第13話 再開
「よし、ログイン」
毎度おなじみの浮遊感が来たあと俺は宿のベットで目を覚ました。
約束の時間までまだ余裕はあるがセナなら早めに来ている気がするのでさっさと噴水の方へと向かう。
噴水についてフレンド機能でメッセージを送る。
イオリ:少し早いですけど噴水で待ってますね?
セナ:あ、私ももういるのでそこで待っててください
向こうはこちらの顔を知っているので無理に探すよりはこのまま待っている方がいいだろう。
それにしても平日だからか人が少ないな、サービス開始直後だしもう少し多いと思ったんだけど
「あの!イオリくんですか?」
「はい、セナさんですか……?」
目の前にいるセナはレティアの頃の面影が持っている弓くらいしかなく、よく見ると長谷川さん?と思えるくらいの顔の面影がある。
「なんというかお互い現実の顔がチラつきますね」
「そ、そうですね」
「とりあえずモンスターを倒しに行きますか?」
「いえ、その前に戦いませんか?」
「え?」
セナさんからのまさかの提案に驚くが確かに確証がある訳でもないし、今のままで行けば気まづくなるだろう。
昔は事ある毎にPvPや他の勝負事で戦いあった仲なのだ。
戦いで打ち解けるなんて少年漫画みたいなことが起こるかもしれない。
「行きますよ、敗者へのペナルティはなしで制限時間は付けますか?」
「どちらでも」
「では5分で」
PvPを承諾すると街中にPvPのエリアが展開される。
前の男との戦いでは一瞬すぎてあまり考えなかったが街中だとやはり人目につく。
カウントダウンが始まり、少しづつ人だかりができ始める。
5
4
3
2
1
カウントダウンが終わると同時に目の前にゴブリンとウルフが現れる。
レティアと変わらず召喚士をしているらしい、地雷職ではあるのだが本人の技量が高く、パーティ貢献度がとても高いのでセナの召喚士は別格の強さを誇っていた。
ウルフが飛びかかって来たところを避けながら首を切り落とす。
煙となって消えたウルフを、見届ける前に俺の方へと足を狙った矢が飛んでくる。
ゴブリンを上手く盾にしながら一発一発が避けるか弾かないと行けないような正確な狙撃はかなり精神をすり減らされる。
「ふっ!」
初期装備の剣をゴブリンの奥にいるセナに向かって投げつける。
ゴブリンに庇われてしまったがそのまま距離を詰めて切り替えた剣で斬りつけるっ!
「っ!」
もう少しというところで目の前が真っ白になった。
レティアの頃にも同じことをされたので覚えている、光虫だ。
俺は耳を澄ませて、音を聞く。
弓を引き絞る音、ウルフの声も聞こえるので再召喚されてしまったのだろう。
ぴよぴよというひよこの声も聞こえる、確かモンスターの敵意を引き寄せるやつだったか?
「ふっ!」
弓矢が放たれる音が聞こえた。
ここ!
何度も何度も目潰しされたり目隠しされたり、レティアの頃にセナの研究に付き合ったかいがあったのか弓矢を弾いた乾いた音が俺の耳に入る。
もう目は回復した。
反撃を始めるきっかけを作らないとこのまま距離をとられてジリ貧になってしまう。
だからといって簡単に距離を詰めることができない。
倒したモンスターはもう復活しているし、距離も取られて手詰まり状態だ。
状況を打開するために一か八かの賭けに出る。
再召喚されたゴブリンに一気に近づく、ゴブリンを遮蔽にするようにセナと自分の位置を調整する。
ゴブリンが攻撃してくるが、いくら俺の防御力でも数発は耐えれるのでゴブリンを掴んで一気に前に飛ぶ。
「っ!」
やっとできた一瞬の隙
これを逃せば次のチャンスは作れない。
俺はセナに向かって剣を振り下ろす。
「せいっ」
俺の視界はゆがんで、背中に衝撃がはしる。
腹には短剣が突き刺さっていて、見上げると弓を構えて立っているセナがいた。
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