第32話

イベントがいよいよ明後日に控えているというのに俺は大学のレポートに追われていた。


「終わらねぇ!期日はあるけどこんな爆弾残したままゲームを楽しむとか無理だって!」


:イオリくん、今日はゲームできそうですか?

:ごめん、セナ、レポートが......

:そんなに多いんですか?

:いや、なんというか苦手な分野で......

:私が手伝いましょうか?

:いいの!?

:はい、今日、そうですね、近くに県立の図書館があったと思うのでそこで待ち合わせしましょう

:ホントに助かる!ありがとう!


「やっちまった、どうしよう、服?あ、髭剃らないと、髪の毛も整えて......」


ありがたいし嬉しいからって勢いで返事をしてしまった......

鏡の前にはマスクで隠せるからと調子に乗って剃っていない髭、直す気のなかった寝癖、そしてあるかも分からない勝負服。


何をそんなに気合いを入れてるんだと言われそうだが仕方がないのである。

お互いが4年ぶりに再開したゲーム友達だったと認識したのだ、しかも俺に関しては初恋の相手......


「こんなの意識しない方が無理だろうが...!」


ばたばたと準備を進めているうちにも約束の時間は迫ってくるのだ。

髭は剃った、念の為お風呂にも入って髪の毛も整えたし、服も友人に誕プレで貰った持っている中でも一番マシな服を着た。


「よし、行ける......か?」


自信を持ってイケメンとは言えないがフツメンくらいにはなれたんじゃないだろうか。

セナ、いや、長谷川さんはかなり美人なのだこれでも隣を歩けば霞んでしまうんじゃないかとビクビクしている。


「やっべ!時間が!」


気づけば時間はギリギリ、駅まで急いで向かい約束の図書館に向かう。

着いてみればかなり大きな建物でこんな図書館がこの県にあったんだと関心してしまう程である。


「戸崎くん、だよね?」

「あ、長谷川さん、今日はごめん、レポートなんか手伝わせちゃって」

「いいのいいの!気にしないで、私もさっきまでセトラに入り浸ってて今日は日の光を浴びないかと思ってたからちょうど良かったの」

「ホントにありがとう」

「いいよ、個室の予約取れたから早く行こ」

「え、あ、うん」


図書館に個室とかあるの!?

待て待て、そこに驚く前にだ、今の俺の精神状態で長谷川さんと密室?

まずいまずいドキドキしてんのバレちまうよ......!

意識してるのキモがられたりしたらどうしよう。


「ここだね〜、さっそくじゃあレポートの内容見せてくれる?」

「これです......」

「ふむふむ、参考文献は文字数に入るのかな?」

「入れても大丈夫だったはず」

「なら、ちょっと待っててね」


そう言って長谷川さんはスタスタと個室を出ていった。

あの迷いの無い足取りから察するにここの常連なのだろう。


「ふぅ、死ぬかと思った」


距離がとにかく近いのだ。

勉強するためのスペースなだけあって机は大きく広いのだがなんせ対面で座ることが出来ず、必ず隣に長谷川さんが来るのだ。


その度に4年前の恋心をもう一度掘り起こされているかのような胸の高鳴りが俺の心を抉る。

いい匂いがするし、触れる度に意識しちゃうし、声がセナだから昔のことを思い出してしまうのだ。


「よっいしょっと、イ、あ〜、戸崎くん、これがこの範囲に関係する資料かな、内容はまあパラパラ読めば理解できると思うよ?ちょっと難しいことは書いてるかもだけど専門用語とかはないはずだから戸崎くんなら大丈夫だと思う」

「ありがとう、こんなにも用意してくれるなんて」

「いいんだよ!私もここで本読んでおくから読み終わったら教えてね」

「分かったよ」


4、5冊のそこそこの厚さの本を持ってきた長谷川さんはそれに加えて自分が読みたい本も持ってきたらしく説明を終えると自分の世界に入っていった。

流し読みすれば夕方までには3冊くらい読めそうだな。

似通っていそうな本を分けてできるだけ別のことを書いていそうな本を3冊隣に置いて読み始める。


使えそうだと思ったところのページと内容を軽くをスマホにメモしていって使える場所を厳選していく。

そんな作業を淡々とこなしている時だった。


俺の肩に何か温かいものがもたれかかって来たのだ。

この場に俺にもたれかかってきそうな物なんてないので俺の肩にいる人は決まっている長谷川さんだ。

横目でちらっと見ただけでも幸せそうな笑顔で寝ているのが分かる。

静かな図書室に耳元で聞こえる規則正しい長谷川の寝息がやけに大きくて色っぽく感じてしまう。


朝までセトラをしていたようだし、なんだか起こすのもはばかられるのでどうにかこれを耐え切るしかないのだろう。


「こういう時って何を考えるんだ?......とりあえず本に集中だよな、集中してれば気にならない」


結論から言うと集中はできたのだ、どこか落ち着く安心感があるおかげでとても集中できた。

この安心感の正体は間違いなく長谷川さんではあるのだが集中から覚めると状況は悪化していた。


肩に乗っていたはずの長谷川さんの頭は俺の膝の上にあったのだ。

幸せといえば幸せなのだが果たしてこのままでいいのだろうか、相手は嫌がらないか?キモがられたらどうしようなどという消極的で後ろ向きな考えしか出てこない自分が情けない。


「んぅ、ん?イオリくん?」

「え?はい」


やばい、1番気まづいタイミングで起きられた。

言い訳するか?それともしらを切るか?

しかし、長谷川さんは飛び起きる様子もなくじっと俺の顔を見て膝の上からどかない。


「ふふ、夢かぁ、イオリくん大好きだよぉ」

「っ!?!?」

「んっ、このままがいい、おやすみなさい」


もう無理......

頭パンクする......



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

書いてたら長くなっちゃった!!

ごめん!!

明日まで引き伸ばすわ!

もうちょっと2人のイチャイチャ見といてくれ!


いつも応援してくださっている方、ありがとうございます。

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