第5話 街探索とお使いクエスト

 街の中心辺りをうろうろしていると噴水周りに次々とプレイヤーが現れているのが見える。

 みんな、手を握ったりジャンプしたり歩いたりと感覚を試しているようだ。

 中には急に走り出そうとしてコケている子なんかもいてなかなかに面白い。


「ん〜、森に行った方がいいんだろうけどなぁ」


 最前線を走るなら絶対にこんなことをしている暇はないはずなのだが、レティアの運営ならきっとなにか隠してるという謎の自信からずっと街を探索しているのだ。


「へ〜、結構、この街っていりくんでるんだな」


 路地裏のような場所を見つけた俺は好奇心に駆られてどんどん奥へと進んでいく。

 何度も適当に道を曲がったせいで何処にいるのかも分からないがとりあえず前へという精神で突き進んでいるのだ。


「まずい……帰り道が分からなくなった」


 辺りを見渡しても通路、通路、通路、どこも同じような見た目で歩いても歩いても出れる気配が全くしない。


「にゃ〜」

「猫?……どうせ出れないならついて行ってみるか」


 救世主という訳でもないのだが猫が俺の目の前に現れた。

 どういうことか謎の貫禄があるその猫はゆっくりと俺の前を歩いている。

 走って逃げる訳でも無く、俺が歩くスピードに合わせているようなスピードで前を先導してくれている猫は時々振り返って小さく鳴いてまた歩いていく。


「もしかしてバカにされてる?」

「にゃっ」

「面目無い……」


 しばらく猫について行くと少し寂れた鍛冶屋に案内された。


「おぉ、シャーレどうしたんじゃ、ん?」

「にゃぁ」

「開拓者か、路地に迷い込んだんじゃの、シャーレがおって良かったな」

「はい、助かりました」


 背の小さい爺さんが猫を撫でている。

 どうやら名前はシャーレというらしい、随分毛並みが綺麗だったしやはり飼い猫だったのか。


「ふむ、お主武器を買い換えておらんようだがなにか理由があるのか?」

「来たばかりで買い換える時間がなかっただけですよ」

「なのに路地にわざわざ入ったのか、もしかしてお主馬鹿じゃな?」

「返す言葉もない」


 武器に大して不満もなければ耐久値が無限ということもあって当面は初期装備でいいやと考えていたのだ。

 買い換えるとメンテや買い換えが入るので出費がかさむ。


「ワシの店で買っていくか?」

「え、いいんですか?」

「普段はお貴族様に武器を納品するだけなんじゃがの最近同じことの繰り返しで飽きてきとったんじゃ」

「お願いします!」

「ふむ、ステータスを見せてくれぬか?要求値がどこまでのものなら扱えるか見るのでの」

「わかりました」


 要求値……初めて聞く単語だな、多分必要ステータスが武器ごとに用意されたのだろう。


 イオリ Lv5

 HP 100/100

 MP 50/50

 STR 30

 VIT 10

 INT 10

 DEX 20

 AGI 30


「ふむ、クマに叩かれたら死にそうなステータスじゃの」

「当たらないので大丈夫です」

「ほう、大した自信じゃの、短剣とかの方がいいのか?」

「いえ、出来れば刀、ないなら片手剣がいいです」

「刀か……かなり高くつくからまたお金が貯まったら来るといいの」

「分かりました」


 刀あるのか……早めに思ったスタイルができそうでテンションが上がる。

 店に入れてもらっていろいろな武器を見ているけどなかなかに要求ステータスが高いのだ。

 もう少し後に見つかる予定だったのかもしれない。


「これじゃな、ちょうど1万マニでどうじゃ?」

「い、1万……」

「これでも値下げしとるんじゃがの〜」


 初期の所持金5000マニと依頼報酬の5000マニ、直ぐに稼げる金額とはいえ所持金ピッタリ全てというのは抵抗がある。


「先に品物を見せてもらっても?」

「構わんよ」


 高品質の鉄の片手剣

 攻撃力75

 耐久値250/250


「え!?」

「どうしたんじゃ?」

「これが1万でいいんですか!?」

「そうじゃの、久しぶりに来た客特価ということにしておくかの」


 俺が驚くのは仕方ないことで初心者の片手剣の攻撃力は10しかないのだ。

 こんなのオーバースペックにも程があるだろう。


「いやいや、流石に割り引かれすぎですよ!!」

「そうかの?じゃあ少し厄介事を押し付けようかの、これを見てくれるかの」

「地図ですか?」

「南門から先の地図じゃ、南門から少し先の方に行くと竜山脈という物がある、そこはかつて竜が住んでいてこの街は竜から他の街を守るために作れた」


「邪神戦争というものを知っておるか?」

「はい、俺達が呼ばれた原因だと言うのは知っています」


「あの戦争では、人もエルフもドワーフも魔族も、ありとあらゆる種族が手を取りあったって戦ったのじゃ」


「女神達の軍勢は神界より地上に降りてきて我々と共に戦った、私達を守りながら全てを背負って戦ったせいで敗北してしまった」


「世界はボロボロになって私達も色んなものを失った、土地、英雄、技術、戦場になった場所は強き力に汚染され、邪神は徐々に力を取り戻し各地を支配して行った」


 確か汚染された土地を正常に戻したり、邪神の手先を討伐したりして世界を元の姿に戻すというのが俺達の最終目的だ。


「まあ、戦場からは1番離れていた街がここなのじゃ、ここはまだ安全じゃよ、竜もその戦いの時に住処を変えてしまっての、今では竜山脈はただの山なんじゃが竜石というのがたまに落ちておるんじゃ、それを探してきておくれ」


「分かりました」

「まあ、なかなか落ちておる物じゃないのでな、いつかでいいのでな」

「じゃあ、これ1万マニです」

「確かに受け取った、それじゃよろしく頼んだぞい、帰り道はそっちじゃ表通りに出るからの」

「ありがとうございました〜」


 なかなかいい買い物をしたが竜石か、情報集めしないとな。

 とりあえず新しい武器を試すついでにフォレストベアを倒しに行くか。




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