラの話をしだしたり起きてるんじゃないかと疑うレベルだったから......」

「何それ......私そんなに寝言酷いの!?」

「たまたまじゃないかな〜」

「絶対もう人前で寝ない......」


 不貞腐れてしまったが、何とか誤魔化せたらしい。

 そんなに酷いのかと気にしているがそっちに思考がシフトしてくれたので案外でっち上げてみるものである。


「とりあえずイベントの話しましょうか」

「確か、夜に襲撃が来るんだよな?」

「うん、イニティムに明日の夜、8時くらいから襲撃が始まるって」

「報酬の条件は開示されてなくってとにかく街を守れってことらしいよ、こういうのは本気で守らないとやばいし仲のいいNPCには絶対外に出るなって言わないとね」

「レティアの惨劇はもう見たくないからな」


 レティアの頃、始まって最序盤に街が半壊した事件があったのだ。

 プレイヤーは我先にと奥へ奥へ、強いモンスターを殺そうと奪い合いを行った結果。

 防衛が手薄になり門を突破され多くのNPCが殺された。

 このゲームはNPCはちゃんと死ぬし復活しない。

 町だって壊れるとNPCが直すかプレイヤーが直すまで壊れたままなのだ。


「特に準備できることないよね」

「そうだね、回復薬とかも在庫は充分だし」

「解散か?」

「一旦各々で最後の仕上げしよっか、新しい技はイベントまでお預けだね」

「よし!」

「じゃね」

「また明日」




 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 イチャイチャ終了!


 明日からはイベントが始まります!


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