第4話お見合いが始まりました!これから、詐欺師として生きることになるのでしょうか?
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
人間と目が!!!!!!!!!!!!目があぁあったあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!目ぇ合わせるのこわわわわああああああああああああああいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
とうとうその日。よく晴れた休日の朝。
畔沼さんとのお見合いに着きました。
ひぃひぃ言いながら、辿り着いた邸宅の庭中央にあるテーブルに向かい合っているんですけど。
んだけど、もうね、顔すら見れないです。
誰が目の前に居るのかも既に見えて居なかった。
「オロロロロロ……………」
うつ伏せていると、恐怖と緊張のあまり何かわからない液体が口からあふれ出てくる。
「ひぃいいぃっ、あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
体中が熱い。
「大丈夫かい?」
対面席から声がしている。視界の隅に高そうなスーツが見えます。
でも、そんなのどうでもいい!
そして冒頭。
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
人間と目が!!!!!!!!!!!!目があぁあったあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!目ぇ合わせるのこわわわわああああああああああああああいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「実は、どうしても事情があって」
あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
「君はミャクミャク星人だろう? 最近、領土の侵略が」
体が熱い、熱い、熱い、痒い、痒い、痒い、
視界がぐらつく。
「オロロロロロ……………」
うつ伏せていると、恐怖と緊張のあまり何かわからない液体が口からあふれ出てくる。
もはや何をしに来ているのかわからなかった。
体中が熱くて、それが猛烈な痒みに変換され、静かに座って話を聞こうとする意志と裏腹に、
腕中を引っ掻きまくってしまう。
普段はそんなことが無いのに、猛烈なストレスに侵されると痒くてたまらない。
「はぁっ、はぁっ」
肩口で口を拭う。
眩暈がする。
「聞いてた?」
「えぇ。まぁ。深い事情がおありのようで」
そっとハンカチを差し出されるが、すでにプールと化しているテーブルを拭うには足りなかった。ぐちゃぐちゃな上、顔ではなく、体中が発疹で赤くなっているが、
もうどうしようもないので、極めて淑女らしい笑みだけ浮かべる。
「それで、前にも言った通り、俺と結婚して欲しいんだ」
なんで???????????
そこまで家を想っているなら、家と付き合えば良いのに、
なぜ、そこまでしてまで、私なのか。
「う、うう、嘘を、つく、って、ことですよね?」
ぼやーっとぼやけた顔の誰かが、苦笑いしている。
「嘘、って、君にはメリットが少ないかい?」
「いや、あの……事情は、たぶん、断片的に分かりましたけど、代理人が居ないのが初めてで」
「代理人?」
「あ、あ、あの、私! そろそろタンパク質が尽きたからなんか買ってこないと!?」
星に戻ることは出来ないし、出来ることもあまりないし、正直何をどうしたらいいのかわからないですね。
「タンパク質が取りたいのかい?」
「え、え、え、えっと……家のことが、好きなんですよね? 家に恋してるんですよね、家と付き合えないから、私をその……」
ガタッ、と立ち上がると、彼の綺麗な顔立ちが見えた。
混乱する。
のは向こうも同じだったらしい。
「服が……びしょびしょじゃないか」
座ったまま恥ずかしそうに目を逸らした。
「う、うわぁああ!!!せっかくのエビ柄なのに!!!エビがびしょびしょになってる!」
今日の為に着てきた淡いピンクのエビ柄のドレスが、すっかりびしょびしょになっている。
「エビがびちゃびちゃ……ううう」
どうしていいのかわからずに居ると、邸宅の中からよぼよぼしたじいやが召喚された。
「お呼びでしょうか?」
「お、および、え、っ、言っただけです、お気遣いなく」
混乱のままなぜか帰らせようとしていると、畔沼さんが「女性の服を」と言った。
「畏まりました、オニュウの服をッ持って参ります!」
じいやが一礼して、邸宅に戻っていく。
「転職で入社した部下がさぁ、仕事を教えても「前職ではそうじゃなかった」だとか「前の職場と比べてここの会社はあーでもない、こーでもない」と文句ばかり。「前の職場は自分には合わなかった」らしいけど、そんなにうちの仕事が嫌なら、合わなかったという前の会社に戻れば?って言ってやりたいよねー」
邸宅の外で、おばさんが大声で話しているのがどこかから聞こえてくると、ますますいたたまれないような気がした。
これでもこっちはギリギリ頑張ってやっているというのに。
っていうか。ご近所さんにしても、敷地は広いのに近すぎないか?
と思っていると、堂々と門の中に入ってきた。
「こんにちはぁ! 畔沼さん、来ましたよ~」
やがて庭に顔を出したおばさんがギョッとした。
エビがびちゃびちゃになった服を着た私を見て、引いている。
「…………あら。こん、にちは、爺やさんは、中に?」
薄ら笑いとともに挨拶する。
畔沼さんもいちおう会釈を返した。
私もあえて、非常識作戦を決行した。
「今! お見合い中なんですよ!」
「まるで、赤ちゃんね! とてもそうは見えないけど」
見下したような視線が向けられる。
「なんて羨ましいのかしら」
代理人が居ないで、自分の言動を許されていることが初めてなのに無理やりお見合いさせられている気持ちがわかるわけがないだろうし。いっそこんなストレスを抱えるくらいなら安全とかいいから殺せと言いそうになる。
「かわってください!ほんと! なんで私がこんな詐欺師させられるんだか」と、言えたらいいのだが、さすがにそこまで言うのも面倒なので、適当に笑っておく。
「本当に、代わって欲しいわー!」
と何度か言い残して、おばさんは中に入っていった。
チュンチュン……チチチチ……
鳥の鳴き声と、静寂。
微かなひんやりした風が肌を撫でてから、数秒。改めて、私は返事をした。
「家と、会話を可能にする術を考えるくらいなら、お役に立てる……こともあると、思います」
家と彼の恋愛さえ成就すれば、あとは隅に置いて貰えれば接触も無く、みんなハッピーという計画である。
「これが、新しいお見合い相手か」
邸宅から、新しい声がした。畔沼さんにそっくりの……誰?
中から出て来てこっちに歩いてくる。やがて斜め45度くらいを保って腕を組んだ。
「弟です」
弟らしい。
「どんな相手かと思えば……整形したような顔だな」
鼻を鳴らしながら、小馬鹿にした笑みを浮かべている。
整形を見定めるスペシャリストかなんかか?
「はい、そうなんです!」
いや、別にしてないのだが、口車に乗るほうが面白そうなので私からも肯定した。
どうでもいい、どう思われたところでさよなら出来るなら願ったりかなったり。
「私、整形してるんですよ! そんなことよりエビがびちゃびちゃなので、それしか今頭に無いですね!」
「こんな汚い整形女を選ぶなんて、見損なったよ……俺は最初から反対だった」
「私もです!」
と言えればどれだけいいだろう。
この際、整形だろうが性悪だろうがなんだっていい。
「そうそう、性格も悪いし、整形してるし、いいとこなんにも無いんですよ、私。家と恋愛をするための道具として頂いて構わないので。
今だって汚い姿を見せてしまってすみません……」
少し冷えてきた身体を温めるように片方の腕に、指を伸ばすと、
何か湿った感触があった。
さっき引っ掻きまくった腕が、血を流している。
「うわぁぁ……」
爪に血が食い込んで染まって、ますます汚らしくなっていく。
「そ、そうか」
畔沼さんは少し引き気味に私を見て居た。
「確かに、良いところが何もないか……」
まだ、あのおばさんの方が、代わりになるだろう。
「そもそも断るつもりで来て居ました。
『恋をするな』他人と恋をするやつは、家畜。恋は人間性を廃れさせる悪の習慣、野生化を図るための政策のようなもので、野蛮。汚い、絶対にならない。これが我が家の家訓なので」
「そうなのか?」
「はい。前に言い寄られたときもキツく叩いてやりましたよ~!」
「俺はそんな奴、絶対に認めないからな! 援交女! 整形女! 性悪女! 言いふらしてやる!」
おぉっと、援交は初めて言われた。彼にとって、私の印象は 援交女! 整形女! 性悪女!
らしい。重要なトピックとして、しばらく町中の話題になるだろう。
私はどう言われようと一向にかまわないのだが、問題はどこまで町が、印象だけ自動クズ化していく私を受け止めきれるかだった。
なんだか、世帯どころじゃない。
最終的に汚物のような存在=私、という印象に世界中が行き着いた場合、やっぱり焼かれるのかなぁ。それとも、海に鉛をつけて沈められるのかなぁ。
あまりいたくないといいんだけど。
弟さんが元気よく私を指さして、どこかに走っていく。
そっか、評判は既にみんなが用意していてくれてるんだ。
私はそれに合わせるだけでよかったのか。
「やっぱり、ほら、誰も、幸せになりませんよぉ? 私、援助交際もしていますし、全部汚いですから……ね? 嫌な評判になる前に」
「よろしいでしょうかー!」
遠くから様子を窺っていたじいやさんがやってくる。
「お風呂の用意が出来たので、中へー!」
「服を渡されるのかと思ったら、な、中!?」
無駄に広い廊下を歩いたが、それでも浴室が玄関からさほど離れて居なかったのは幸いだった。
案内されるままに脱衣所に行き、そのままお風呂に入りながら、考える。
好きになる人はいっぱいいるだろうに、ゴミのような私が、その権利を独占するなんて、やっぱり考えれば考える程、間違っていた。
うぅ、リンちゃん……
「あんたの代わりに食べたげるー!」とか、「貸して!それ私がやっといたげるー!」と、いつも部屋に突撃してきたリンちゃんをおぼろげに思いだすと少し星が恋しくなってくる。
さすがに、お風呂とかは代わりに入ったりしなかったけれど、今もリンちゃんが居たなら、
『お見合い? 代わりに出といたげるー!』と走って行って、私が吐いたり湿疹で魘されるようなことも無かったのに。
そうだ! 名案を思い付いた。
誰も見て居ないのをいいことに、一旦ガラス戸を開け、脱衣所の服を漁る。
そしてポケットに入れていたマジックペンを手に、お風呂場に戻った。
「き、た、な、いっと」
洗ったばかりの体のあちこちに、注意書きを書き込んでいく。
なんか綺麗なのか汚いのかいまいちわからなくなってきたが、とりあえず、礼を言って此処から出たあとは、、、どうするか考えてなかったけど、まぁどうにかなるだろう。
とにかく、やってみると思った以上に難しかったということが分かった。
「君の家は調べてあるんだ。お互いに好都合だろ?」
調べてあるのなら、代理の人が全ての言動を司っていることも知っているはずだ。
私が何かすれば、同時に連動してリンちゃんが動く。
だから私はリンちゃんが何かしている姿を眺める方が多くなり、肉体から乖離している。
だけど、リンちゃんはしっかりと意思をもって、絶対に連動してやると思っているので、止められない仕組みだ。
「でも、今、こうして、汚いって書き込んでいるのは、私だけなんだよなぁ」
まるで大人の証。ちょっぴり嬉しくなる。
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