第2話

平安時代にはなかった面倒くさいものが1つある。学校だ。

貴族の平安女子は家から出られない。家にいて、和歌だの琴だのを教養として習わされる。

だが私はそんなものより馬に乗るほうが好きだったし、弦の扱いなら弓のほうが上手かった。

男が私の元に通うこともないからお気楽人生で過ごせるはずだったのだ。

あの親父のせいで全部パーだ。


朝起きるのは苦じゃない。あの頃は着替えのために早起きを強制されていたから。制服に着替える。自分ひとりで着替えられる洋服は素晴らしい。あんな重たい着物を5枚も6枚も重ねて着ていたなんて今考えたら狂気の沙汰だ。

ご飯は現代では楽しみのひとつだ。平安時代のほとんど味のない料理に比べたら、食に溢れているこの時代は極楽浄土かと思うほど。

あの頃のお米は玄米だ。当時は当たり前だったが現代の白米の美味しさとは比べものにならない。

ベーコンエッグに食パンなど、最高の組み合わせだ。

「早く食べちゃいなさい。彩奈。」

今の母がキッチンから声をかける。

私の今の名前だ。『一条 彩奈』

前世の名前は徳子とかいう、古臭い、といってもあの時代では当たり前の名前だったのだが、今の時代は名前もおしゃれっぽくて気に入っている。

今日は私の好物のオムレツとレーズンパンにコーヒーだ。

「いただきまーす。」オムレツをフォークで切り分け口に運ぶ。今日も母のオムレツは最高のトロトロ具合だ。すべてを平らげ、私は鞄にお弁当をいれると

「行ってきまーす!」と家を飛び出した。

ずっと気になっている場所があるのだ。

(今日こそ正体を暴いてやる!)

私は一目散に『ある場所』に走り出した。

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